ロマールの罠
安田均 編
水野良 他
イラスト 米田仁士
富士見ファンタジア文庫
テーブルトークRPG「ソード・ワールドRPG」の世界フォーセリアを舞台にした短編集、第五作目。
今回は街道の交わる街「旅人たちの国」ロマールをテーマにして書かれています。
この短編集では3作品が収録されています。
各話のあらすじや感想など
ロマールの罠 羽根頭冒険譚3 水野良
その闘技場にライスたちは観客ではなく闘技者として立っていた。
話は五日前に遡る、ライスたちは雄羊の角亭という酒場兼宿屋で少し贅沢な食事を取っていた。
前回の事件で予想外の収入を得たため、全員の装備を新調しても余裕があったのだ。
金があると行動が大胆になるのか、リーライナが吟遊詩人をよび恋の歌をリクエストしている。
ひとしきり飲んでいざ会計となったところで、チャペルが管理していた金がなくなっていることに気が付いた。
先ほど呼んだ吟遊詩人に掏られたらしい。
店主はリーライナに客をとらせて払わせるかと提案してくる。
ライスは交渉の末、闘技場に闘技者として出ることを了承するのだった。
闘技場に立つライスたちの前の向かいの門が開き、十匹のゴブリンが姿を現す。
事前に聞いていた数は五匹だったが、倍の数である。
ライスたちの戸惑いを他所に戦いの銅鑼が鳴らされた。
感想
羽根頭冒険譚、第三作目のお話です。
今回ライスたちは嵌められる形で闘技場で戦わされます。
本来、無用な殺生はしたくない彼らは、ゴブリンとの戦闘でも全滅させることはしません。
この作品では、冒険者同士の絆も見れて心地よい読了感でした。
サラマンダーの憂鬱 高井信
あらすじ
ドワーフの村、ピムラで暇を持て余していたデュダとリュークは、同じ村に住むバルンからロマールに行かないか誘われる。
バルンの双子の兄、ゲランが村一番と評判の娘ライラと先日結婚し、新婚旅行もかねてロマールの闘技場に行くのだが新婚夫婦の惚気には付き合いきれないということで、二人も一緒に来て欲しいというのだ。
デュダとリュークは闘技場見物が出来ると聞いて、二つ返事で了承する。
旅は順調に進むが途中、ライラが高熱をだして倒れてしまう。
彼女は破傷風にかかっていたのだ。デュダたちのパーティには彼女の病を治せるものはいない。
デュダの提案でロマールの闇市でユニコーンの角を手に入れようという話になり、デュダとリュークとバルンの三人はゲランにライラの看病を任せロマールへ急ぐのだった。
感想
迷探偵デュダと助手リュークの物語、第2弾。
物語の中でも書かれていますが、ユニコーンの角がなくてもライラの病が癒せれば問題は解決します。
ですが彼らはユニコーンの角を手に入れなければならないという視野狭窄に陥りそのことに気づきません。
私も読んでいる最中はデュダに引っ張られて、他の方法に思い至りませんでした。
立ち枯れの森 下村家恵子
あらすじ
旅人たち国ロマール、エルフの青年シラムルは昔の馴染みラダに呼ばれ、久しぶりにエルフの村を出てロマールに来ていた。
酒場でハーフエルフの女性に絡まれたりしたが、ラダの妻ジーンに連れられ無事ラダの店にたどり着く。
ラダの店で出会ったのは心をなくしたグラスランナーの女性だった。
彼女は駆け出しの冒険者で、ラダの紹介した古代魔法王国の貴族の館の探索に、仲間と共に向かったのだが、数日後、彼女だけが保護されたのだ。
シラムルは精霊魔法を使い、彼女の心を呼び戻そうとするが、彼女の中には心の切れ端が存在するだけで、詳しいことは解らなかった。
シラムルはラダの依頼をうけ、彼の妻ジーンと共に森の中にある貴族の館へ向かうのだった。
感想
小説「死せる神の島」に登場するキャラクター、シラムルのお話です。
彼は生粋のエルフなのですが、他のエルフのように高慢ではなく気さくな性格で、よく女性に声をかけたりしています。
そのことで、物語冒頭のリーライナに絡まれる等、トラブル種になっているのですが。
作品の時間軸でいうと、上記の小説よりも前の出来事になり、事件の発端となる、重要な人物との出会いも描かれています。
まとめ
ロマールという一つの街をテーマにしたことで、各作品に登場するキャラクターが、ほんの少しではありますが、接点を持ったりしています。
これも一つの世界を舞台にしたことによる、面白い効果だと思います。
ソード・ワールド短編集 ロマールの罠 (富士見ファンタジア文庫)[Kindle版]