プロジェクトぴあの 下巻 ハヤカワ文庫JA
著:山本弘
カバーイラスト:つくぐ
出版社:早川書房
突然変異的天才、結城ぴあのが宇宙を目指すお話です。
下巻では世界規模の災害、通信・電力網に甚大な被害をもたらす「太陽フレア」がぴあのの前に立ちふさがります。
登場人物
ロイ・メリディアン
アメリカ人の大富豪
世界有数のIT企業「ライト・カスケード社」のCEO。
宇宙に強いあこがれを持ち、巨額を投じISS2(作中ではISS“国際宇宙ステーション”はその役目を終え、ISS2は二代目)滞在の権利を得る。
あらすじ
ソロ活動の影響で生み出される事になったメカぴあのとの対決。
大学教授、周防義明を巻き込んでの相対性理論に風穴を開ける発見の証明。
様々な出来事を経て完成した、タキオン粒子を使った新たな推進装置は、資金面や特許の関係で停滞を見せる。
どれだけ革新的な技術であっても、金と社会がそれを阻む。
苛立ちを感じながらも、ぴあのは立ちふさがるハードル(ぴあの的には箪笥)を一つ一つクリアーしていく。
そんな中、実験機である「むげん」の完成と時を同じくして、太陽に超スーパーフレアの兆候が観測される。
通常のフレアなら年に一度ぐらいの頻度で発生しており、地球への影響は特にない。
そして今回のフレアについても、大気による減衰によって放出される放射線も無害なレベルになるだろう。
だが問題は通信・電力網にダメージを与える電磁波による影響だ。
それも適切な対処をすれば被害は最小限で抑えられる。
しかし、高高度を飛行する旅客機等は放射線の影響を受ける為、飛行を制限する必要があった。
それは勿論ISS2にも適用される。
夢を叶えISS2に滞在していたロイ・メリディアンは、少しでも滞在時間を伸ばそうとISS2とドッキングしていたサラカプート宇宙船での帰還を拒否、数日後に打ち上げられる宇宙船で帰る事を選んだ。
無論、ISS2の船長は抵抗したがメリディアンは大金を支払いISS2に乗り込んだ。
それが来たそうそう帰還では割にあわない。
個人的な訴訟までちらつかせ、ISS2の乗組員14名の中で帰還船の乗員の関係上残る事になる2名の枠に入り込んだ。
何も問題が起きなければメリディアンは数日(元は10日間)のISS2滞在を楽しみ帰還する筈だった。
しかし、帰還カプセルを打ち上げたロケットがバグにより失敗。
各国も新たなロケットの準備に奔走するが、余りに時間の猶予が無い。
そんな状況下の中、川崎市の工場からぴあのを乗せたピアノ・ドライブ搭載機「むげん」がISS2に向けて飛び立った。
感想
宇宙に焦がれ、その実現の為に最短ルートを駆け抜けた結城ぴあのの物語。その下巻です。
下巻を読んでいて感じたのは、物語の始まり、すばるが言った「旧人類(うすのろ)ども」という言葉の持つ意味でした。
作中、新たな技術を作り出したぴあのに様々な言葉が浴びせられます。
それは革新的な発見を認められない人々による物でした。
現在では当たり前となっている地動説も、唱えた当初は全く受け入れられなかった様に記憶しています。
そんな感じで作中にぴあのが作り出した永久機関「みら・じぇね(水に入れると半永久的に電力を作り出す。ただし耐久性、生み出す電力が微量な為、全く実用性は無い)」等も物理法則に反している、詐欺ではないのかとバッシングを受けていました。
そういう学説に固執し妄信的に信じる人達の姿(勿論、検証は必要だけど正しいと証明された後も古い説を頑なに正しいと言い続ける人がいるのは何故だろう?)は旧人類(うすのろ)と呼んで差し支えない者の様に思えました。
終盤、ぴあのはそんな人々を振り切り、自分の夢の実現の為、遥かな高みに上ります。
強い切なさを感じましたが、これ以外は無いだろうと感じる素晴らしいエンディングでした。
まとめ
作品はSFですが書かれている内容は希望の様に思います。
物質は光の速度を超えられない、それを覆し広がる宇宙を飛び回る。
人は本能的に星の世界に焦がれている、そうでなければこんなに沢山の宇宙を舞台にした作品は生まれない気がします。
SFはちょっという人にも読んで欲しい、夢と希望とちょっぴりの切なさの詰まった作品でした。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。