小説 小説短編

ホーンテッド・キャンパス 水無月のひとしずく

投稿日:2018年11月26日 更新日:

雨ホーンテッド・キャンパス 水無月のひとしずく
著:櫛木理宇
画:ヤマウチシズ
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

森司はどうしてもミラノサンドが食べたくなり、バイト前の鈴木を昼食に誘って繁華街のドトールに来ていた。
お目当てのミラノサンドを頬張っている森司に鈴木が言う。

「最近、灘さんが元気あれへんと思いません」

鈴木が言うように、森司もこよみの表情が暗いことに気付いていた。
鈴木は森司がなにかやったのではないかと、疑いの目をむける。

森司は自分の行動を思い直した。
この前、勢いで告白しかけたことを思い出した。
あれが原因なのか。

鈴木にはこよみにそれとなく聞いてみると告げ、その後バイトに向かう彼と別れ大学に戻った。
構内で藍とこよみと出会う。
森司が駆け寄ると、ふたりはちょうど森司の事を話していたらしい。

俺の事?と言った森司に、こよみが先輩にお願いがあると切り出した。

「恋人になって欲しいんです」

森司は一瞬目の前が暗くなり、気付くと青空の下、一面の花畑がみえた。
花畑の向こうで亡くなったはずの祖母が手を振っている。
遠くから藍の声がきこえた。

大学を舞台にしたオカルトミステリー第十二弾。

各話のあらすじや感想など 

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辛辣な花束

冒頭部分 あらすじ
霧のような雨が降る中、未亜は烏丸と一緒に彼の部屋に向かっていた。
去年の春に知り合って、お互いなんとなく好意を持っていることは感じていたが、特に進展はなかった。

業を煮やして、未亜のほうからバレンタインに攻勢をかけ、晴れて付き合う運びとなったのだ。

今日は彼の部屋で映画を見る予定だ。
道の途中、電柱の根元に白い百合の花束やぬいぐるみや缶ジュース等が置いてあるのを目にした。

雨よけに透明なビニールがかぶせてある。
烏丸が事故があったんだねと言い、じろじろ見るものではないとその場を後にした。

コンビニに寄り、買い物を済ませ店を出ると雨は本降りになっていた。
烏丸が近道があると、私有地だという場所を通る。

ブロック塀の端にビニールがかぶせられた花束とぬいぐるみ、缶ジュースが見えた。
未亜は先ほど見た物と同じだと感じたが、烏丸の呼ぶ声で彼を追った。

彼の部屋に着き、吟味を重ねた勝負部屋着に着替える。
烏丸も気に入ってくれたようで、DVDをかけながら、ビールとお茶で乾杯した。
同時にドアをノックする音が聞こえる。

宅配を頼んだ覚えはないけどな、烏丸が玄関を開ける。

烏丸はうめき声をあげた。
何でもないという彼を制して、未亜は玄関から外をみた。

そこには雨に濡れた、百合の花束が置かれていた。

感想
櫛木さんが書く、田舎町のコミュニティーの話を読むと、田舎に住むことが怖くなります。

もちろんフィクションということは、分かっているのですが、実際に起きた事件などを知ると、全てがフィクションとは言い切れないのかなと感じてしまいます。

指は忘れない

冒頭部分 あらすじ
夕暮れの教室に女子生徒が六人あつまっている。
聖奈の指示でドアに鍵がかけられ、カーテンが引かれる。
薄暗い教室で机に座った聖奈を五人が取り囲むように立つ。

「歌って」

彼女の言葉で、他の女子生徒が讃美歌を歌う。
聖奈は白紙のノートを開き、左手にサインペンを持った。
聖奈は歌に合わせて、ノートに円を書く。

彼女に霊感などは無い。
ただ霊感少女を演じていれば、あの子は相手をしてくれる。
人の輪に入っていけるし、注目も浴びれる。

誰かが右肩に手を置いている。
聖奈は何を書こうかと考え、今日は見ているぞとでも書くかとペンを走らせた。

「みて」まで書いて、「い」を書こうとした時、ペンがグイっと動いた。
制御が効かず、ペンが勝手に文字を綴る。
聖奈自身、信じられない気持ちだった。

右肩に指が、爪が食い込む、聖奈は歯を食いしばる。
歌声はいつしか止まっていた。

ペンが大きく動いた。

感想
自動書記やこっくりさん等、学生時代、特に十代前半は超能力や霊能力といった特殊な力に魅かれたように思います。

若者特有の心理で、自分は特別であると思いたいのに、至って普通(いや、どちらかというと駄目な方)であることが、余計にそうさせたのでしょうか。

今となれば、様々な創作物を読んだ結果か、そんな力は無くて良かったと思うようになりました。
お話のジャンルとしては、今でも大好きなカテゴリーですが。

罪のひとしずく

冒頭部分 あらすじ
雨のある日、オカルト研究会に見知らぬ少年が訪れた。
彼は扶桑中学二年の野平透哉と名乗り、古賀の紹介で来たと話した。
森司は古賀と言う名に心当たりはなかったが、部長の黒沼は知っていたらしい。

透哉に詳しい話を聞くと、クラスメイトが幽霊スポットである倉庫で、行方不明になったようだ。
藍も森司もそのことはニュースで知っていた。

扶桑中学の二階堂健斗という少年が三日前から行方不明になっている。
警察が畑や付近の藪などを捜索する映像がニュースで流れていた。

透哉は健斗が畑になどいるはずがないという。
彼は健斗が倉庫に閉じ込められた時、その場所にいたと語った。
健斗は所謂いじられキャラだったようだ。

二年になりそれがエスカレートし、倉庫に健斗を閉じ込め一晩放置したようだ。

倉庫には南京錠をかけ、密室状態で出口はどこにも無かった。
しかし翌朝、鍵を外し倉庫に入ると、健斗の姿はどこにも無かったそうだ。

部長が事件の起きた倉庫について語る。
それによると、十年程前に一件、それから二年後に一件、どちらもいじめられていた中学生が自殺しているらしい。
藍がやりきれないとつぶやいた。

部長が二階堂君探しに協力して欲しいってことかなと尋ねると、透哉は頷いた。
透哉と話していると部室のドアが、すみませんの声と共に開けられる。

声を聞いて、透哉は部室の窓から逃げ出した。
声の主は本来の依頼主の古賀だった。

彼の話を聞くと透哉は義理の弟で、健斗が失踪した夜、彼の部屋に飛び込んできて、「あいつが来た、でも煙みたいにきえた」といったらしい。

その時に透哉は左腕から出血していたようなのだ。
しかし血を洗い流すと、傷跡は見当たらなかった。

感想
「いじめ」や「いじり」という言葉を使う事で、問題が軽いイメージをもってしまう。
作中でも語られていますが、集団で一人を肉体的、精神的に虐待することは犯罪であり、「いじめ」などと、軽く言うべきではないと感じました。

まとめ

作中で鈴木やこよみちゃんも呆れていますが、森司君は彼自身の持つ魅力に全く気付いていません。

そこが彼の魅力にもつながっているのでしょうが。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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