小説短編

ホーンテッド・キャンパス 恋する終末論者 各話あらすじ・感想

投稿日:2018年11月12日 更新日:

吸血鬼ホーンテッド・キャンパス 恋する終末論者
著:櫛木理宇
画:ヤマウチシズ
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

学園祭間近の雪越大学。霊感を持つ大学生八神森司は、高校時代の同級生、板垣果那と再会する。

ストーカー対策として、彼氏の振りを頼まれた森司は、果那を見かねて引き受ける。
しかしそのことがオカルト研究会のメンバーに伝わり、二股野郎のレッテルを貼られることに…。

大学を舞台にしたオカルトミステリー第五弾。

各話のあらすじや感想など 

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告げ口心臓

あらすじ
小山内に誘われ、彼の所属するインカレサークルの飲み会に参加した森司は、高校時代の同級生、板垣果那と再会する。
彼女は現在ストーカーに悩まされているという。

彼女の頼みで彼氏役を引き受けた森司が、翌日オカルト研究会の部室に入ると、藍の態度が冷たい。

どうやら小山内経由で果那の事を知ったらしく、今までこよみ一筋と思って森司の事を応援していた彼女は、森司の事を二股をかける最低野郎だと勘違いしているようだ。

黒沼部長に助けを求めようと、口を開きかけた森司より早く、彼からは相談者の来訪を告げられた。
相談者は騒動の発端である板垣果那の知り合いだった。

北聖学館二年の川鍋敦彦と名乗った男は、吸血衝動に悩まされると語った。
きっかけは同じ学部の友人の女性と映画を見に行ったことだった。

映画館のシートに悪戯で針が仕込まれていた。
その針で友人が首に傷を負ったのだ。
幸い怪我は小さく大したことはなかったのだが、彼女の首に血の玉が浮いているのをみて、敦彦は性的興奮を覚えたようだ。

そのことにショックを受けている敦彦に、黒沼部長は吸血行為と性的衝動は密接に関係しているからそんなにうろたえることはないと語る。
彼もそれだけなら良かったんですがと言い、続きを話し始めた。

それ以来、敦彦は夢を見るようになったと話した。
夢の内容は知らない男が女性と思われるうなじに歯を突き立てるものだった。

その夢を見るたびに、怖いのと同時に興奮を覚えるらしい。
その後、映画を一緒に見に行った女性が襲われるという事件が起こった。
暴漢は捕まっていないらしい。

そして彼女が襲われた晩にも敦彦は夢を見た、夢の中で彼女にナイフを振り上げ…。
夢から覚めた敦彦が大学に行くと、彼女が襲われたというニュースが飛び交っていた。

悩む敦彦に森司は偶然ではないのかと声をかけた。
森司には敦彦に霊の存在は感じられなかったからだ。

黒沼部長は彼にカウンセリングを進め、その日は帰ってもらった。

感想
シンクロニシティが事件の肝になっています。
果那の登場で今後も色々起こりそうです。

啼く女

あらすじ
瑞月は大学のテニスサークルのメンバーと、ログハウス風のコテージに泊まっていた。
コテージの外はさらに風が強くなったようだ。

彼らは全員、雪越大学の四年生。
男三人、女三人でそれぞれが恋人同士、つまり三組のカップル、
瑞月と津久井、陶子と青山、志穂と真崎がそれぞれペアだ。

卒業旅行を計画したが、メンバーに飛行機嫌いの者がいて、海外旅行は取りやめ、このコテージに七泊八日で泊るプランを採用したのだ。

突然の嵐に見舞われ、外に出られなくなった彼らは明日はどうするかを話し合った。
話し合いの最中、風が高く鳴った。

「バンシーが啼いている」

メンバーの一人、帰国子女の陶子がつぶやいた。

彼女のベビーシッターはアイルランド出身で、様々な民話やおとぎ話を彼女に聞かせてくれたのだ。

『バンシーが啼くと近々誰かが死ぬ』

彼女はベビーシッターから聞いた話をみんなに語った。

津久井が本当に人が泣いているように聞こえると言い出し、志穂がやめてよと声を荒げた。
昔のいざこざで場が荒れようとする雰囲気を変えるため、青山が昼に取った写真を見ようと言い出した。

青山がデジタルカメラで撮った写真をカメラのディスプレイに表示する。
陶子もムードを変えるため、明るい声で見せてと青山に寄り添った。

二日目の花火の写真が映し出されている。
彼らは写真を見て凍り付いた。

そこには本来映っていない筈のものが記録されていた。

感想
卒業旅行で撮られた心霊写真から始まったお話でした。

本人に悪気はなくても、周りをかき回してしまう人は存在するものです。
そんな人物とはなるべく距離を置きたいものです。

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まよい道 まどい道

あらすじ
学園祭当日、森司はオカルト研究会のメンバーと、小山内を加えた六人で学園祭を回っていた。
出遅れた森司はこよみの隣を小山内に奪われてしまった。

炭酸のきついラムネを飲みながら、様々な出し物を見て回る。
現在アカペラライブが行われている会場では午後からミス&ミスターコンテストが行われるようだ。

ほかにもプロレス同好会が主催する試合が行われている。
ハンセンに扮した学生が三沢に関節技をかけられている。

北門がわにまわると、非常勤講師の矢田に声を掛けられた。
一緒に袴田教授の姿も見える。
プロレス同好会の話から関節技の話になり、泉水が森司の親指に技をかける。

痛がる森司を黒沼部長とこよみがほほえましく見ていた。
その横で一緒に見ている小山内を、恨めしくみていると、彼に声がかかった。

実行委員会の赤Tシャツをきた男たちが、小山内にミスターコンテストが始まるから早くきてと急かしている。
小山内は時間があればとしか言っていないとごねたが、彼らは強引に小山内を連れ去った。

矢田と袴田と別れさらに会場を回っていると、少し前、藍とこよみにミスコン出場を頼みに来た実行委員の平賀が、青い顔をして走っているのが見えた。

気にはなったが部長たちに呼ばれ森司はそちらに向かった。
その後、泉水が桑山たちが運営しているラーメン店の手伝いに駆り出されたのを皮切りに、部長は映研、藍は法律相談のブースに去っていった。

残された森司とこよみは二人で、こよみが希望した西門ちかくの古本市を見に行くことにした。
古本市で買い物を済ませた二人は学園祭に遊びに来ていた果那と出会う。

合わない靴で足を痛めた果那に、飲み物を頼まれた森司はしょうがないなぁと自販機に向かった。
もどって果那とこよみにお茶を渡し、自分も緑茶に口を付けようとした時、再度平賀の姿を見た。

やはり様子のおかしい平賀を放っておけず、森司は彼の後を追った。

感想
ピエロ恐怖症、クラウン恐怖症というのは結構多いようで、俳優のジョニー・デップもその一人のようです。
本来は陽気なはずのピエロが恐怖の対象になることで、より怖さが増す気がします。

姥捨山奇譚

あらすじ
学園祭も終わり、最近では日が落ちると急激に冷え込むようになってきた。
森司は雨の中を早足でアパートに向かっていた。
大学まで近いため傘を持たずに出たことが間違いだった。

アパートに着き、風呂に入って乏しい食料で料理したそうめんを食べていると、果那からメールが入った。
電話していいかの確認だったので、OKと返信を返すと数分しないうちに電話が鳴った。

話を聞くと昔借りたCDが出てきたので返しに行くとのこと、森司は小山内にあずけてくれればいいと言ったのだが、果那は近々そっちに行く用もあると答え電話は切れた。

森司はいやな予感を覚えながら電話を見つめた。

汐里はゼミで訪れた田んぼで稲刈りに従事していた。
所属するゼミでは毎年農村を訪れ、農家を手伝ったり、地元のお年寄りに話を聞いたりするのだが、今年は台風の影響で稲が倒れ、機械ではなく手作業で刈り取ることになった。

人手が足らず困っていた農家は若い労働力を歓迎した。
汐里たちは講師の藁谷の他、男四名女三名で男が稲を刈り、女が刈った稲をまとめて干すという作業を行っていた。

途中男女が交代し、短時間だが、汐里も稲を刈った。
なれない作業で体が痛い。

借りた民家で休んでいると男子学生の一人、松嶋が作業の途中でみた老婆の話を始めた。
老婆の姿で「おりんばあさん」を思い出したという話から、楢山節考の話になり、姥捨山の話につながった。

話していると食事の世話をしてくれている、隣家の奥さんが訪ねて来た。

彼女は話が聞こえたらしく、この村で姥捨山の話はしないほうが良いと語った。
彼女が言うには、数年前に大姑が半分ぼけたようになり、それ以来「山に捨てないでくれ」というらしい。

気になった彼女は、夫に尋ねたが彼は何のことかわからないと言った。
舅なら知っているかもと、尋ねると烈火のごとく怒りだしたという。

その手の話に過敏な年寄りがいるので、話さないほうが良いと彼女は言った。
大学自体が出入り禁止にされても困るので、一行は彼女の言う事に従うことにした。

その日オカルト研究会には女性が三人訪れていた。
北聖大学農業経済学を専攻している、佐々木汐里。
同じく丸川美桜、そして付き添いとしてやってきた板垣果那の段人だった。

話を聞くと、ゼミで訪れた農村でなにか背負ってきたらしい。
黒沼部長が話を振ると、汐里はためらいがちに話し始めた。

感想
あれ、おかしいな?森司君が格好いい。
今回のお話の終盤、彼はある活躍をします。
活躍後へたり込んでしまった森司君ですが、とても格好良かったです。

まとめ

今回登場した板垣果那とこよみちゃんは、メル友になったようです。
今後のストーリーに、果那の存在がどう影響してくるのか楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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