小説 小説短編

ホーンテッド・キャンパス 墓守は笑わない

投稿日:2018年11月27日 更新日:

キャンピングカーホーンテッド・キャンパス 墓守は笑わない
著:櫛木理宇
画:ヤマウチシズ
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

梅雨も明け月も変わり七月に入った。
こよみの問題が解決しても、森司は彼女と共に食事をし、家まで送るということを続けていた。
彼は十年に一度の幸運期に入ったのではなどと考えていた。

しかし同じアパートに住む、院生の堺の言葉で暗雲がさす。
堺は森司が、すごい美人と食事をしていたと語った。

それはこよみでも藍でもないという。
覚えがない森司は見間違いだと堺に言うが、堺は確かに見たと譲らない。

森司は合コンをセッティングしろと言う堺の後ろに、小柄な人影をみる。
そこには少し青ざめたように見えるこよみが立っていた。

大学を舞台にしたオカルトミステリー第十三弾。

各話のあらすじや感想など 

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こどものあそび

冒頭部分 あらすじ
伊藤若菜は謝罪の言葉と共に頭を下げた。
相手は青葉保育園すみれ組で預かっている晴都の母親だ。
母親の中でも穏健派に入る彼女が、これほど怒りをあらわにするには理由がある。

晴都の首には赤い痣が見える。小さな指の跡。
明らかに首を絞められた跡だ。

晴都の母は、原因は同じくすみれ組の問題児、ルナの仕業だと決めているようだ。
ルナは確かに問題児だったが、今回は様子が違った。

今までルナが何かした時は、周りの子がすぐに騒ぎ出した。
しかし、この件は誰も何も見ていないのだ。

晴都の母親が晴都をつれて、保育園を後にする頃には時刻は午後八時を指していた。
職員室で、主任の田鍋と話す。
首絞めが起きたのは晴都で三件目、そのどれも目撃者は無い。

若菜はルナが犯人とは思えなかった。
彼女には注意を払っていると田鍋も同意した。

若菜はカメラでの撮影を提案したが、院長には却下されてしまった。
田鍋と話し、その日は帰ることにした。

ルナの容疑は翌日解けた。
お昼寝からルナが起きてこないのだ。
この暑さの中、頭までタオルケットをかぶり横になっている。

若菜は嫌な予感を感じながら、タオルケットをめくった。
彼女は口から舌を出し、失神していた。

首には小さな手の形に赤い痣が浮かんでいた。

感想
作中で主任の田鍋が子供について語る場面があります。
別の非言語コミュニケーション能力を持った、全く別の種族。

子供の頃の記憶は残っていても、何故そんなことをしたのか思い出せない事があります。
成長と共に、思考や価値観も変化し、幼い頃と行動原理が変わってしまうからでしょうか。

湖畔のラミア

冒頭部分 あらすじ
男は白央大UMAオカルト同好会の播磨と名乗った。
黒沼部長の異父弟である、菱山久祐の紹介で彼はオカ研を訪れたようだ。

森司は久祐にはあまり関わりたくないと思っているが、部長は笑顔を保ったまま播磨と接した。

話を聞くと、彼は白央大のOGらしい。
社会人になっても、趣味がやめられず会長として同好会の活動を続けているようだ。

部長が探検旅行の途中で女の霊に憑かれたとかと、播磨に話をふる。
長野の湖の探索に赴いた時にその霊、ラミアに遭遇したと語った。
ラミアという単語に部長が食いつき、神話の話が盛り上がりかけたが、播磨自身が話を戻した。

その湖は長野県の温泉街にあった。
もっと有名なUMAにしたら人があつまったのにと、メンバーの夏実がぼやく。
しかし、ネッシーやUFOをテーマにした集まりは散々催してきたので、新鮮味にかける。

同好会は総勢三十人ちかくいるので、今回の参加人数八名というのは決して多くは無かった。
参加者は播磨と沙穂の夫婦、夏実、賀川のOG四人と現役の白央大生四人だ。

過去の企画を話しながら、一行は夕刻の湖にたどり着いた。
湖には案内板が立っていた。湖にまつわる伝説が書かれている。
そこには高僧に恋をした女が、湖に身を投げ大蛇に変じたと書かれていた。

白央大生の一人、瀬田が蛇より綺麗な姫の方がいいのにと軽口を言っている。
それに答えて、播磨がうんちくを語る。
夏実が播磨のうんちくを遮り、湖を一周してから近くにある洞窟が見たいと言った。

一行はそれを受けて、湖近くにある洞窟を目指して、地図を頼りに林の中を進んだ。

しかし元の場所に戻ってしまったようだ。
播磨は暗くなる湖面をみて、今日はここまでにするかと言った。
沙穂に付近の撮影を指示する。
彼女がカメラを構え、周囲を撮影していると瀬田が誰かいると言った。

その後、瀬田と賀川が湖に入っている、自殺だと騒いだが、播磨と沙穂にはその姿は見えなかった。

賀川は沙穂にそれを取るように言った。
沙穂は誰もいないと言って、怯えたが賀川の剣幕に押されシャッターを切った。

その瞬間、播磨も姿を視た。
女だ。膝下まで水につかった女が、こちらに背を向け立っている。

播磨はあれは生きていないと思った。
なぜならこんなに離れていて、しかも背を向けているのに、女の表情が笑っていることが分かったからだ。

感想
ギリシャ神話には神の怒りや嫉妬を買い、姿を変えられる話が多いように思います。

容姿の美しさは出自に関係なく、突発的に表れることがあるからでしょうか。
権力を持った者が、平民や奴隷の中に美しい者がいた時に、嫉妬を抱いたことが物語が綴られた由来になっている気がします。

墓守は笑わない

冒頭部分 あらすじ
「宝探しに行こう」
部長の黒沼の提案で、オカルト研究会の夏は宝さがしに決まった。
森司は言われたように、人数分の食料とお泊りセットを持って雪大の正門へ向かった。
正門にはキャンピングカーが停車していた。

部長がレンタルしてきたらしい。すでにメンバーは集合していた。
部長の声で泉水が一番に乗り込む。
続いて藍が乗り込み、森司も後を追って中に入った。

全員、キャンピングカーにテンションが上がっているようだ。

こよみが缶詰と冷凍バケットを持ってきたと告げた。
彼女の父は登山が趣味で、お勧めの缶詰を聞いてきたようだ。

藍はレトルトのご飯とカレー、そしてビール。
泉水は米とビールひと箱。

森司は少し言いにくそうにカップ焼きそばを人数分と答えた。
鈴木はバイト先のパン工場から総菜パンを持ってきたと言った。

部長が食料がいっぱいで冬眠前みたいと楽しそうに笑う。
彼はお菓子とラーメン、今晩のバーベキュー用の食材を持ってきたと答えた。

泉水の運転で車は発進した。
藍はさっそくソファーでくつろいでいる。

森司は気になっていた、行き先を部長に尋ねた。
彼はいくら聞いても内緒としか、答えてくれなかったのだ。
目的地は瀬田君の田舎と部長は答えた。

今回の依頼人はUMAオカルト同好会の瀬田らしい。
話を聞くと、彼の父方の本家付近に埋蔵金伝説があるという。

しかし部長の本命は瀬田家の先祖の墓らしい。
お墓がどうかしたのと問う藍に部長は、

「ツタンカーメンの墳墓のように、一歩足を踏み入れただけで、祟り殺されるらしいんだ」

と笑顔で答えた。
引き返そうと叫ぶ森司を無視して、部長は楽しそうにツタンカーメンの墓に関するうんちくを語った。

ごねる森司を部長が落ち着かせるよう言う。
瀬田も墓の場所は知らないし、見つけても入るとは決めていない事、さらにつまらなければ、温泉旅行に切り替えるつもりであることを告げた。

猜疑心たっぷりな森司を乗せ、キャンピングカーは瀬田との待ち合わせ場所に向かった。

感想
王家の呪いには、冒険小説が好きな私はとてもロマンを感じます。
実際は違ったようですが、古い墓に施された神秘的な力という物に魅力を感じずにはいられません。

まとめ

今作は森司君とこよみちゃんの間の感情のほか、全てのお話のテーマが嫉妬に纏わるものになっています。
嫉妬や妬みは、愛や憧れから生じる感情でしょう。

あの人の愛が欲しい、ああなりたい。
人はそれが叶わない時、感情が逆転し、嫉妬や妬みに取りつかれるのだと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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