片喰と黄金 4 ヤングジャンプコミックス・ウルトラ
著:北野詠一
出版社:集英社
アメリアに興味を持ちオニール一家に加わった絵描きのイザヤ。
彼の提案でセントルイスに向かう事になったアメリアとコナー。
その道中の移動手段として鉄道を選択したのですが、突然の乱入者によってコナーが列車に乗り損ねてしまいます。
登場人物
セオドア・D・ジュダ(愛称はテッド)
鉄道技師
金髪眼鏡の小柄な青年。
大陸横断鉄道を夢見、その夢にまい進している。
鉄道技師としては天才的だが、それ以外はかなりポンコツ。
アンナ
セオドアの嫁
豊かな金髪の大柄な女性。
裕福な家のお嬢様でとても有能な女性。
測量しているテッドを見て一目ぼれしたらしい。
モラレス
ケンタッキーで農場を営む富豪。
赤髪で穏やかな壮年の男性。
イザヤのパトロンの知己、彼への支援をパトロンから依頼される。
そのおこぼれに預かり、アメリア達も歓待を受けた。
当時、奴隷を認めていたケンタッキー州で他の農場等と違い虐げる事無く奴隷を使っている。
ノーブル
モラレスの農場で働く奴隷
黒人の青年。
奴隷を鞭打たず大切にしているモラレスに心酔している。
彼は初めての主人がモラレスだったらしく、暴行を受けた他の奴隷の話を聞いて余計にモラレスを敬愛する事になったようだ。
ロス
モラレスの農場で働く奴隷
顔に傷跡のある黒人の青年。
傷は以前の主人に付けられたようだ。
反抗的で仕事をサボる事もしばしば。
あらすじ
コナーが置き去りにされる原因を作った青年に憤りつつ、アメリアは彼と話す。
その眼鏡の青年は次の駅までそれ程、距離は無く再会出来なくなる事は無いだろうとさらりと言った。
それはそうかもしれないが、その原因を作った青年に諭されるとそれはそれで腹が立つ。
憤るアメリアに青年は鉄道を楽しめと嬉々として鉄道の歴史を語った。
偏った知識量に引きつつも、アメリアは彼との会話を続けた。
その会話の流れでアメリアは自身の夢、カリフォルニアで黄金を見つけ大富豪になるというのを彼に語る。
青年は一言バカと返した。
そんな反応は常なので、アメリアは何とでも言いなさいと流すが、青年は続けてバカげてる!いいなそれと満面の笑みで笑った。
「いい夢だ!」
そう言った青年にアメリアが戸惑っていると、青年は前方に目をやり、俺はこういう鉄道をと話しかける。
だが、その彼の顔が一瞬で真剣な物へと変わる。
「速すぎる」
そう言った青年は鉄道夫達にカーブがある事を指摘した。
鉄道夫の一人が顔を青ざめさせる中、列車の上部客席から飛び出した青年は燃料の薪の上を駆け抜け列車のブレーキハンドルを操作、減速に成功し列車は脱線する事無く停車する事が出来た。
青年に感謝し、彼が何者なのか尋ねる鉄道夫達に青年はセオドア・ジュダとドヤ顔で名乗った。
鉄道夫の一人は名前を知っていたようだが、アメリアは勿論、他の二人の鉄道夫は知らないようだった。
それにショックを受けつつ、まぁいいと彼は言う。
その内国中が自分の名を知る。
彼の夢はアメリカの東西を繋ぐ大陸横断鉄道を作る事だった。
感想
今回は冒頭のセオドア(テッド)との出会い、そしてその妻、アンナとの合流の他、オハイオ川での船旅、そしてケンタッキー州での農場主と奴隷達の様子が描かれました。
今回はその中でもモラレスの奴隷、ロスのエピソードが印象的でした。
モラレスは多くの農場主や奴隷を使っている者たちと違い、彼らをとても大切に家族の様に扱っています。
しかし、ロスはそんな生活を送っていても不満を抱え、反抗的な態度を取り続けていました。
ロスは作中、農場からの脱走を企て、鉢合わせしたアメリアを脱走の発覚を恐れ連れ去ります。
彼がそこまでして逃げたかったのは、どんなに恵まれていても奴隷に本当の意味での自由は無いと感じたからではないでしょうか。
作中、月明かりの下で聞いた足音。
未来の足音に思えたという彼が感じ、思い描いていたのは、自分の足で行き先を決められる自由では無いか。
読んでいてそう思いました。
まとめ
作品の時代背景は1849年。
まだ南北戦争は始まっておらず、アメリカには黒人の奴隷が存在していました。
現在でも人種による差別は根強く残っています。
しかし、そんな差別はとても愚かしく感じます。
人のルーツはアフリカのある女性だと聞いた事があります。
それを考えれば、肌の色はそれぞれの環境に適応した結果に過ぎず、もっと大きな目でみれば、人類も地球上に発生した動物の一派生でしかないはずです。
いがみ合う事無く、単なる個性として見れる世界になればいいなとそんな事を思いました。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読み頂けます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。