漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件 4 イブニングKC
原作:クマガエ
漫画:宮澤ひしを
出版社:講談社
漫画雑誌の編集者だった佐熊陽平(さくま ようへい)は十四年務めた出版社を退職。
一年目、飛魚市で暮らした陽平と妻のミユだったが、飛魚市は彼らにとって余りに田舎すぎた。
家は隙間風と雨漏りが酷く、直そうにも業者が少なく修理は二か月先。
風呂にシャワーはなく、家の周囲にカフェもなく虫天国。
二人はそんな厳しい環境から飛魚市で暮らすことをあきらめ、田舎と都会のバランスのいい翼野市に引っ越す。
その翼野市で陽平達は有機農業の研究者アナンと出会い、有機栽培された野菜の美味しさに驚く。
登場人物
矢内紀子(やうち のりこ)
新人漫画家
ショートカットのパンキッシュな女性。
陽平が担当していた漫画家の卵。
スマホが水没し連絡が取れなくなった事で、陽平が出版社を辞めたことを知らずにいた。
陽平にネームを見てもらおうと出版社を訪れる。
あらすじ
陽平達が翼野市に腰を落ち着け、有機野菜の美味しさや味噌作りの楽しさを体験し焦らず行こうと考えていた頃。
東京の出版社では同期の押井(おしい)が、次期編集長候補として振られる仕事に少しげんなりしていた。
彼は編集者として数々のヒット作を手掛ける編集部のスターだった。
彼自身、編集の仕事にやりがいを感じていた。
しかし、編集長の仕事はお偉方との会議や、部下を育てる事も含まれている。
行きつけの店で「面白い漫画を作るだけじゃだめなのかな~~」とカウンターに突っ伏しぼやく。
そんな押井にマスターは同じことを昔、陽平も言っていたと微笑む。
彼の場合は押井と違い、面白いのに売れないという悩みから出た言葉だったが……。
かたや未来の編集長候補、かたや田舎でニート街道まい進中。
そう言ってマスターのかざしたスマホに映る陽平の姿に、あははと笑い、押井は店を後にした。
帰りのタクシーの中、ぼんやりと夜景を眺めながら押井はほんとうにそれでいいのかと思った。
感想
今回は冒頭、次期編集長候補として担当が減る事になった押井のぼやきから始まり、フリーランスの編集者として漫画業界に戻るか悩む陽平、新たな田んぼとコメ作り、新人漫画家矢内と押井、トマトの種とポケット催芽(さいが)、フリー編集者としての担当の打診と稲の種まき、押井と田植え、陽平の決意と畑作業、畑の循環システム、農家とフリーランスライター、東京での違和感、野菜収穫、日本の種事情、二年目の米などが描かれました。
今回はその中でも都市部の食糧自給についてが印象に残りました。
東京などの大都市だけでなく、日本は食料供給を海外に依存しています。
現在、リアルタイムで起きている戦争など人為的要因の他、自然災害などで食糧の入手が困難になった時、いったいどうなるのか、作品を読んでいて不安を感じました。
また、作中語られた種についても同様に不安を感じました。
日本の農家さんは基本、種を購入し野菜を作っています。
その種からできる野菜は一代限りで、種を取っても二代目はちゃんとした野菜に育たないようです。
そしてその種を作っている業者は九割が海外企業だったりします。
もしアナンが言うように世紀末な世界になったら……。
作ろうとしても作れない、海外からの食糧も入ってこない。
食は生命維持に直結しています。
利益優先ではなく、自給自足が可能な社会になればいいなと作品を読んでいて思いました。
まとめ
都会を離れ、農業をしながらの田舎暮らしを描いた本作もこの巻で完結。
スローライフだけじゃない、田舎で暮らすためのリアルが語られた、とても興味深い作品でした。
この作品はコミックDAYSにて一部無料でお読みいただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。