小説 小説短編

STAiRs, be STAR! 怪談アイドルはじめます。

投稿日:2019年6月11日 更新日:

ライブSTAiRs, be STAR! 怪談アイドルはじめます。
著:峰守ひろかず
画:紗与イチ
出版社:徳間書店

新倉隆治(にいくらたかはる)22歳。
彼は中学時代、友人に誘われた男性アイドルのライブを観て、アイドルに憧れを持ちます。

紆余曲折ありながら、芸能事務所に所属しアイドルとして活動を始めた隆治でしたが、メンバーのチームワークは最悪でした。

長身で気の荒い根岸雷太(ねぎしらいた)18歳。
小柄で上品だが、クールで打ち解けようという気のない小松谷千博(こまつやちひろ)16歳。
ルックスもスタイルも良く穏やかだが、いつもマイペースな常光寺つぐみ(じょうこうじつぐみ)25歳。

そして隆治を加えた四人は、STAiRsというアイドルグループとしてデビューしました。

彼ら四人の共通点、それは四人とも霊感を持っているという事でした。
その事はやがて彼らの結束を強め、アイドルとして輝くための要素を得ていく事に繋がっていきます。

各話あらすじ・感想

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第一話「Although you can see me?」

あらすじ
隆治は自身でハンドルを握り、古いワンボックスを運転していた。
車内には彼の他に三人、STAiRsのメンバーであるつぐみ、雷太、千博の姿もあった。

彼らはデビューシングルのPVを撮影する為、撮影現場に向かっていた。
突いた場所は築百年は超えているであろう、重厚な洋館。

撮影の準備が進む中、隆治の背中に悪寒が走る。
視界の隅に移る影を無視し、社長に促されメイクと着替えへ向かう。
勿論メイクは自分でする。貧乏事務所の売れないアイドルに、スタイリスト等用意されない。

隆治は自身に霊感がある事を秘密にしていた。
小学生の頃に見た黒い影を、隆治以外誰も見る事が出来なかった。
普通の人に見えないものが視え、感じ、聞こえる事は唯でさえ生きづらい。
その上、それを吹聴し変人扱いされるのは御免だった。

着替えの為、外に出ようした隆治の目に、黒い女の姿がはっきりと映った。
黒髪に黒い着物、白い顔。
目を逸らした隆治の耳に女の『…見えてる癖に』という声が響いた。

感想
メンバー四人の怪異に対する対応は、それぞれに違い、
隆治は、とにかく関わらない。
雷太は、力でねじ伏せる。
千博は、ネットから集めた知識で解決策を探る。
つぐみは、古い怪異について博識で、マイペースに対応する。
といった感じです。

ここでPVを撮影したことが、彼らが名前の通り階段を駆け上がる第一歩になっていきます。

他の三人が良くも悪くも自由なので、必然的に隆治がまとめ役にならざるを得ず、メンバー兼マネージャーのようなポジションになっています。

第二話「Acrobatic SALA☆SALA」

あらすじ
PVの件でライブの動員数も増えていた。
その事を喜ぶ隆治だったが、社長から定例ライブをしているライブハウスに耐震工事の不正が発覚し、工事の為、半年間は使えなくなったと報せを受ける。

折角、お客さんが増えてきたのに、ライブが出来ないのは致命的だ。
社長は丁度いい場所が見つかれば、ライブを行っても良いと許可をもらったが、アイドルのライブは歌って踊る事が基本だ。

四人が踊れる規模のステージを、出来るだけ安い使用料で使わせてくれる会場等、そうそうある筈もない。

会場をどうしようと悩む隆治が、会場設営のバイトに行くと、そこで顔見知りになった、シンガーソングライターのドラゴンフライこと、久保島と出会った。

久保島とはジャンルは違えど、同じステージに立つ者として、近況を話したりしていた。
そこで隆治は、『セブンウォーターフォール』というライブハウスの話を聞く。

調べてみると、ステージも広く交通の便もよく、しかも安い。
メンバーを連れて下見に行く道中、そんなにいい会場が安いなんておかしいという話になり、隆治は久保島から聞いた事を話した。

そのライブハウスには「出る」らしい。
彼らに霊感が無ければ笑い飛ばせる話だが、残念ながら四人ともばっちり視えてしまう体質だ。

下見だけでもと向かったライブハウスで、雷太が屋上に女がいるのを見つけた。
赤いワンピースをきた黒髪の女性は、足が一本しかなく、体は透けていた。

女性はメンバーが見ている前で、手すりを乗り越え飛び降り、地面にぶつかる直前に掻き消えた。

感想
二話目は雷太のお話です。
彼はダンサーを志し、渡米してダンスを学ぶ程、情熱を傾けています。
そんな彼と足を掴もうとする怪異とのバトルは、とても痛快でした。

この物語では、都市伝説ような現代の怪異と、昔からある怪談に登場する妖怪が上手くミックスされています。
私は、ネットで怪談を好きになったので、つぐみの語る妖怪については知らないモノが多く、とても興味深いです。

第三話「Correct Answers」

あらすじ
隆治たちは小さな無人駅に降り立っていた。
当たりは暗く、改札の外には朽ちかけた鳥居があり、どこからか祭囃子が聞こえて来る。

スマホの時計を見ると四四四四となっている。
他の三人の時計も四十四時四十四分を指していた。

彼らは「奥坂野サマーフェスティバル」に参加する為、電車で会場に向かっていた。
何度か乗り換え、各駅停車に乗り全員がうつらうつらしてきた頃、電車が駅に停止したまま、動かなくなっている事に気付いたのだ。

誰かが降りようと提案し、駅のホームに下りた所、電車は走り去り四人は無人駅に取り残された。
駅名票には「きさらぎ駅」と記されていた。

感想
第三話では「きさらぎ駅」に始まり「時空のおっさん」「カシマさん」など有名な都市伝説をモチーフにしたお話でした。
最年少の千博、大活躍の回でした。

第四話「オモイデノキミへ」

あらすじ
STAiRsの人気は少しづつ上がり男子アイドルの集うイベント「ニュージェネレーションフェス」への出場も決まっていた。
以前からモデルやナレーションをやっていたつぐみの他、千博は司会、雷太はダンスとソロの仕事も増えてきた。

隆治だけは特にソロの仕事は無く、オフィシャルのブログやSNSの更新やつぐみの送り迎え等、マネージャー的な事を行っていた。

ファンとの会話の中で、つぐみの事が話題にあがり、ファンの女性が言う様に、つぐみはモテそうだなと隆治も思った。
迎えに言ったつぐみを無意識に観察していた隆治は、彼にどうしたのと聞かれ、つい、付き合っている人はいるのかなと聞いてしまった。

反省する隆治に、そういう人はいないと返し、思い出の女性というべき人はいるけどと、つぐみは答えた。
詳しく聞くと、彼は昔いじめられっ子だったらしく、そんな彼と一緒に遊んでくれた女の子が居たそうだ。

会えないのかと問う隆治につぐみは、会えるもの会いたいと返した。
困ったように笑うつぐみに、隆治は深入りしたくない話なのだろうと話を打ち切った。

その後、事務所につきフェスに向けて、合宿することをメンバーに提案する。
反対を覚悟で提案したが、以外にも全員賛成してくれた。

驚く事に社長の柳子も許可を出してくれた。
唯、彼女は金は無いと言い放ち、合宿場所はここだとパソコンのモニターを示した。

そこには廃校になった小学校が映っていた。

感想
メンバーの中でもミステリアスな、つぐみにスポットを当てたお話です。
小学校という事で、学校にまつわる怪談がこれでもかと登場します。
ただ一番衝撃的だったのは、つぐみの正体が、有名なあの人だった事です。
彼が怪異に遭遇しても、いつも穏やかで取り乱す事が無いのは、ある意味、納得出来るエピソードでした。

第五話「Jan-Jan-Fire!」

合宿を終え、隆治が自室を掃除していると社長から電話がかかって来た。
学校の心霊現象が収まった事と、ブログにコメントがあったとの報告だった。

隆治がスマホでブログを確認すると、合宿の記事についてコメントが増えている。
雷太やつぐみ、千博の写真についてのコメントの他、STAiRs全体についての激励コメントも書かれていた。

だが隆治個人へのコメントは無く、少しやるせなく思うが、それもしょうが無いとも感じていた。
彼は自分が普通である事を自覚していた。

そんな時、シャンシャンという金属音が耳に届く。
振り返るとダイニングにオレンジ色の火の玉が浮かんでいた。
この火の玉は、昔から隆治についており、何をするでもなく、隆治が気付くとすうッと消えるのだ。

最初は怯えていた隆治も今では慣れっこになっていた。

ただ、最近この火の玉は大きくなっている気がする事が、隆治には少し気になっていた。

 

感想

第五話は主人公の隆治のお話です。
容姿端麗で声の良いつぐみ、長身と鍛えられた肉体で切れのあるダンスを踊る雷太、見た目の可愛さと頭の回転の速さで、MCや司会、演技に定評のある千博。

他の三人に比べ、特徴が無く至って普通の隆治は、このままSTAiRsにいていいのか悩みます。

読んでいて思った事は、他の三人はアイドルにはなったけれど、マストでやりたい事では無かったのですが、隆治だけは純粋にアイドルになりたかったという点です。

彼の存在が無ければ、STAiRsは遠からず解散していたでしょう。
彼のアイドルへの情熱があったからこそ、STAiRsは存在出来るのだと感じます。

まとめ

タイトルや表紙の絵柄がアイドルを全面に押し出した物ですので、そこで手に取るのを止める人も多いと思いますが、内容は都市伝説や妖怪伝承を盛り込んだ楽しいものになっています。

元ネタを知っていればより楽しめますが、千博やつぐみが解説してくれるので、知らなくても問題なく読む事が出来ます。

読んでみて、元ネタを探してみるのも楽しいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはpixabayのFree-Photosによる画像です
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