カイニスの金の鳥 3
著:秦和生
出版社:イーストプレス
友人のケイティの結婚を祝う為、実家に戻ったリア。
久方振りの家でのんびり過ごしていた彼女の下へ、ロンドンにいる筈のマイルズが訪ねて来ます。
登場人物
ゴードン
ケイティの婚約者
小太りで明るく温和な青年。
イチャイチャするな。
フレデリック・カークマン(フリッツ)
小説家
デビュー作が大当たりし、屋根裏部屋で引きこもり生活している。
ロンドンに出て来たばかりのマイルズを居候させていた。
元締め
孤児の少年
孤児達の取り纏め役。
マイルズとは顔なじみの様子。
あらすじ
突然、アランを訪ねて家にきたマイルズに彼はいないと追い返したリアだったが、マイルズが来た理由が分からず少し慌てる。
しかし、彼がグロスタシャーに来た理由が何であれ、アランとして会うつもりはリアには無く、早く帰って仕事すればいいとマイルズの事は放置する事にした。
その後、リアはマイルズと会う事も無く、穏やかな実家での暮らしを満喫していた。
そんな折、ふといつも執筆していた草原の事が頭をよぎる。
今、あそこで何か書いたら、どんな気分がするんだろ……。
リアはその事を確かめようと、原稿用紙とペンを持ちかつて物語を綴った草原へ足を向けた。
一方、グロスタシャーを散策していたマイルズは草原にいたリアを見つけ声を掛ける。
アラン。
そう声を掛けたマイルズにリアはいつもの調子で返してしまう。
声の相手がマイルズだと気付いたリアは取り繕おうとするも、マイルズはリアが女性である事を随分前から知っていたと告白した。
風邪をひいていた時、彼はコルセットを外しシャツをはだけていたリアを見たのだ。
医者を呼んだ時、そのコルセットはマイルズが着せた様だったが、彼の弟が風邪で死んだ為、マイルズは他人の病気に対して過敏である事を鑑み、外していたコルセットをマイルズが着せたという件をリアは不問にする事にした。
さらにお互い秘密にしたい事があるという事で、女性と知っていたのに黙っていた事は水に流した。
しかし、黙っていたのなら故郷まで来た理由が分からない。
知らないふりをするなら、わざわざ来る必要は無い筈だ。
その事を尋ねたリアに、彼は自分を信用して欲しいからだと返した。
マイルズは以前女流作家ジャレッド・スノウに会った後、リア(アラン)が言った「マイルズの事は信頼してるって、たぶん」の「たぶん」の部分が気にかかり仕事が手に付かずにいたのだ。
彼はその「たぶん」を取って欲しくて、わざわざグロスタシャーまで来たようだった。
感想
今回はマイルズの告白と二人の関係性がメインに描かれました。
リアは女性である事で認められなかった過去の為、マイルズに女性と分かった後も男性作家アランとして見て欲しいと要求します。
しかし、マイルズは男女の如何では無くアラン(リア)に個人として好意を抱いている事を告白しました。
読んでいて感じたのは、リアはあくまでカテゴリーとして女性と見られる事を忌避しているという事と、マイルズは友人としてのアラン、そしてそれを形作っている女性のリア、その全てを含めて彼女の事を愛しているのだなという事でした。
リアは女性全般、マイルズはアラン個人。
作中、二人の認識はそんな感じで少しズレている様に感じました。
まとめ
今後、二人に恋愛感情が芽生えるのか、その辺りは不明ですが二人が話し合いで解決する人間で良かったです。
この作品はイーストプレス公式サイトMatogrossoにて一部無料でお読みいただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。