みどり晴ればれ 1 BUNCHコミックス
作:大内優
出版社:新潮社
やりたい事が見つけられず、人の為に働く事に終始していたOLの根本緑(ねもと みどり)はストレスをため込みながら、恋人や会社の同僚の為に日々を過ごしてきました。
そんなある日、緑は恋人の透(潔癖症)に汚部屋を見られた事が原因で倒れて病院へと運ばれます。
登場人物
根本緑(ねもと みどり)
31歳のOL
自身にやりたい事は無く、他者に奉仕し感謝される事を求めて生きて来たが、かなり無理をしてそのスタイルを維持している。
恋人の家の家事、会社の同僚たち仕事の肩代り等に力を使い果たし、自分の為に家事をする気にならず部屋はゴミ溜めの様になっている。
喫煙者、愛飲している銘柄はアメリカンスピリッツ。
中島透(なかしま とおる)
緑の恋人
潔癖症眼鏡。
緑の他者に奉仕するスタイルに甘え、自分の家の家事一切を彼女に任せている。
畑譲(はたけ ゆずる)
茨木で農業をしている高校生
茨木県庁が進めている週末農業の指導員の一人。
元は暴走族をやっていた。
面倒見が良く後輩にも慕われている。
野菜に関する深い知識を持ち、新しい農法に色々挑戦している。
白土千尋(しらと ちひろ)
茨木県県庁職員
農業政策を担当している。
譲を介して緑と知り合う。
少し外見が緑の恋人、透に似ている。
あらすじ
東京でOLとして働く根本緑は、日々を恋人である透の家の家事と、会社での仕事や雑事を引き受ける事で過ごしていた。
彼女には自分自身にやりたい事が無く、他人の役に立つ事で自らの存在意義を見出していた。
しかし、それは無理をして作った姿だった。
会社で同僚のヘルプや諸々の雑事をこなし、それプラス透の家の家事全般を行う。
その犠牲となったのは自分の事であり、家の掃除はおろか日々の食事も取る暇なく彼女は苦しさを感じながら働き続けていた。
しかし自分を犠牲にして働く緑に、周囲は特に感謝する訳でも無く、逆に不摂生により荒れた肌や不安定な精神を揶揄する様になっていた。
そんなある日、緑は突然訪ねてきた透にずっと隠していたゴミだらけの部屋を見られてしまう。
それが最後の一押しとなり、彼女は倒れ病院へと搬送された。
病名はストレス性の十二指腸潰瘍。
医者の話では死ぬところだったそうだ。
入院五日目、会社にも汚部屋にも戻りたくないとボンヤリ考える緑に潰瘍食が出される。
トレーには小さなパンや少量のスクランブルエッグに混じってミニトマトが添えられていた。
食事を運んできた看護師が言うには、ミニトマトはテレビにも取り上げられた農家の物らしい。
ラッキーですねと言う看護師に、たかがミニトマト一つで何がラッキーなのかと呆れつつ緑はトマトを口に運んだ。
トマトを食べた緑の瞳が驚きで見開かれる。
口の中で弾けたトマトは信じられない程美味しかった。
体中が満たされる感覚に戸惑う緑の目に、テレビの映像が飛び込む。
ハウスの中、学生服のヤンキー風の少年とミニトマトが映っていた。
緑にはその田舎の何気ない風景が、宝石箱の様に輝いて見えた。
感想
全てに疲れ切ったOLのお姉さんと、農作業に情熱を燃やすヤンキー高校生による農業をテーマにした作品です。
人生にこれと言った目標を見出せず、恋人がちらつかせる結婚を糧に自分を犠牲にして頑張る。
そんな主人公の緑の様な人物は結構多いのかもしれません。
本作は頑張りすぎて倒れてしまった緑が、農業とそれに携わる高校生との出会いによって再生していく姿を描いた作品です。
人にはそれぞれ生きやすい場所がある様に感じます。
緑にとってそれは都会では無く、土に触れる事が出来る場所だったのかなと読んでいて思いました。
まとめ
作品を読むと都会は息苦しく、茨木は心地よく感じます。
ただ、なんというか都会だから息苦しいのでは無く、誰かの犠牲の上に成り立つルールで社会全体が動いているからでは無いかとか思ってしまいました。
こちらの作品はくらげバンチにて一部無料で閲覧いただけます。
作者の大内優さんのアカウントはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。