小説 小説短編

道士リジィオ 青の化石

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化石道士リジィオ 青の化石
著:冴木忍
イラスト:鶴田謙二
富士見ファンタジア文庫

類稀なる美貌と強力な道士の力、そして莫大な借金を背負った男。リジィオの冒険譚。

 

各話のあらすじと感想

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星空の天幕(テント)

あらすじ
幼馴染の借金取りスティンに金を返すため、砂漠の宝探しに出かけたリジィオは、照り付ける太陽の下、ガイドの少年と干からびかけていた。

ガイドに雇った少年は、一度も砂漠に出た事が無く、雇ってもらうため嘘を吐いたのだ。
なぜそんな事をしたのかと問うと、少年は金が欲しかったと答えた。

彼は幼い兄弟と母のために、金を稼ぎたかったのだという。
リジィオはこの手の話にめっぽう弱かった。
同じく金に苦労している自分と、重ねてしまったのかもしれない。

リジィオは強行軍で熱を出したガイドの少年ルーミに、残り少ない水を使って薬を作り与えながら、砂漠に来た目的である宝さがしの話をした。

そもそも借金は、リジィオが作ったものでは無い。
彼の父が道楽者で、知らぬ間に山の様な借金を作り、返済を息子のリジィオに丸投げして世を去ったのだ。

放り出して逃げ出そうとしたが、どこに逃げてもスティンは追って来た。
逃げられないと諦めて、盗賊からせしめた宝の地図を頼りに、宝さがしに乗り出したのだ。

翌朝、砂漠の夜明けの美しさに感じ入りながら、リジィオは砂の海より青い水の海の方が好きだと口にした。
海を知らないルーミが首をかしげる。

彼に海について説明していると、ルーミが遠くを行くラクダの姿を発見した。
大声を上げて助けを求める。

声を聞いてやってきたのは三人の盗賊だった。

感想
借金に喘ぐ凄腕の道士リジィオの冒険譚、その第一作目です。
彼は父の残した借金返済のため、無理矢理修行させられた道士の力を嫌いつつも、様々な依頼をこなしていきます。

ただ、お人好しな性格が災いし、骨折り損になることが多いようです。

冬の迷図

あらすじ
熱いのはもう沢山と無計画に北に向かったリジィオは、案内人に逃げられ途方に暮れていた。
同行者の道士の卵、シザリオンと共に吹雪の中に置き去りにされた。

案内人のジャフィには、どういう訳か嫌われていた。
その彼に犬ぞりごと、荷物を持って行かれたのだ。

北方民族カーギール人の商人、クエンの依頼でリジィオは、冬の女王と呼ばれる魔物退治を引き受けた。
この依頼には他にも三名参加していた。

中年の伊達男、魔法使いのサイラス。
リジィオに色目を使う、魔女のベリンダ。
半人前の道士の卵、シザリオン。

依頼を受けたサイラスとベリンダは、競い合うように部屋を出て行き、残ったリジィオは威勢だけはいいシザリオンを放っておけず、一緒にクエンの提供してくれた犬ぞりを使い、冬の女王をさがして氷原に向かった。

感想
このお話では、リジィオの弟子となるシザリオンが登場します。
彼女(少年のように描かれていますが実は少女)は兄の仇の冬の女王を倒すため、依頼を受けます。

己の死を知らず、王国の復活を願う冬の女王が悲しく感じました。

青の化石

あらすじ
スティンとシザリオンが騙され、罪人として捕まり、割のいい仕事を受け損ねたリジィオは、泣きつかれる形で、地方領主のカスパールという青年の依頼を受ける事になった。

なんでも彼の幼い娘、ヴィルヴァーが悪霊に取りつかれたという。

突然ここから出せと叫び、取り押さえようとすると、花瓶やテーブルが飛んで来た。
今では館に入る事も出来ないらしい。

リジィオは騙された事で、リジィオの足を引っ張ったと気に病み、一緒に行くと言ってきかないシザリオンを連れ、館に足を踏み入れた。

入ったとたん、調度品が飛んでくる。
それを防ぐと、窓ガラスが割れ二人に降り注いだ。
リジィオは、術でガラスを細かな結晶に変えた。

自分は道士で、こんな攻撃では逃げ出さないと告げると、一人の少女が姿を見せた。
リジィオが、なぜその子に取りついたと尋ねると、それは帰りたいと口にした。

感想
表題作である青の化石は、この短編集の中でも一番好きな作品です。

帰りたいと言ったのは、屋敷に置かれていた巨大な魚の化石でした。
魚は、かつて暮らしていた海に戻りたいと、リジィオに願います。

リジィオの力に気付き、過去に戻して欲しいと頼む様子が、とても切なく感じました。

遺産狂想曲

あらすじ
吝嗇家で有名なエゴンの三人の娘の一人、ロマンツァの依頼でエゴンの遺産を探す事になったリジィオ。

他の二人の娘、レイチェルとジョアンナも、それぞれ魔法使いと戦士を雇い、彼の遺産を手に入れようと館を捜索している。

三人で分配すればいいと思うのだが、遺書の存在が三人の争う理由となった。
遺書には館の敷地に遺産を隠した。それを見つけた者に全財産を譲ると書かれていたのだ。

金の亡者の長女、ロマンツァ。
毒蜘蛛入りの花束を渡してくる次女、レイチェル。
戦斧を振り回す三女、ジョアンナ。

三人が骨肉の争いを繰り広げる館を、生きて出られるのか不安を感じるリジィオだった。

感想
富豪の遺産とくれば、残された遺族の醜悪な争いは定番でしょう。
三姉妹の争いに巻き込まれ、今回もリジィオは散々な目にあいます。

このシリーズは、切ない話も多いのですが、今回は姉妹のバイタリティーが高く、人間の強さを感じられるお話でした。

黄昏の神話

あらすじ
リジィオは待ち合わせの場所に、スティンとシザリオンが現れない事を心配し、二人の行方を探った。

その道中で出会ったルンタという少年に導かれ、山間の村にたどり着く。

ルンタの村では人が消える事件が多発しており、その解決に乗り出した魔法使いや道士の中に、スティンとシザリオンも入っていたのだという。

スティンはもし帰らなければ、宿屋にいるリジィオという男を探せとルンタに言い置いていたらしい。

面倒事に首を突っ込んで、尻ぬぐいは自分にさせるスティンに苛立ちを感じながら、シザリオンを捨て置く訳にもいかず、村人に聞き込みを開始した。

感想
人が消える理由はある組織の暗躍が原因でしたが、戻ってこない理由は悲しいものでした。

愛する人の足手まといになりたくない。
そう言った老人にリジィオは何も言う事が出来ませんでした。

人の悲しさと浅ましさ、そして逞しさを感じられるエピソードでした。

まとめ

借金に喘ぐ凄腕の道士リジィオの冒険譚、その第一作目です。
彼は父の残した借金返済のため、無理矢理修行させられた道士の力を嫌いつつも、様々な依頼をこなしていきます。

ただ、お人好しな性格が災いし、骨折り損になることが多いようです。

物語の全体的な印象として、もの悲しさや人の愚かさが描かれています。

容姿にこだわり人の生気を集めていた者。
自身の死を知らず王国の復活を夢見た女性。
かつて生きていた場所に帰りたいと望んだ化石。
遺産を求め争う姉妹。
家族のため偽りの楽園を選んだ老人。

読むと寂しさと同時に、生きて行こうとする人のしなやかさを感じます。

お読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのfalcoによる画像です。
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