スインギン ドラゴン タイガー ブギ 1 モーニングKC
作:灰田高鴻
出版社:講談社
昭和26年、日本がGHQの占領下にあった頃。
福井県から東京へ上京した少女、諏訪とら(すわ とら)は路上で歌を歌いベースを弾きながら、尋ね人“オダジマタツジ”を探していました。
そんな時、とらはバンドマスターである丸山と、そのバンドのメンバーである愛想の悪いベーシストと出会います。
登場人物
諏訪於菟(すわ おと)・愛称はとら
人を探し上京した少女
事故により魂を失った様になった姉、依音子(いねこ)を元に戻そうと、姉が好意を寄せていたと思われるベーシスト“オダジマ タツジ”を探し東京へとやってくる。
路上で見たとらと小田島の即興のセッションに、売れる手ごたえを感じた丸山によって音楽の世界に引き込まれる。
一人称はぼく。
諏訪依音子(すわ いねこ)
とらの姉
川に流された事で知的障害を負う。
音楽が好きでオダジマと交流をもっていた。
とらは幼い頃見た姉とオダジマの様子と現在でも姉が彼のベースを口ずさむ事から、オダジマのベースが姉を引き戻す切っ掛けになるのではと考えている。
小田島龍治(おだじま たつじ)
ベーシスト
丸眼鏡で愛想の悪い男。とらの探していた人物。
東京で丸山のバンドに参加し米軍相手に演奏をしている。
原因は不明だがとらの故郷である福井に居た頃の記憶を失っている。
ベーシストとしての腕はかなりな物。
丸山真樹夫(まるやま まきお)
小田島が参加するジャズバンドのバンマス
担当はサックス。
バンドではサックスの他、MC役や交渉役等、マネージャー的なポジションも担う。
陽気で人当たりがよく、喋りの立つ男性。
嶺川(みねかわ)
丸山のバンドのトランぺッター
真面目で事なかれ主義。
妻帯者。
鮫島(さめじめ)
丸山のバンドのドラマー
目つきの悪い皮肉屋。
口が悪く丸山と口論になる事も。
藤田(ふじた)
丸山のバンドのピアニスト
一高出身の秀才。
揉める丸山達の仲裁役。
あらすじ
尋ね人“オダジマタツジ”を探す為、上京した諏訪とらは、路上演奏中に知り合った愛想の悪いベーシストと即興のセッション中、ベースを壊してしまった事で彼から新宿に呼び出される。
新宿で合流したバンドマスターの丸山に促され、そこから向かった先はアメリカ軍の基地だった。
自身のベースを貸す為、丸山達について来たとらだったが、大戦での日本軍への憎しみから一人の米兵がベーシストにビール瓶を投げ、彼は額を負傷。
ステージ裏に引っ込む事となった。
バンドは彼で持っていたような物だった。
ベーシストの抜けた演奏は米兵達の興味を引けず、丸山は苦肉の策としてとらをステージに上げる事にした。
ベーシストにも促され、勢いでステージに上がったとらだったが、大勢の観客(しかもごついアメリカ兵)に竦んでしまう。
更にヘマをすればベーシストの様に流血沙汰もあり得る。
しかし、とらは目の前のアメリカ兵なんてジャガイモだと気持ちを切り替えた。
じゃが芋どもめ、すり潰してやる!!
そう心の中で啖呵を切ったとらは、勢いよくマイクスタンドを握りしめた。
感想
戦争終結から六年後の東京を舞台にした、ジャズバンドのお話です。
作中では街中をアメリカ兵の乗ったジープが走り、戦争の記憶も風化していない時代が描かれています。
そんな時代背景の中、主人公のとらは姉を取り戻す為に東京へとやってきました。
物語は記憶を失ったベーシスト、小田島龍治を姉に引き合わせるというのが当面のとらの目標のようですが、とら自身も彼の記憶を戻す切っ掛けとして音楽に触れる中で、ジャズの魅力により深くハマっていっているようです。
愛想の悪い龍治と度胸の据わったとらのやり取り、そして彼らの演奏がとても心地よい作品です。
まとめ
戦後の貧しい生活の中、音楽は人々に希望を与えていたのではないかと想像します。
大好きな映画“ショーシャンクの空に”の中で主人公のアンディが言っていた様に、例え全てを奪われても音楽だけは誰にも奪う事が出来ないのかも知れません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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