カイニスの金の鳥 2
著:秦和生
出版社:イーストプレス
ロンドンに出て小説家マイルズの隣の部屋で暮らし始めたリア(アラン)は人気作家カール・ダンヒルに会う為出掛けたスラムからの帰り、雨に降られ風邪を引いてしまいます。
ベッドでコルセットを外し寝込んでいたリアは、彼女を案じ声を掛けたマイルズに朦朧とする意識のまま対応。
彼に女性である事を知られてしまいました。
登場人物
マイルズの父
ヨークシャーに所領を持つ貴族
酒乱の気があり、飲んでは使用人に暴力を振るう。
過去にはマイルズや弟のテオも殴り鞭で打っていた。
マイルズはその事で父親を軽蔑し毛嫌いしている。
テオ
マイルズの弟
失踪したマイルズに変わり財産を相続した。
出来の良いマイルズと比べられ、それを少し疎ましく思っている。
父親を尊敬しており貴族のしきたりに倣い、彼が家督を継ぐべきだと考えている。
ミリー
マイルズの家の使用人
マイルズの父から暴力を受けており、彼女の両腕には痛々しい傷跡が残っている。
クリス
マイルズの異母弟
体が弱く、マイルズに非常に懐いていた。
彼が仕事で家を離れている間に体調を崩し亡くなった。
ジャレッド・スノウ
男装の女流作家
本名はアビゲイル。
出版社に女性の名前では本が売れないと言われ、男性の名前で本を出版した。
男装はしているが女性である事は隠しておらず、本が売れた事で彼女に女性である事で何か言う者もいなくなった。
あらすじ
コルセットを外したアラン(リア)の姿を見たマイルズは、彼女が女性であると気付いた。
だが、彼はその事に触れる事無く医者を呼び、リアを自分の部屋で寝かせた。
ピアノの音で目覚めたリアは熱を出していた間の事を覚えておらず、マイルズに性別を偽っている事がバレたとは気付いてはいなかった。
その後、リアにベッドで寝ている様に言ってマイルズは人に誘われパブに出かけた。
そこでリアが熱を出した原因であるD(カール・ダンヒル)と出会う。
リアの秘密を知ってしまった事で悩んでいたマイルズは、Dに人の秘密について意見を求める。
彼の答えは「秘密ってのは知られたくないから秘密って言うんだろ」だった。
続けてバレても言って欲しいかは、時と場合と相手次第という物だった。
それから暫くして久しぶりにアラン(リア)に出会ったマイルズは、以前と同じく友人として振舞った。
性別がどうあれ気が合う事に変わりはない。
それに誰だって今にいたる理由がある。
マイルズにも捨て去った過去があるのだから。
感想
今回はリアの隣人、小説家マイルズの過去をリアが彼が書いた小説として追体験していくエピソードがメインに描かれました。
貴族の地位を捨て一介の小説家としてロンドンで暮らすマイルズ。
今回のエピソードを読むと、彼が限界を感じて逃げたした気持ちがよく分かります。
裕福な暮らしを送れても、雁字搦めの生活は彼の心を追い詰めていったのでしょう。
どうにもならない閉塞感、貴族である限りマイルズはそれから逃れる事は出来なかったのだと思います。
貴族である事を辞め、自分に会いに何度も下宿を訪れた弟テオとも向き合ったマイルズは一つ自由になった様に感じました。
まとめ
今回はマイルズの過去の他、女流作家ジャレッド・スノウとリアの出会いも描かれました。
彼女はリアが考えていた事を先んじて行っている人物です。
彼女との出会いが今後、リアの生き方にどういった影響を与えるのか、読むのが楽しみです。
この作品はイーストプレス公式サイトMatogrossoにて一部無料でお読みいただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。