小説 長編小説

プロジェクトぴあの 上巻

投稿日:2020年4月4日 更新日:

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ヘルクレスプロジェクトぴあの 上巻 ハヤカワ文庫JA
著:山本弘
カバーイラスト:つくぐ
出版社:早川書房

従来の燃料に頼った推進装置では無く、物理の常識を超越し生み出された「ピアノ・ドライブ」
それを生み出した現役アイドル結城ぴあのの物語です。

登場人物

結城ぴあの
アイドル/天才
ジャンキッシュというアイドルグループに所属する少女。
普段はメイクや身だしなみに無頓着でアイドルとは認識出来ない。
天文学、物理学に精通し、それを土台に考察と実験を繰り返している。
また、歌唱力も人並み外れて高い。

義務教育以上の学校教育を拒否し、独学で知識を得た。
その為か、常識にとらわれない自由な発想をする。
彼女の目的は唯一つ、外宇宙、他の星系への到達である。
アイドルもその為の資金と支持者・支援者を集める事が目的。

彼女が持つ他者に対する感覚は一般的な物とかけ離れている。
人間と物に対する認識が同等であり、例えばデータを詰め込んだハードディスクを大事に思うのと同じ感覚で人を大事だと感じている。

推測ではあるが、彼女にとってこの世の全ては原子や分子、その他の素粒子で構成された物であるという物理学的視点から見ている様な気がする。
そう考えれば人であっても、炭素や水等で構成された物質の集合体でしか無いのかもしれない。

喜尾根すばる/下里昴(きおね すばる/しもさと すばる)
大学生
女装が趣味の所謂男の娘。
電子工学科を専攻している大学生。
秋葉原のパーツショップでぴあのと出会い、彼女が作ろうとしている回路に興味を持つ。
その事が切っ掛けで装置製作について相談を受ける様になった。(ぴあのは天才だが知識はネットや書籍等から得ており、電子部品の製作における基礎知識には所々抜けがある)

すばるはぴあののやろうとしている事と、その特異な人間性に魅かれ彼女を支援する事を決意する。
異性としても魅力を感じているが、ぴあのは恋愛感情を持つ事がないので現在の関係性を崩す事を恐れ男の娘の姿、女性の友人という形で付き合う事を選んだ。

真下洋孝(ました ひろたか)
芸能事務所社長
元ロッカーで現在はぴあのの所属するジャンキッシュの所属プロダクション社長。
元は過激なロックンローラーだっただけあって、人生に面白さをもとめている。

あらすじ

少し先の未来。
ARが街に溢れリアル・アイドルの存在が斜陽となりつつある時代。

女装が趣味の青年、ハンドルネーム、喜尾根すばるは秋葉原のパーツショップでオーナーが姫と呼ぶ野暮ったい少女と出会う。
彼女は電源ユニットや大量のコンデンサー、ダイオード等を購入していた。

気になったすばるはそれと無く彼女を観察した。
店員との会話を盗み聞いていると、彼女は高圧電流を使用する回路を実験の為に作りたいようだ。
しかし、高度な知識は有していても回路製作の経験は少ないようで、初歩的な所が抜けているようだ。

別の店に入り店員に質問している少女の声に耳を傾けながら、そんな事を思っていると少女は突然振り返り、すばるに「どう思います?」と問い掛けた。
盗み聞いていたのはバレていたようだ。
少女に咎める様子は無く、純粋に回路について意見を聞きたいようだ。

「どんな回路か分からないと、答えようがないかな?」

狼狽えつつも、そう答えたすばるに少女はそうですねと頷き、スマホを差し出した。
電子工学科の学生であるすばるは、差し出されたスマホに表示された回路図を確認する。

各部の構成は基本に基いたしっかりとした物だったが、全体像をみると何のための物かサッパリ分からない。
詳しく話を聞く為、場所をスタバに変えて腰を落ち着けた。

この回路は熱擾乱雑音を増幅する装置らしい。
増幅してどうするのかと尋ねるすばるに、結城ぴあのと名乗った少女は時間の矢を反転できないか調べていると答えた。

感想

ようこそ旧人類(うすのろ)ども。
そんな書き出しから始まる突然変異的天才、結城ぴあのの物語です。

作品は2014年に発表された単行本の文庫化です。
舞台は今より少し先の世界。

作中でもフロンティア・スピリットは失われ、人は宇宙開発に対する魅力を失っている様でした。
実際に現在の燃料式推進器では費用面から考えても資源を採取した所で、運送にかかる費用が大きすぎて採算は取れないでしょう。

莫大な予算を投じても得られる物がなければ人は動きません。
大航海時代の様に海の先に巨万の富があるような状況なら、多分宇宙開発もガンガンに進むのでは無いでしょうか。

そんな中、ぴあのは自分の望みを叶える為、相対性理論に風穴を開け新たな見方を発見し「ピアノ・ドライブ」と名付けられる超光速推進装置兼永久機関を発明します。

内包する物質全てが均一に加速される為、Gが搭乗者に掛かる事が無く、爆発的な加速を得ることが出来、しかも燃料いらず。

正直、ぴあのの語っている事は物理をイメージでしか理解していない私にはチンプンカンプンでしたが、科学における常識を覆し事実をもってその存在を証明する彼女は、最高にクールでカッコ良かったです。

まとめ

経済の不安やコロナの問題で不安と閉塞感の漂う現在、フィクションではありますが未来に希望を感じるとても元気の出るお話でした。
門外漢なのでピアノ・ドライブについては理解出来たとは言えませんが、本当に存在すればいいのにと感じさせる物でした。

作者の山本弘さんのアカウントはこちら

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのDarkWorkXによる画像です。
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