逃げる少女 ~ルウム復活暦1002年~ 1 ボニータ・コミックス
著:紫堂恭子
出版社:秋田書店
元兵士のセスはグリセオの森と呼ばれる広大な森で、行き倒れていた少女と出会います。
彼女はセスが近づくと意識を取り戻し逃げ出したのですが……。
著者の紫堂恭子さんの作品「辺境警備」と同じ世界を舞台に描かれるファンタジー逃亡劇。
登場人物
セス・リグナートル
元兵士
金髪にグリーンの瞳の青年。
兵隊を辞め故郷への旅の途中、何かに追われる少女ジュスベルと出会う。
彼女の姿が妹と重なりジュスベルを守る為、彼女の逃亡に同行する。
ジュスベル
何かに追われる少女
黒髪で利発な九歳の少女。
正体不明の何かに追われ、それから逃れようとずっと移動を続けていた。
ハスタム
セスが所属していた隊の隊長
鋭い目つきの男。
普段は公平で余裕のある大人として振舞うが、戦時下においては冷酷な行為も躊躇なく行う。
あらすじ
逃げた少女を怖がらせたと思ったセスは、それ以上追う事無く森の中で野宿を始めた。
少女が火を見て近づいて来てくれればいいが……。
そう思い野宿をしていたセスは、彼女の事を考え気持ちが沈む。
森の中で一人。
迷子であればまだいいが、親を亡くしたのだとしたら……。
仮に生き延びる事が出来ても、大人になるまで辛い思いをする事になるだろう。
自分に何が出来る。
これまで山ほど見て来た不幸の一つに過ぎない。
そう思い、セスは気持ちを切り替えようと額に手を当てた。
そんなセスの耳の地鳴りの音が遠く聞こえた。
そういえば、最近、地震や地鳴りが多いな。
昨夜の揺れも大きかった。
その時はセスはそれ以上、地震について考える事は無かった。
その二日後、森を抜け街に着いたセスは、行き倒れ人買いに攫われそうになっている件の少女と再会した。
彼女を人買いから助けた後、セスは女性が営む宿に少女を預け靴を片方無くしていた彼女為、小さな靴を買い求める。
その露店靴屋のカウンターに置いた道具が小刻みに揺れる。
店主はよくある事と平然としていたが、その直後、揺れによって靴屋の向かいの露店が倒壊した。
揺れはかなり大きく、セスは少女の身を案じ宿へと急ぐ。
だが少女は地震に怯えたのか宿から逃げ出した後だった。
宿の女性が言った北西という言葉を頼りにセスは少女の後を追う。
町を出て少女を探すセスの耳に再び地鳴りが聞こえ、その直後、少女の悲鳴が鳴り響いた。
その悲鳴を辿り向けた視線の先。
少女の周囲で不思議な光が木々をへし折り、大地を割いて暴れていた。
感想
この作品は作者の紫堂恭子さんが描いた過去作「辺境警備」の少し後、辺境警備の舞台であるルウムの隣国、東方諸国から始まります。
作品には辺境警備にも登場したカイルという呪術師も登場し、ファンとはしてはとてもテンションが上がりました。
内容としては正体不明の何かに追われ、追いつかれるとその何者かが暴れ地震が起きる少女ジュスベルと、彼女と共にその何かから逃げながら何かの正体を探り、解決策を模索するセスの逃亡の様子を描いた物となっています。
作品は単体でも勿論楽しめますが辺境警備、グラン・ローヴァー物語、東カール・シープホーン村と同様の世界を舞台にしている為、作り込まれた設定や歴史、地理等、過去作を読まれた方はすぐに作品に没頭できると思います。
まとめ
この巻のラストでカイルが登場した時は、なんだか懐かしくて涙が出ました。
カイルだけでそうなのですから、隊長さんや神官さん、兵隊さん達が見れたら号泣するような気がします。(全員、辺境警備のキャラです)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。