こはぜ町ポトガラヒー ~ヒト月三百文晦日払~ 2 ビッグコミックス
作:昌原光一
出版社:小学館/ビッグコミック
貧乏御家人鳴滝家。
その当主彦衛門の妻千草の出産も無事に終わりました。
無事に生まれた事を弥一郎も長屋の面々も手放しで喜んだのですが、千草が生んだのは双子の兄弟でした。
それ自体は喜ばしい事だったのですが、江戸の世では双子は余り歓迎されない様でした。
登場人物
右弥太(うやた)と左弥太(さやた)
彦衛門と千草の子
双子の兄弟。
並べて寝かせると右弥太は右、左弥太は左に自ら場所を入れ替える。
江戸の世では双子は畜生腹と言われ忌み嫌わていた。
安坊(やすぼう)
孤児の少年
橋で車押しをして駄賃を貰い生活している。
源蔵(げんぞう)
大工の棟梁
鳴滝家の長屋を普請した大工。
現在は御用聞き(岡っ引き:同心が私的に雇った部下)として活動している。
伊三次(いさじ)
源蔵の部下
喧嘩っ早い若者。
源蔵と同じく御用聞きとして動いている。
才助(さいすけ)
浪人風の男
通りで倒れた所を弥一郎に保護される。
おいど
安坊が姉と慕う少女
旅籠(はたご:旅の宿)丹波屋で奉公する少女。
登勢(とせ)
おりんと因縁のあった女
おりんの元勤め先、角屋の女房。
おりんとの諍いが原因で離縁され実家に戻された。
犬(いぬ)
長屋の住人
以前長屋に住んでいた浪人、神谷が助けた犬。
神谷が剣術道場に移った後、弥一郎に託された。
あらすじ
千草が双子を生んだ事で貧乏御家人鳴滝家の家計は一層厳しい物になる。
しかも双子は江戸では縁起が悪いと奇異の目を向けられる存在だった。
千草の実父はその事を憂い、どちらか片方を養子に出してはどうかと千草に提案する。
しかし千草はもとより、弥一郎も彦衛門も子を手放そうとは一切考えていなかった。
良い家に嫁いだと千草の父は笑みを浮かべる。
しかし、現実問題として食い扶持が二人分増えた事は確かだ。
弥一郎は友人であり徒目付(内部査察を行う役職)の横川からの依頼を受け、旅籠に入る人間の調査をする事となった。
感想
今回は双子の誕生で物入りとなった鳴滝家の家計を助ける為、弥一郎は公儀の仕事の手伝いを引き受けます。
その過程で起きる様々な出来事に首を突っ込み、新たな住人が増えて行きました。
今回も公儀の仕事に関わりながら、弥一郎は町で暮らす人々の生活に寄り添い互いに助け合いながら暮らしていきます。
また、これまで長屋の人々と交わる事が無かった彦衛門も、息子たちの誕生を機に自ら彼らに歩み寄って行きました。
作品を読んでいると弥一郎は肩書に執着する事無く人を見ていると感じます。
身分や貧富の差で測る事無く、同じ人間として、……犬にも対応が変わらないので同じ生き物として接していると思いました。
身分がきっちり定められた江戸時代において、それは異端だったのでしょうがカテゴリーで人を見る事が多い昨今、こうありたいなと改めて感じました。
まとめ
長屋の住人たちは皆、何か抱えてはいますが気持ちのいい人が多いです。
何となくですが、自分が荷物を抱えているから他人の痛みも理解出来る。
そういう部分もあるのかもしれません。
この作品は小学館公式サイトにて第一話が無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。