こはぜ町ポトガラヒー ~ヒト月三百文晦日払~ 1 ビッグコミックス
作:昌原光一
出版社:小学館/ビッグコミック
幕末、明治維新も間近に迫った江戸の町。
その江戸のこはぜ町の長屋で暮らす人々の悲喜こもごもを描いた作品です。
登場人物
鳴滝弥一郎(なるたき やいちろう)
長屋の大家
お人好しで面倒見のいい、人の機微に聡い侍。
剣の達人。
過去に起こした事の責任を取り弟に家督を譲った。
鳴滝家は小普請(無役)の貧乏御家人である為、日々の糧を得ようと屋敷の庭に長屋を立て町人に貸している。
長屋の店賃は月三百文、晦日払い。
鳴滝彦衛門(なるたき ひこえもん)
弥一郎の弟
生真面目で融通の利かない所がある。
兄の弥一郎が長屋に問題のある者を入れる事に不満を感じているが、兄の為人を嫌と言うほど知っている為か諦めの境地に有る様だ。
家督を継いだ事を期に名を彦衛門と改めた。
元の名前は彦次郎。
千草(ちぐさ)
彦衛門の妻
優しく穏やかな女性。
妊婦。
五平(ごへい)
長屋の主
弥一郎と親しい町の老人。
おりん
科人(とがにん:前科者)の女性
罪は既に償ったが科人である過去は消えず、周囲から厳しい目を向けられている。
元は五平の長屋の店子だったが周囲の目を逃れる為、五平は弥一郎を頼った。
本来の為人は気の良い少し勝気な美人さん。
佐吉(さきち)
長屋の住人
賭けごとに目が無い。
飾(かざり)職人。簪(かんざし)等の細工物を作り生計を立てている。
腕は良く彼の簪には多くのファンがいる模様。
嘉助(かすけ)
長屋の住人
労咳を患っている。
楊枝(歯ブラシ)作りの職人
蝦ノ市(えびのいち)
長屋の住人
按摩を生業にする盲目の男。
神谷又四郎(かみや またしろう)
長屋の住人
傘張りで糊口をしのぐ浪人。
上からの指示で人を斬った事を切っ掛けに、脱藩し浪人となった。
横川雅大(よこかわ まさたけ)
弥一郎の知己
弥一郎とは同じ道場に通った仲。
現在は徒目付の職についており、弥一郎にある仕事を依頼する。
辰次(たつじ)
長屋の住人
夜泣き蕎麦を生業としている。
あらすじ
江戸はこはぜ町にある武家屋敷。
その庭には長屋が建てられ町民たちが暮らしていた。
大家の鳴滝弥一郎は侍でありながら身分の隔たりに執着する事無く、店子たちと言葉を交わし問題が起きれば駆け付け、その解決に一役買っている。
そんな弥一郎の長屋に新たな住民候補がやって来た。
町人の女で名前はおりん。
彼女は罪人として島流しの刑に処され、お勤めを終えて江戸に戻ってきた。
しかし罪を償っても周囲の目は冷たく、以前住んでいた五平の長屋にいる事は出来そうに無かった。
そこで五平は弥一郎を頼った。
彼の長屋には脛に傷を持つ者が多く集まっている。
大家の弥一郎自身が自ら脛に傷があると吹聴するぐらいだ。
科人である事で後ろ向きになっていたおりんに、その事を語り弥一郎は彼女の罪を聞く事無く店子として受け入れた。
感想
時代的には幕末、イメージで言うといちげきの様な動乱の時代を想像しますが、この作品では変わりなく続く庶民の暮らしが描かれています。
長屋の店子たちは人物紹介に書いた様に様々な問題を抱えています。
そもそも大家である鳴滝家自体が小普請の御家人であり、幕府から貰える給金では家を維持していくのは難しいみたいです。
多分、杉浦日向子さんの著作だったと思うのですが、武士、しかも幕府に仕えていても無役の侍はとても貧乏だったと書かれていたと記憶しています。
ですが貧乏でも年中行事にはお金が必要、結果的に商人からお金を借りてやりくりしていたみたいでした。
この作品でも描かれていますが、拝領屋敷を家作にして日々の糧を得る事は珍しい事では無かったようです。
そんな感じで大家の弥一郎も決して裕福では無いのですが、家族や店子たちと楽しそうに暮らしています。
貧しいながらも真っ当に生きようとしている人達の姿は、読んでいてとても心地いいです。
まとめ
なんと言うか、人を助けても恩着せがましくない。
コッソリ助けてお互い様だからで終わらせる。
こういうのが粋っていうのかなと思いました。
この作品は小学館公式サイトにて第一話が無料でお読みいただけます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。