グッバイ、ノーベル! 3 ビッグコミック
著:竹充ヒロ
出版社:小学館
すずと同い年の小説家、早乙女桜。
龍平ナヲキの大ファンである彼女にも、幽霊であるナヲキの姿が見える様になります。
その事ですずとナヲキの関係に変化が訪れます。
あらすじ
ナヲキが幽霊として存在している事を知って涙を流した桜。
編集部に届くナヲキへの段ボール一杯のファンレター。
未だにナヲキを求める人々の多さに、すずの心にはある想いが生まれた。
その後、編集者一ノ瀬との打ち合わせですずはナヲキとの合作「還らない手紙」の詳しい反響を聞かされる。
それによるとノベルとコミック、同時に配信されたそれはかなり評判がいい様だ。
その事で一ノ瀬はすずに改めて長編の執筆を依頼した。
だがすずは彼の言葉を遮る形で問う。
「今『龍平すず』と『龍平ナヲキ』、どちらの新作が読みたい?」
一瞬の沈黙の後、すずは一ノ瀬の答えを聞く前に彼に断りを入れて打ち合わせを打ち切った。
中学館を後にしたすずを追って来た桜に、ナヲキと出会う切っ掛けになった橋の上で彼が幽霊になった理由を桜に話す。
桜はナヲキが小説の為に幽霊になったと思っていたようだが、実際はラブレターを処分する為に現世にしがみ付いたと知りショックを受ける。
その後、楽しそうに作品について語り合うナヲキと桜を見て、すずの中に生まれた想いは大きさを増していった。
感想
多くのファンを持つナヲキ。
すずとの合作は確かに世間に受け入れられましたが、純粋なナヲキの新作とは呼べないでしょう。
龍平ナヲキの新作を求める人々。
彼のファンであり、生前の作品を深く理解し愛している桜なら、その人々が求める物を生み出せるのではないか。
すずはそう感じ、ナヲキとのコンビ「龍平すず」を終わる事を宣言します。
亡くなってしまった作家の新作が読みたい。
その思いはとても良く分かります。
漫画の様に個性が分かりやすい物では無いのでしょうが、文字で構成された小説も、文体、リズム、作者自身の考えや思いが作品に強く表れていると思います。
表面上の書き方をなぞるだけでは、それは再現出来ないと感じます。
私は波長の合った作家さんの作品を読むと、その場面がとても自然に頭の中で映像として再生されます。
それは私に限って言えば、どんなに素晴らしい映像作品よりも臨場感を感じる事が出来る物です。
よく映画化された物より原作の方が良かったというのは、映画の時間的制約によるものあるのでしょうが、小説で感じる臨場感や想像が原因である様な気がします。
そんな臨場感を与えてくれる作家さんが亡くなれば、当然、新作が読めない悲しさを感じるでしょう。
ただ、作中の二人が作った作品は「龍平ナヲキ」では無く「龍平すず」という新しい作家として人々に受け入れられたのだと感じました。
ナヲキだけでは生まれなかった作品。
世代も性別も嗜好も違う二人ですが、波長はピッタリとあっていたんだろうと思います。
まとめ
この作品はこの巻で完結です。
作中、すずの言う「エモい」という感情は多分、人間が言葉を持った頃から存在し、今後も変わらず続いていく様に思います。
とてもエモくてヤバい作品でした。
この作品は、ビッグコミックBROS.NETで第一話が無料でお読みいただけます。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。