ナナシ ~ナくしたナにかのさがシかた~ 3 ヤングキングコミックス
漫画:片山愁
原作:藤野晴海
出版社:少年画報社
怪異を見る事ができる少年ナナシと、彼と出会った事で見える様になったハルのもう戻れない日々を綴ったお話です。
今回はナナシと会長の過去の他、段々とおかしくなっていくナナシの姿が描かれました。
あらすじ
ハナオカ(会長)との出会い、それはナナシにとって楽しく愉快な日々を彼にもたらした。
しかし、家族への思いの違いが二人の道を別つ事になる。
ハナオカはナナシに自分を傷つける親を捨てる様に迫った。
それは彼もナナシ同様、親からの虐待を受けていた過去を持つからだった。
ハナオカは親を切り捨てる事で自分を保てた。
しかし、ナナシには母を責め捨てる事は出来なかった。
ナナシは母に愛されたいと願っていた。
自分が彼女に逆らわず思い続ければ、いつかは母が自分を見てくれるのではないか。
ハナオカはナナシが母親を慕い続ける事に苛立ち、直接、ナナシの母に憤りをぶつけた。
「早く死ねばいい」
最後にハナオカが言った言葉が引き金になったのか、ナナシの母は自ら命を絶った。
その事が、親友だった二人を引き裂く事になる。
感想
ナナシの母親は不倫して家を出て行った夫を思い続け、ナナシはそんな母親に愛して欲しいと願っていました。
この巻では教え子と不倫した教師にナナシが激怒する場面が描かれています。
彼の怒りは教師の不倫相手だった女子生徒にも向かいました。
その場面を読んでいて感じたのは、彼の家族は父親が不倫するまでは暖かくとても仲のいい物だったのだろうという事でした。
ナナシが激怒したのも、母親に執着しているのもその頃の幸せな記憶が忘れられないからではないか。
今回、全体を通してそういった物を感じました。
この物語は作中、冒頭で語られた様にナナシとハルの日々と別れの物語です。
これは過ぎ去った過去であり、二人が終わる事は始まった時から確定しています。
ですが、ナナシには過去を見るのではなく、未来を見て欲しかったと彼に寄り添うハルを見て思ってしまいました。
まとめ
この世に同じ人は一人しかおらず、その人以外には代わりは務まらない事は理解出来ます。
ナナシが母親を強く求め、ハルにはその代わりは出来なかった。
それは分かるのですが、それでも遠く去ってしまった人でなく、近くにいる彼を思う人の事を見て欲しかった。
そんな風な気持ちをこの巻では感じました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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