艦隊のシェフ 1 モーニングKC
原作:池田邦彦
作画:萩原玲二
出版社:講談社
第二次世界大戦中の太平洋。
常に最前線にいた駆逐艦、幸風(さちかぜ)の食を担う主計兵達の物語。
登場人物
海原護(かいばら まもる)
駆逐艦幸風の一等主計兵(調理担当兵)
左の額からこめかみに掛けて傷を持つ大柄な男。
食べる人の笑顔を見るため包丁を握る。
彼の軍人としての過去には何やら秘密があるようだ。
湊谷賀津男(みなとや かつお)
元航空母艦蒼龍の乗組員、三等主計兵
乗っていた空母が撃沈し漂流していたところを海原に救われる。
実家は西洋料理屋。
父親は上海水交社(海軍幹部関係者が利用する施設等を運営する組織)の調理人。
上海の要衝、ガーデンブリッジの爆破を海軍の上海特別陸戦隊本部に知らせ、未然に防いだがその後、ゲリラの襲撃を受け亡くなった。
賀津男は嬉々として上海に赴き、手紙も余り寄こさなかった父親の事を薄情な男と思っている。
鈴木(すずき)
少佐、通信長
陸上勤務から駆逐艦幸風に転属した青年。
駆逐艦の揺れでひどい船酔いになり、食欲を失っている。
岡島(おかじま)
呉鎮守府病院の院長、大佐
ぎょろめのおじさん。
脚気の診察及び、麦の使用について幸風に調査に入った。
海軍でも麦飯は不人気で麦を廃棄している船も存在していた。
そのため、ビタミンB1不足により脚気を患う者もいた。
寺田庄吉(てらだ しょうきち)
駆逐艦幸風の艦長、中佐
口ひげの男。
私的制裁を認めないという方針。
そのため、海軍では定番の整列と呼ばれる尻たたきは幸風では行われていない。
柳原譲(やなぎはら ゆずる)
駆逐艦幸風、二等主計兵、士官食担当
目つきの鋭い口の悪い男。
昔、予科練(飛行予科練習生、パイロット養成制度)を受けた事がある。
口は悪いが根は悪い男ではない。
脇坂(わきさか)
駆逐艦幸風、第一砲塔砲塔長、一曹
部下に厳しい訓練を課す。
空襲で妹を失った。
柴田(しばた)
駆逐艦幸風、水雷兵曹
目の大きなおしゃべりな男。
賀津男に上海での父の行動について話す。
あらすじ
駆逐艦幸風の烹炊所(ほうすいじょ:厨房)で乗員239名の食事が作られている。
その日、食事を終えた乗員を乗せた幸風は敵の攻撃を受ける。
戦闘配置中の揺れる船内、烹炊所では戦闘糧食として五目握りが作られていた。
出来上がった握り飯を砲塔にいる兵たちに届けた海原は、敵の爆撃機により沈められた空母を見た。
炎上し横倒しになった船体、滑走路から投げ出される戦闘機。
幸風はすぐにカッター(小型の手漕ぎボート)を下ろし、生存者の救助に当たった。
生存者を多数救助し、彼らを医療設備の整った水上機母艦千代田に引き渡した翌日、海原は烹炊所の窓から波間に漂う漂流者を発見する。
すぐに海に飛び込み漂流者を救助したが、その若者は肉体的には問題なかったものの、ただ一点を見つめ何も話すことはなかった。
そんな若者に海原は白米の握り飯を差し出してやる。
日本一旨い握り飯。
海原が言うには日本一旨い物は握り飯を作ったあと、手についた飯粒だという。
それを集めて作った握り飯は日本一旨い。
まぁ食ってみろよ。
海原に促され若者は握り飯を口に運んだ。
一口ほおばり噛み締めた若者の目からは涙が溢れ、口からはうまいっすと言葉が出ていた。
感想
海の雑兵駆逐艦。
この作品はその駆逐艦の烹炊所で働く主計兵達をメインに、太平洋戦争中の駆逐艦幸風の日々を描いた作品です。
戦争という非日常、戦艦という閉鎖環境では食事は兵士達にとって楽しみの一つでした。
海原達は漂流した兵士、船酔いに苦しむ士官、脚気の調査に来た軍医、着陸に失敗したパイロット、空襲で妹を亡くした砲員長等、様々な人の心を料理により変化させていきます。
敗戦として終わった太平洋戦争。
今後、幸風がどういう運命をたどるのか、先が気になります。
まとめ
太平洋戦争を描いた物は、戦場も日本国内も辛く苦しい物が多いように思います。
この作品ももちろん戦中が描かれているので、悲しい出来事もありますが、艦に食料を積み込んでいるので飢えるという事は無いようです。
次巻ではガダルカナルへ幸風は向かう模様。
どんな事が起きるのか、次も楽しみです。
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