ミステリと言う勿れ 3 フラワーコミックスアルファ
著:田村由美
出版社:小学館
バスジャック事件で知己となった我路(がろ)から整を推薦されたという女子高生、狩集汐路(かりあつまり しおじ)。
彼女に導かれ、整は祖父の遺言が公開されるという狩集家に向かいました。
そこでは四人の候補者が指定された蔵に入り、謎を解くという試験が待っていました。
登場人物
車坂朝晴(くるまざか あさはる)
狩集家の顧問弁護士車坂の孫
黒髪の爽やかな青年。
汐路の初恋の相手らしく、彼女はとても朝晴に懐いている。
あらすじ
四人が指定されたそれぞれ別の蔵に入り、あるべきものをあるべき所へ。
それを弁護士の車坂と会計士の真壁が判定し、財産を相続する者を選定する。
その遺言に従い四人の相続者はそれぞれ蔵の調査を開始した。
整も汐路と一緒に蔵の中を調べ始める。
汐路が指定された内部には、箱に入れられた人形が複数体収められていた。
整はその人形の数が足りない事に気付く。
三体足りないと呟いた整に汐路は答えを聞きかけるが、自分で考えようと思い直し人形は季節を現していると気付いた。
足りない三体のうち、四月を現す桜柄の着物を着た人形が無い事に気付いた汐路の脳裏に死んだ父の姿が蘇る。
父はその時見た人形を返さないといけないと言っていた。
そんな事を思い出していた汐路の元に、参加者の一人である、新音がやって来た。
彼は他の参加者の指定された蔵の中身が気になり、様子を見に来たようだ。
勝手に蔵に入ってきた新音に汐路は憤慨するも、新音はそれを気にしたようすも無く、自分の蔵は茶わんや皿ばかりでぶち普通と返した。
整はそんな新音に彼の蔵を見ていいか尋ねる。
新音は整の頼みを快く受け入れ、整と汐路は彼の割り当てられた忠敬の蔵へと向かった。
蔵は彼の言った様に茶わんや皿等の焼き物は収められていた。
変わった事といえば、同じ物が二つ対になって入れられていた事。
そしてその対になっている物の一つは明らかに偽物と分かる拙い物だった。
二つの蔵を見た整は思考を巡らせる。
汐路の蔵は人形が足りない。
新音の蔵は物が多い。
遺言の指示は過不足なくせよ。
どういう意味かわからず音をあげた新音を横目に、整は蔵と言葉の意味を考えるのだった。
感想
今回は一冊丸々、狩集家のお話が収録されました。
遺言、財産を巡る謎解きレース、命を狙われる探偵とミステリーの王道の様な展開でしたが、やはりこの作品はそれだけでは終わりませんでした。
ミステリーですので、謎には触れず印象に残った事について書きたいと思います。
今回は蔵の中身を聞き出そうとゆらの娘、幸をお菓子で釣ろうとした新音に整が言った言葉。
「子供はバカじゃないです。自分が子供の頃、バカでしたか?」
というのが心に残りました。
確かに、子供の頃、茫漠とはしていても言われた事に傷つき、嘘を吐かれたり、利用されたりすると(それがたいした事では無くても)なんだが言葉に出来ないモヤモヤを抱えていた様に思います。
成長に伴い、そんな幼い頃の感覚は忘れていってしまいますが、思えば幼いながらに色んな事を感じ考えていた事を思い出しました。
子供だからといって、大人の都合で良いように扱う事の弊害。
その行為が彼らの人生に与える影響。
人生というと大げさに聞こえるかもしれませんが、起点近くのズレは成長するごとに大きくなる筈です。
今回は読んでいてそんな事を感じました。
まとめ
この巻では狩集家のエピソードはまだ完結していません。
ただ、お話は色々な謎も紐解かれ、次巻では整による解説が為されるようです。
この作品は月刊fiowers公式サイトにて第一話が無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。