たゆたいエマノン
著:梶尾真治
画:鶴田謙二
出版社: 徳間書店
地球上に生命が発生してからの、すべての記憶を受け継いでいる少女、エマノン。
時を飛び放浪を続けるヒカリ。
二人の少女の邂逅と友情を描いた短編集。
こちらは以前単行本として刊行された作品が文庫化された物です。
各話あらすじ
たゆたいライトニング
地球上に生命が誕生したばかりの頃、微生物であったそれは“ヒカリ”と名乗る存在と出会う。
“ヒカリ”は微生物にエマノンと呼びかけた。
それから数十億年、“ヒカリ”とエマノンは互いを大切な友人として思い続ける事になる。
ともなりブリザード
黒宇島、日本最北端に位置する離島だ。
早稲美波(わせ みなみ)は婚約者である深水健人(ふかみ けんと)と暮らす為、その人口二千八百人の島を訪れる事になる。
美波はその島に向かうフェリーの中で、エマノンの名乗る少女と出会う。
ひとひらスヴニール
母を亡くした春田俊吾(はるた しゅんご)は、父と離れ祖父母の住む樫葉という土地で暮らす事になった。
街で育った俊吾は田舎に馴染めず、一人、母の面影を求め過ごしていた。
そんな彼の前にとても綺麗な女性が現れる。
その長い髪の女性は名前を尋ねた俊吾に、エマノンと呼んで欲しいと答えた。
さよならモーイズ
数十年ぶりに踏んだアフリカの地は、紛争によって死と破壊がそこかしこに広がっていた。
かつて自分を救ってくれた大学院生の女性、コモナ・ムアンザがいた類人猿保護区に向かうべく、エマノンはひび割れ風化した道路の上を歩いていた。
けやけしドリームタイム
高校生の祐介(ゆうすけ)はある時、夢の中でとても魅力的な少女の夢を見た。
その日、登校した祐介はクラスメイトの梅野(うめの)も全く同じ夢を見た事を知る。
その後、漫画部の梅野の画を切っ掛けに同じ夢を見たと言う者が、祐介を含め四人も現れた。
彼らは自分達が見た夢に現れる美少女は何者だと、夢について話し合いを始める。
感想
今作は一作目にあたるおもいでエマノンに収録されている「あしびきデイドリーム」に登場する時を旅する女性、ヒカリが幾つかの作品に登場します。
エマノンが記憶を引き継ぎどの時代も存在しているのと違い、彼女は人と同じ時間で老いながら時間を跳躍する存在として描かれています。
彼女の時間跳躍は自分ではコントロール出来ないようで、同じ時間にそれ程長く留まる事は出来ません。
また、飛ぶ先も時系列順では無くバラバラです。
時に幼く、時に年老いた姿でヒカリはエマノンの前に現れます。
今作では「あしびきデイドリーム」の別の側面も描かれました。
彷徨う事を運命付けられたヒカリ。
読んでいて切なさと同時に、ホッとした様な安堵感を感じる不思議な気持ちになりました。
まとめ
久しぶりに読みましたが、エマノンは以前と変わりなくエマノンでした。
飄々として優しくて、透き通る様な魅力を持った何処か儚い少女。
また彼女の旅が読めて、とても嬉しかったです。
作者の梶尾真治さんのTwitterはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。