紛争でしたら八田まで 1 モーニングKC
著:田素弘
出版社:講談社
地政学リスクコンサルタントの八田百合(はった ゆり)が、様々な地域の揉め事を解決する作品です。
登場人物
八田百合(はった ゆり)
地政学リスクコンサルタント
世界中を飛び回り各地で起きる問題の解決を生業としている。
眼鏡にロングヘアーのミニスカ美人。
依頼のあった地域の言語、風習、宗教、国内状況、他国との関係性等を学び、依頼者のみならず、トラブルの原因である相手にとってもよりベストな解決法を模索するスタイル。
格闘技(主にプロレス技)に精通している。
銃の扱いは苦手。
その土地土地の食べ物を食べる事を楽しみにしているようだ。
その容姿からよくビッチと呼ばれる。
広大な土地を相続した様だが、広いだけで何も無い場所らしい。
彼女の夢はそこに自分の国を作る事。
藤沢(ふじさわ)
精密機器メーカー月野精工の社長
髯のナイスミドル。
月野精工はミャンマーに生産工場を持っているが、工場のある村の住民達が工場撤退のデモを起こしその理由が分からず困惑している。
人に対しては平等であり、ミャンマーの現地人スタッフでも見込みのある者は分け隔てなく出世させる。
スタッフの育成や福利厚生にも力を入れている。
工場自体も国の基準を守っており、賃金も申し分無い額を払っている。
サイホム
元月野精工社員、ミャンマー人
気弱だが真面目な青年。
藤沢にも目を掛けられていたが、現在は月野精工に対してデモを起こしている。
工場のあるモンヤン村に住むシャン族出身
ソージャック
月野精工社員、ミャンマー人
体中にタトゥーを入れた大柄な男。
荒っぽいが勤務態度は真面目らしい。
山岳に住むカレン族出身
小原和樹(おはら かずき)
タンザニア、アルズィ村に作られた病院の医院長
39才、無精ひげの愛煙家。
西洋医療を否定し呪術医がいまだ重要とされる土地で、医者として働いている。
奥さんは18歳のジョイス・オマリ。
ジョイス・オマリ
小原の妻
父からアルズィ鉱山という宝石鉱山を受け継いだ資産家。
異教徒である小原と結婚した事で住民から魔女認定を受ける。
柔らかそうな癖っ髪とプリっとした唇が魅力的な美人さん。
アンドリュー・オマリ
ジョイスの父(故人)
宝石鉱山の利益を学校や病院を作る事で還元していたが、外の文化を嫌う住民の理解は余り得られていなかった。
フランク・オマリ
ジョイスの叔父
亡き兄アンドリューと共同経営者として鉱山を運営していた。
ジョイスが住民達に誘拐された事で解決を八田に依頼する。
ヤングM(オリバー)
メディスンマン(呪術医)
アルズィ村では若いながらも呪術医として尊敬を集める人物。
彼とジョイスは村との融和を目指すオマリ家の意向で婚約をしていた。
あらすじ
地政学リスクコンサルタントとして世界各地で起きる問題の解決を生業にしている八田百合。
彼女はミャンマーに工場を持つ日本企業、月野精工から工場撤退デモの解決を依頼される。
早急にという依頼だったが、八田は現地の言葉の他、その土地の情報を突貫で学びそれから現地へと飛んだ。
向かった先、ミャンマーのモンヤン村では社長の藤沢が依頼から二週間後に現れた八田に憤りをぶつけていた。
そんな藤沢を宥め、八田は状況を聞き出していく。
藤沢の話では住民の要求の原因は工場の排煙による環境破壊。
しかし環境基準値は毎年クリアし、役所から表彰もされている。
更に賃金も独自路線で事業が順調な事もあり高水準。
日本人を重用する訳でも無く、現地スタッフの育成にも熱心で見どころのある者は出世も出来る。
デモを行っている者達も元従業員が多く、彼らが月野精工に問題が無い事は一番よく知っている筈だ。
八田はデモの原因を探る為、まずはその元従業員たちに話を聞こうと動き始めた。
感想
世界には様々な土地と国があり、その場所場所でそれぞれ独自のルールや価値観が存在します。
そんな民族、宗教、治安状況等、その土地のルールを理解しよりよい解決を模索する八田百合の活躍を描いた作品です。
最初のエピソード、ミャンマーの工場の話を読んでまず感じたのは、一応、単一民族である日本人と現地の人々の認識の違いでした。
作中、社長の藤沢が言っていますが、各地域で人を雇いそのバランスが崩れたとしても同じミャンマー人だからいいだろうというのは、確かに日本人なら気にならないかもしれません。
作中例えに出ていたのは、ある企業で埼玉県民が90%であっても問題ないという意識でした。
日本なら確かにそれで何の問題も無いでしょう。
しかし、ミャンマーでは民族が違えば宗教、思想、生活様式などまるで違い、更に元は軍事政権だった影響もあり別の国と言っていい状態として描かれていました。
イメージ的には、都道府県ごとにまるで違う国といった感じでしょうか。
文化の違いは対立を生み、工場内で民族同士の縄張り争いが起きる。
そんな状態を知性(+プロレス技)で解決していく八田の姿がとても小気味良かったです。
まとめ
この巻ではミャンマーとタンザニアのエピソードが収録されました。
タンザニアの方はまだ解決していないので、次巻を読むのが楽しみです。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。