未来放浪ガルディーン外伝(1) 大出世。
著:火浦功
画:出渕裕・ゆうきまさみ
出版社: 角川書店 角川スニーカー文庫
本編第一巻の一話目で、父の仇であるジョージ<無謀王>ヴァルマーを打ち取ったフレイヤ―家の王女コロナ。
彼女は踊り子のシャラ、口先だけで生きる男スリム、歌って踊ってベタも塗れる機動兵器ガルディーン、空から降ってきた軍人ヤマトと共に、今日も過去の英知が眠るタワーを探して荒野をさまよっていた。
外伝だけど、やってることは本編とあんまり変わらないよ。
文明が一度崩壊した未来を舞台にした、なんでもありの冒険活劇の外伝第一弾。
あらすじや感想など
第一話 スリム・ブラウン出世物語
冒頭部分 あらすじ
スリムに有り金を全て持っていかれたコロナたちは、左官屋の熊さん相手に美人局をしていた。
美少年(女)、美少女(男)、巨大ロボ(T-178)という、異様な組み合わせを見た熊さんは、財布を落として走り去った。
熊さんの財布を回収したシャラが言うには、この先にカリスという町があり、そこはギャンブルと温泉で有名らしい。
スリムはギャンブルが大好きだから、おそらくその町にいるだろうとシャラは話した。
しかし彼は博打は好きだが、恐ろしいほど弱く、負けが込んで来ると手あたり次第、なんでも抵当に入れるそうだ。
知らない間に借金のかたに売られる。
そんな未来はまっぴらごめんと一行はカリスへ急いだ。
シャラの予感は的中し、スリムは麻雀で百万点程負けていた。
「あんた…、背中がススけてるぜ。」
どんなに格好良く哭きの竜のものまねをしても、誤魔化せる訳もなく、身ぐるみをはがされたスリムは簀巻きにされ、川に放り込まれるのであった。
感想
本編の二巻が発売された後、この外伝は刊行されました。
二巻の最後で突然現れた、ヤマトが一行に馴染んでいるため、読者としては、お前はいったい何者だ、という気持ちが沸き上がりますが、そんなことを言っても始まらないので、そういうものだと割り切って読むのが良いと思います。
混浴温泉、セーラー服ディーラー、巨大怪獣VS巨大ロボ、伝説の亀狩り等、盛りだくさんの内容でお送りしております。
第二話 ベリアルの日曜日
冒頭部分 あらすじ
ヴァルマー軍の情報将校ベリアルは、上官であるキリーに執務室へ呼び出されていた。
キリーは新しいおもちゃを与えられた子供のように、手に笛を持って笑っている。
笛は人間の可聴域を遥かに超えた音を発生させる。
聴くことが出来るのは、犬と海底人8823(ハヤブサ)とマグマ大使、そして悲劇の改造人間ベリアルだけである。
キリーが戯れに笛を吹いた。
その瞬間、ベリアルに脳を鷲掴みにされるような衝撃が走った。
ベリアルのやめてくださいという懇願を聞き、面白がって余計に笛を吹きならすキリー。
騒ぎを聞いて駆け付けた、トロルキン博士の話では、聴覚レベルの調整は慣れれば出来るようになるとのことだった。
駄目だった時は、こめかみにボリュームのつまみを付けてやると博士は自信ありげに言った。
執務室を出ようとするベリアルに博士が告げる。
「言い忘れてたが、君の脳の一部を機械に置き換えさせてもらった。」
「なんですって?」
キリーは了承済みらしいが、ベリアルは何も聞いていない。
博士は楽しそうに、補助脳について語った。
感想
ガルディーンでは珍しい、というか初めてのハートフルなお話です。
ベリアルはこのお話の中で、記憶を失い、山中にある村の少女に拾われます。
情報将校として生きてきたベリアルにとって、村の穏やかな生活は天国の様でした。
この物語でベリアルの事が一気に好きになりました。
第三話 荒野の七輪
冒頭部分 あらすじ
今日も今日とて、アルタミラ率いるコロナ討伐軍の一行は、コロナの居場所を探していた。
しかし、部下たちの頑張り空しくコロナの行方は一向につかめなかった。
憤るアルタミラの鼻を異臭が刺激する。
異臭は浮遊戦闘母艦パンダグリュエルの甲板で、賞金稼ぎのレーベンブロイが七輪で焼いている干物から出ていた。
嬉しそうに大吟醸の一升瓶を傍らに置いて、焼き加減を見ているレーベンブロイの後頭部を、アルタミラは思いっきり蹴りつけた。
何をしていると問えば、くさやのいいのが入ったんでねと悪びれもせずに答える。
レーベンブロイのペースに巻き込まれつつも、会話を進めるとこれは祝いだという。
どういう事かと問うアルタミラに、彼は紙の束を渡した。
請求書だった。
主にレーベンブロイが飲み食いした、キャバレーやスナックの物だ。
ふざけるなと声を荒げるアルタミラに、レーベンブロイが待ったをかける。
「よく見てみな、請求書だけじゃないんだぜ。」
「?」
「領収書も入ってるだろ。」
「殺す」
怒り心頭のアルタミラにレーベンブロイは、自信満々で宛名をみろと言った。
領収書の宛名はコロナ・フレイヤ―様となっていた。
感想
時代劇やヒーロー物では定番の、偽物登場のお話です。
本来、時代劇に出て来る偽物は、どこかチープさが漂う物ですが、この物語では劇中でも語られているように、偽物の方が本物っぽいし、なんか威厳もあります。
第四話 恐竜天国
冒頭部分 あらすじ
「あれは、なんだ?」
スリムが指さした先を、誰も見てはいなかった。
何故なら彼らの周りには、あれと書かれた矢印が無数に立っていたからだ。
一体何の意味があって、こんなに矢印を立てたのか。
とにかく、一行がてんでバラバラのあれに注目する中、スリムだけは先に見える湖に、鎌首を持ち上げる影を見た。
スリムがここはスコットランドの高地だろうか、と考えていると彼の背後に人影が立った。
「見ましたね。」
男は執拗にスリムに見たかどうかを尋ねてくる。
頭の中で、山奥の閉鎖的な村→かたくなにある秘密を守り続けている人々→それを見てしまう間抜けなよそ者→凄惨な結末という起承転結が描き出される。
何も見ていないことにして、立ち去ろうとするスリムに男が口を開いた。
「村じゃ、あれを見た者は、一生幸運に恵まれるという言い伝えがあって、その夜はどんちゃん騒ぎでお祝いするしきたりなのに…」
それを聞いて、スリムではなくシャラが飛びついた。
シャラに押し切られ、嫌な予感を感じながら、スリムは村に向かった。
感想
何にでも最初はある。そういう事でしょうか。
今では何百年も続き伝統ある祭事も、きっかけは誰かの思い付きだったのかもしれません。
まとめ
最初に書いたように外伝と銘打ってはいますが、内容は本編と特に変わりません。
本編はタワーを目指すという目的があるため、そちらに向かってお話は進みますが、外伝は番外編ということで、より好き勝手にキャラクター達が暴れているように思います。
未来放浪ガルディーン外伝(1) 大出世。 (角川スニーカー文庫)[Kindle版]