小説 小説短編

祭火小夜の後悔

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月祭火小夜の後悔
著:秋竹サラダ
カバーイラスト:ねこ助
カバーデザイン:大原由衣
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

第二十五回ホラー小説〈大賞〉〈読者賞〉をダブル受賞した「魔物・ドライブ・Xデー」を改題した短編集。
こちらは過去に単行本として発売された作品が文庫化された物です。

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登場人物

祭火小夜(まつりび さや)
高校二年女子
人形の様に整った顔立ち、黒く滑らかな長髪が特徴の少女。
成績優秀品行方正な優等生として周囲からは認識されている。
少し抜けた所がある。
怪異について深い造詣を持つ。

坂口(さかぐち)
高校教師
専門は数学。
地面を確認しなければ不安を感じる為、歩く時はいつも俯き加減。

石山(いしかわ)
新任の女性教師
小夜のクラス担任

浅井緑郎(あさい ろくろう)
高校一年男子
坂口が受け持つクラスの生徒
父方の祖父は旧家であり地主、親戚はその祖父に気に入られようと必死なようだ。

糸川葵(いとかわ あおい)
高校二年女子
小夜とは同じ中学校だった少女。
ある理由から目立たないようにしているが、内面はかなりアグレッシブ。

床下に潜む

高校教師の坂口は、同僚で新任の石川が生徒の机を運んでいるのを見かける。
話を聞けば担任している生徒の机が傷んでいる為、旧校舎に置かれている予備の机と入れ替えるのだと言う。

女性の石川に机を運ばせるのを忍びなく感じた坂口は、代わりに運ぼうと申し出た。
石川は恐縮しつつその申し出を受け入れ、坂口は彼女に変わって机を旧校舎へ運んだ。

その旧校舎で坂口はとても美しい少女と出会う。
その少女から彼は奇妙な話を聞かされた。
旧校舎の廊下に一つだけ滑りやすい床がある。
他の床は細かい傷が付いているいるのに、その床だけはピカピカだ。

少女は「アレ」がいて床板をひっくり返しているのだと坂口に語った。

にじり寄る

高校一年生の浅井緑郎はここ三ヶ月ほど、原因不明の肋間神経痛に悩まされていた。
それだけならいいのだが、問題は痛みと共に現れる大きなムカデだった。

現在の所、ムカデは深夜の自室に現れ動く事は無い。
最初は五日おきぐらいだったのが、最近では毎晩のように現れている。
不気味なそのムカデと肋間神経痛の所為で緑郎は眠る事もままならなくなっていた。

そんなある日、寝不足で遅刻しそうになった緑郎を高校の先輩らしき女子が、近道だからと避けていた神社の境内を通り抜ける道に連れ込む。

緑郎は従姉の葉月から父方の祖父の地域に伝わる、ムカデについての話を聞いていた。
対処法は神社に近づかない事。

その夜、危惧していたとおり今まで近づく事の無かったムカデが、緑郎にゆっくりと近づいて来た。

しげとら

現在高校二年生の糸川葵には人には言えない秘密があった。
彼女がまだ小学生になったばかりの頃、一人で外で遊ぶ事を許された葵はある時、公園で鉄棒の練習をしていた。

だるま回りという技で連続で出来ると、周囲から一目置かれる結構難度の高い技だ。
葵は何度も失敗するが、最後の一回と勢いをつけて挑戦してみた。

すると技は成功、喜びを感じた葵はもう一度と鉄棒から身を放す。
その時、買ってもらったワンピースのリボンが鉄棒に絡まり服が破けてしまった。

気落ちする葵に真っ黒なスーツに山高帽を被った男が声を掛ける。
警戒する葵に男は新しい服をやろうかと問い掛けた。

祭りの夜に

梅雨も明けた夏休み前のある日、坂口は旧校舎の件で気になっていた祭火小夜の友人を名乗る糸川葵に相談を持ち掛けられる。
どうやら相談とは小夜の事のようだ。
彼女は困っているんですと声を上げる葵を落ち着かせ、坂口は葵の提案を飲み放課後に話を聞く事を承諾した。

放課後、指定された担任している教室には小夜と葵の他に一年生の男子生徒がいた。
説明を求めた坂口に小夜はこう言った。

「祭りの夜に、魔物が出るのです」

感想

最初の三話はそれぞれ坂口、緑郎、葵が主体となってお話が進行し、第四話で彼ら三人と小夜が合流する形に作品は形作られています。

作中登場する怪異については、私が知る限りでは創作かと思われます。(私が知らないだけで元となった話があるのかも知れません)

作中の雰囲気がとても良く、高校生と教師による怪異譚という物でとても楽しく読む事が出来ました。

少し切なく、それでいて爽やかな読後感を感じる作品でした。

まとめ

2020年の夏には第二弾が角川ホラー文庫より発売されるそうなので、そちらも楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのdayamayによる画像です。
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