ひゆみの田舎道 1 KCデラックス
作:サイとウマお
出版社:講談社
千葉で暮らしていた藤川ひゆみは、両親(主に母)に騙される形で長野県下佐久郡中海町という自然豊かな土地に引っ越します。
転居先は軽井沢だと思っていたひゆみはショックを受けるのですが……。
登場人物
藤川ひゆみ(ふじかわ ひゆみ)
女子高校生
軽井沢だと思っていたのが中海町だった事で、両親に不満をもっていたが、生来の何でも楽しめる性格で自然豊かな田舎の暮らしの良い所を自ら発見していく。
虫とかは苦手。
藤川父
自然と山に囲まれた田舎暮らしに憧れを持っていた。
その夢を叶える為、中海町へと移住を決める。
藤川母
料理上手でしたたかな女性。
多分元バイク乗り。
輪湖椎菜(わこ しいな)
ひゆみのクラスメイト
短髪のハンサムな女子高生。
町長の娘であり、実家は代々続く地主。
彼女の家は養蚕もやっているようだ。
志保(しほ)
ひゆみのクラスメイト
都会への憧れが強い。
あらすじ
転居先は軽井沢だと思っていたが、それは母が仕組んだ叙述トリックだった。
お洒落なカフェや洗練された街を夢見ていたが、周囲は山と田んぼの自然あふれる田舎。
当然、お洒落なカフェどころか、コンビニさえ無い。
ひゆみは憤るが、父は田舎暮らしが夢であったようだし、元バイク乗りの母は峠を責めるエンジン音を楽しみにしているようで状況は二対一、彼女的には不満を抱えながら、ふて寝する他無かった。
萎れて「カフェ、カラオケ、かわいい服……」と消えた憧れを呟くひゆみに、母はそれなら駅前にあると告げた。
喜び勇んで駅まで自転車を走らせたひゆみだったが、駅前にあったのは土産屋を兼ねた喫茶店、カラオケスナック、そしてバーゲンの張り紙がされた洋服屋だった。
両親に抗議する事を決め、帰路につくも帰り道ではあぜから田んぼに落ちる始末。
踏んだり蹴ったりなひゆみを迎えた母は、彼女にタオルを渡しながらご飯食べるわよと笑みを浮かべた。
お腹が空いていたひゆみは、服を着替え取り敢えずテーブルに着いた。
だが、そのテーブルの上に並んでいた物に首を傾げる。
メインは生姜焼きと野菜だ。生のわさびは必要ない筈。
そう問いかけたひゆみに母は「これはね」と言って、おろし金でわさびをすりおろしご飯にのせると、鰹節と醤油をかけかき混ぜた。
「安曇野(あずみの)わさびご飯!!」
(長野県の安曇野は本わさびの名産地である)
わさびご飯なんて罰ゲームでしょと言ったひゆみだったが、恐る恐る口に運んだそれは、辛さは無く、さわやかな香りが漂いとても美味だった。
感想
千葉の街中から長野の田舎町へ引っ越した女子高生、ひゆみが今作の主人公。
彼女の家の周囲は山と田んぼに囲まれており、徒歩圏内にはコンビニも存在しません。
便利な物が溢れた場所から、一転、そういった物の殆どない場所に行けば誰でも戸惑うように思います。
しかし、田舎には都会に無い自然が溢れています。
ひゆみは不便さに文句を言いつつも、美味しい食べ物や澄んだ空に光る星等、都会では味わえない物を楽しんでいるようでした。
昔、高知に遊び行った際、かつおを食べた事があるのですが、普通のスーパーで買ったにもかかわらず、今まで食べたどのかつおよりも美味しい事に驚いた覚えがあります。
ひゆみが食べたわさびや野菜も、そんな風に名産地だから食べられる美味しさだったのではないでしょうか。
まとめ
ひゆみは都会の女子高生ではあり、田舎の暮らしに戸惑ってはいますがそんな中でも楽しい事を見つけているようです。
美しい自然と美味しい食べ物、そしてのんびりした田舎暮らしを感じられる作品です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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