小説 小説短編

後宮の烏 3

投稿日:2019年9月27日 更新日:

雨後宮の烏 3
著:白川紺子
画:香魚子
出版社: 集英社 集英社オレンジ文庫

後宮の最奥、夜明宮(やめいきゅう)と呼ばれる殿舎に住む烏妃(うひ)寿雪(じゅせつ)の物語。
烏漣娘娘、それを奉ずる烏妃。
謎の多いその存在が少しづつ解き明かされていきます。

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登場人物

柳寿雪(りゅう じゅせつ)
今代の烏妃
烏妃とは女神、烏漣娘娘(うれんにゃんにゃん)に仕えていた巫婆の末裔ともいわれる伽をしない妃。
招魂、念力等の不思議な力を使える巫婆の様な存在。

ただ、その力は万能ではなく、彼女を頼る者に落胆と失意を与える場合も多い。
彼女の場合、わざとそうしている節もあるが…。
また、貧しい生い立ちの為、結構食いしん坊。

夏高峻(か こうしゅん)
現皇帝
幼少時代は宮廷の権力闘争に巻き込まれ、母と友を亡くした。
その時の影響で、余り気持ちを表に現さない。
事件を通じて王朝の成り立ちを知り、寿雪の友となる。

衛青(えいせい)
高峻の側近、衛内常侍
宦官で能吏、お茶をいれるのが上手い。

星星(シンシン)
金の羽根を持つ鶏
次代の烏妃の選ぶ役割を持つ。
初めて星星を見た寿雪は丸々太った星星を美味そうと思ってしまい、それ以来警戒されている。

九九(ジウジウ)
可憐な顔立ちの宮女
事件を通じて夜明宮付きの侍女になる。

衣斯哈(イシハ)
幼い宦官の少年
西方の出身の為、言葉や読み書きに難がある、それが原因で教師役の宦官に虐められていた。
ある事件で夜明宮付きとなる。
素直で賢く現在は夜明宮で働きながら勉強中。

麗娘(れいじょう)
先代烏妃、故人
寿雪に宮中の作法や言葉遣い、烏妃の役目や術を教えた。
寿雪の喋り方が堅苦しく古いのは彼女の所為である。

蘇紅翹(そ こうぎょう)
先代皇帝の妃嬪の一人、班鶯女付きの元宮女
三十代で穏やかな性格の女性
声を奪われ病の床についていた所を事件を探っていた寿雪に救われ、以後夜明宮で働く事になる。

温螢(おんけい)
衛青の部下の宦官
衛青の命で寿雪の護衛を務める。
頬に傷跡のある美形、旅芸人出身。

花娘(かじょう)
鴛鴦宮(えんおうきゅう)の妃
彼女の祖父は高峻の側近であり師でもある。
高峻にとっては姉の様な存在。

薛魚泳(せつ ぎょえい)
神祇を司る冬官の老人、故人
烏漣娘娘についてや過去の事を知っている。
麗嬢の知己で、一人寂しく烏妃として過ごしていた麗嬢と違い、周りに人の増える寿雪を憎んだ。

千里(せんり)
冬官
職を辞した魚泳の後を引き継ぎ冬官となった。
魚泳とは師弟の様な関係。

雨夜の誘い あらすじ

雨季、雨の上がったある夜。
皇帝の妃嬪の一人である鶴妃(かくひ)の侍女を名乗る泉女(せんじょ)という女性が寿雪の元を訪れる。

泉女は雨の晩にだけ幽鬼が現れる、それを何とかして欲しいと寿雪に訴える。
幽鬼は雨の時しか現れず、それは彼女が後宮に上がる前、その道中から始まったという。

彼女は賀州の豪族、沙那賣(さなめ)家の娘、晩霞(ばんか)が後宮に入るのに合わせ、仕えていた晩霞について都にきたらしい。

幽鬼は部屋には入ってこず雨が上がれば立ち去るという。
今も雨が上がって幽鬼が消えたのを見計らい夜明宮に来たようだ。

寿雪は泉女に幽鬼が出る場所を実際に見たいと言い、明日向かう事を約し身を守る呪符を渡した。

寿雪には泉女についてきているモノが見えていた。

亀の王 あらすじ

最近、寿雪に頼み事をする者が増えた。
九九が言うには鶴妃の侍女の願いを聞いた事や、花娘と仲良くしている事が原因だという。

九九は寿雪が得体の知れない者では無く優しい方だと分かり嬉しいというが、麗嬢から教わった烏妃のあり方とズレている事が寿雪には気になった。

九九と話していると新たに護衛として加わった宦官の淡海(たんかい)が内廷の噂を話す。

この淡海は温螢とは違い砕けた調子の自由奔放な男だった。
寿雪は気にしないが礼儀を重んじる後宮で、よく生きてこられたものだと寿雪は思う。

ただ衛青が護衛に寄越しただけあって弓の腕はいいらしい。
体術が得意な温螢と弓術が得意な淡海。
護衛としては理想的だが温螢は淡海が苦手で、彼が来たのは最近寿雪に傾倒している温螢への衛青の嫌がらせだと言う。

その淡海が言うには最近、内廷に老僕の幽鬼が出るという。
幽鬼はボロボロの衣を纏い背中を丸め、手になにか小さな器を持って深夜の内廷を彷徨い歩いているらしい。

袖を引く手 あらすじ

宮城で典籍を蒐集した史館の一つ、洪濤殿(こうとうでん)書院。
そこで学士を務める令孤之季(れいこ しき)から、烏妃について尋ねられた高峻は之季と寿雪を引き合わす。

之季には己の服の袖をつかむ手が見えるという。
彼の言う通り寿雪にも右袖を頼りなくつまむ女の手だけが見えた。

見える見えないは相性もあるようで寿雪にも全てが見える訳では無い。
ただこの手は悪意ではなく之季を案じて出てきているようだ。

之季にも心当たりがあるらしく恐らく義妹だと答える。
孤児だった之季は今の父母に引き取られた。

父母は優しい人で同じく孤児で、之季に懐いていた義妹と之季が離れ離れになるのを不憫に感じ、さして裕福でも無いに関わらず二人を兄妹として育ててくれたのだ。

その義妹が之季の身を案じ袖を引いている。
彼は義妹が死ぬ事になった原因である月真教、そしてそこから派生した八真教を調べていた。

義妹が安心してあちらに渡るには調査から手を引けと寿雪は之季に話すが、八真教を危険視する之季にはそのつもりは無いようだった。

黄昏宝珠 あらすじ

周囲に人が増え関わりが強くなる程に、烏妃として一人生きてきた寿雪は己の感情に戸惑いを覚える様になっていた。

特にお互い大切な者を失くし、復讐心という形で通じ合っている様に見える高峻と之季に対して感じる感情が何か分からず、彼女は自分の心を持て余していた。

それは一般的には嫉妬と呼ばれるものなのだが彼女にはそれが分からない。

落ち込んでいる様子の寿雪に九九は元気づけようと、誘いのあった鶴妃と合う事を勧める。
鶴妃、沙那賣の姫。
彼女は何を考えているか分からない所があり寿雪は少し苦手だった。

無垢な少女の様でもあり老獪な策士の様に感じる事もある。
確かめる意味も込めて寿雪は鶴妃のいる泊鶴宮(はっかくきゅう)へ向かう事にした。

感想

今回は八真教の教祖、白雷に関わる話がメインに語られました。
白雷は巫術師であり呪術により他者への呪詛を行えます。
彼と都の南、賀州、沙那賣家との関わりも気になります。

また、この巻では鶴妃、晩霞(ばんか)を始め新たな人物が多数登場しました。

寿雪の護衛、宦官の淡海。
南の賀州を統べる豪族、沙那賣の長、朝陽(ちょうよう)。
月真教から派生した八真教の教祖、白雷(はくらい)。
八真教の巫婆、隠娘。

さらに衛青と寿雪の関係にも変化が訪れます。

読んでいて印象に残ったのは淡海と寿雪のやり取りでした。
淡海にとっては寿雪の彼への接し方は衝撃的だったようです。

妃嬪と宦官の関係は主と僕というのが基本です。
身分の違いからそれは当然であるし本来そうあるべきです。
しかし寿雪は麗嬢の教えから、人との関わりが極端に少なく部下である淡海にも人として接します。

それが彼には意外だったようです。

寿雪は相手が誰であろうと、それが例え皇帝である高峻であっても態度を変える事がありません。
その事が身分を重んじる宮中において、彼女の周りに味方を増やしているように感じます。

まとめ

今回は他の神の存在もほんの少し明らかになりました。
高峻が烏漣娘娘、そして王朝の問題をどう解決していくのか、次巻が楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのMylene2401による画像です。
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