小説短編

ホーンテッド・キャンパス 最後の七不思議

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競技場ホーンテッド・キャンパス 最後の七不思議
著:櫛木理宇
画:ヤマウチシズ
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

大学を舞台にしたオカルトミステリー第十七弾。

十二月、世間はクリスマスムード一色に染まっている頃。
森司君は社会人陸上チームの出場するマイルリレーのアンカーをピンチヒッターとして引き受ける事になります。
そこには勿論、こよみちゃんの事が絡んでいて……。

各話のあらすじや感想など

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壁の美人画

冒頭部分 あらすじ
教育学部の古舘文音(ふるだて あやね)と名乗る女子学生からオカルト研究会に相談が持ち込まれる。

その日、彼女は叔母の手伝いで病で倒れた大叔父の家の掃除に向かった。

古く広い大叔父の家の蔵、そこで文音は美人画の掛け軸を見つける。
なんという事の無い女性の書かれた絵だったが、文音はその絵が酷く気になった。
そうしていると、どこから聞き付けたのか大叔父の家に現在、つきあっている井野健介(いの けんすけ)がやって来た。

彼は文音の他に叔母がいるにも関わらず、蔵にあった古い鏡を金になりそうだと手に取るとそのまま家を出て行った。
憤慨する叔母に何も言えず文音は蔵の掃除を始める。

過去のある出来事が原因で彼女は大人しく嫌と言えない性格だった。
それが原因で、彼女は他人からの頼みを上手く断る事が出来ない。
その日も大叔父の容態が急変し叔母は文音にお願いねと言い残し、鍵を持たされる事無く一人残される事となった。

値打ちのある品は無いと叔母は言っていたが、鍵も掛けず家を去る訳にもいかず、文音は渋々その日は大叔父の家に泊まる事にした。
夜中、掃除で疲れた文音は美しい女の夢を見る。
女は美しかったが、笑みを浮かべ体をうねらせ這いよる姿はまるで大蛇の様だった。

その夢から弾ける様に目覚めた文音は、漆黒の闇の中で真上から凝視してくる女の顔を見た。
それは夢で見た蔵の掛け軸の女だった。
そして彼女は気付く、女は呼吸をしていないと。


感想
美人画、浮世絵の女性を描いた掛け軸にまつわるお話でした。
日本の怪談では掛け軸に描かれた幽霊や生首など、絵に関係する物も多い様に思います。
この巻のメインの題材である学校の怪談等でも、音楽室の肖像画の目が動くというのはとてもポピュラーな話だと思います。

何となくですが、やはり人形や肖像画等、人をかたちどった物には人間は何処となく不気味さを感じるからでは無いでしょうか。

涙壺に雨の降る

冒頭部分 あらすじ
ある日の夕方、オカルト研究会の部室に泉水が古いガラスの小壜(こびん)を持ち込んだ。
部長はそれを一目で涙壺(なみだつぼ)だと見抜く。

涙壺は遺族や恋人が亡くなった時、その小壜に流した涙を入れ一緒に埋葬したり、入れた涙が蒸発して消えるまで喪に服したりする。
古代ローマからあった副葬品らしい。

なぜそんな物を泉水が?
訝る部長に泉水は同じ研究室の奴から骨董として売れるかどうか、実家が旧家という事で尋ねられたそうなのだ。
泉水はそういった事に詳しい部長に聞いてみると小壜を預かったそうだ。

それを聞いた部長は更に彼に尋ねる。
泉水は何もなければそんな事は引き受けない。
何かあるんだろう?

そう言った部長に泉水は壜を光にかざしてみてくれと答える。
部長が泉水の言葉に従い、部室の蛍光灯に壜をかざすと僅かだが壜には液体が溜まっていた。

「俺が預かった時、壜は空だった」

続けて彼は骨董屋を尋ねられた時、いやなものが視えたと答えた。


感想
泉水が持ち込んだ涙壺、そしてその持ち主が住む古いアパートに憑いていたモノたちのお話でした。

他者への共感や想像力、それが生まれつき希薄な人間というのは世の中に結構多いのかもしれない。
最近のニュースを見ているとそう思えてなりません。

ほんの少しの想像力があれば、自分の行いがどういう結果を生むのか、もし自分がその立場であればどう感じるのか考える事が出来ると思うのです。

最後の七不思議

冒頭部分 あらすじ
リレー本番も近づき森司は初浪(はつなみ)小中学校の兼用グラウンドで練習に勤しんでいた。

夏の大会が終わり、12月ともなれば陸上はオフシーズン。
単距離はそれが顕著で、競技場や体育館を安価で借りる事が出来る。
森司にアンカーを頼んだ社会人チームもそれを利用し、グラウンドを使わせてもらっているのだ。

アンカーの代走を頼まれ時、森司は断るつもりだった。
陸上部だったのは昔の話で今は気分転換に走っているだけだ。

しかし、部室に来ていた藍が森司に、こよみが森司の走る姿を見たいと言っていると耳打ちした事で、彼は出ますと即答してしまっていた。
現在は大会に向けて年上のメンバー達からこよみとの仲を、揶揄われ、羨ましがられつつ練習に参加している。

そんな森司の近況をよそに、今日もオカルト研究会には怪異がらみの相談が持ち込まれた。
持ち込んだのは部長の先輩に当たる早乙女雛子(さおとめ ひなこ)。

相談は彼女の母校であり、森司も練習に使っている初浪中学校。
そこに伝わる七不思議の一つ「ササラ先生」にまつわる物だった。

十年前、彼女のクラスメイトだった荻島という男子生徒が、噂を確かめに夜の学校に向かい行方不明になった後、死体で発見された。
そして現在、その時と同様の事態が進行していると言う。

雛子はそれに関わっているという甥っ子の話を聞いて欲しいと、オカルト研究会のドアを叩いたのだった。

感想
七不思議、どの学校にもあるのでしょうか?
私が知っているのは、先ほども書いた音楽室の肖像画、勝手に鳴るピアノ、変わる階段の段数、踊り場の鏡、動く骨格標本とかです。

作中で語られている様に全国的に同様の話が語り継がれているのは、小中学生が読む様な怪談本の影響が未だに大きいのかもしれません。

全体の感想

今回のテーマは家族の様に感じました。
子供は生まれてくる家を選べません。
更には子供は親の希望を実現する為の道具でもありません。

今回収録された三話を読んでいると、なんだかそんな事を考えてしまいました。

小学生から十代前半の頃は、ボキャブラリーが少なく自分の気持ちをハッキリ言葉にする事が出来なかった様に思います。
しかし、言葉に出来ないだけで気持ち的には現在と同様な思いを理不尽な事に対して抱いていた覚えがあります。

相手がどんなに幼くてもどんな相手であっても、丁寧に接していきたいな。
そんな事を思いました。

まとめ

作中、森司君とこよみちゃんが両想いなのは中学生にまでバレバレでした。
もう付き合っちゃえばいいのにと思う反面、そういう二人だから好きなんだよなとも思いました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

作者の櫛木理宇さんのTwitterはこちら。
イラストレーターのヤマウチシズさんのTwitterはこちら。

※イメージはPixabayのPasi Mäenpääによる画像です。
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