ヴィーヴル洋裁店~キヌヨとハリエット~ 1 ビッグコミックス
著:和田隆志
出版社:小学館
ドラゴン、人魚、ユニコーン。
ヴィーヴルと呼ばれる幻獣の素材を使い、世界に一つだけの服を作り出すオートクチュールの店「クチュリエ―ル・シラガキ」。
祖母の後を継ぎ、閉店予定だった店を再開させた若きファッションデザイナーのお話です。
第一話 ドラゴン皮 あらすじ
王立魔法学園に通うババ・キヌヨは、有名デザイナーだった祖母の店を継ぎたいと思い、オートクチュールを専攻している。
だが世間は既製服が主流になり、オーダーメイドの一品物は受け入れられなくなっていた。
キヌヨが祖母に作ってもらい、何度も仕立て直してもらったメスジャケットも、時流から遅れた物として馬鹿にされていた。
祖母が死んで三か月、閉店が決まった店を覗きに行くと、そこには店で働いていた針子、ハリネズミのハリエットがいた。
彼女は店を守る為、居座っていたのだ。
閉店の事を伝えると、彼女は悲しみのあまり、背中の針を撒き散らした。
そんな時、店に客が訪ねて来る。
その男性は子供用のライダースジャケットを取り出し、サイズ違いの物を作って欲しいという。
そのジャケットはドラゴンの皮で作られていた。
男性の話では、幼い頃、怖がって乗れなかった魔法のホウキに、この服が切っ掛けで乗れるようになったという。
当時、祖母が関わった映画で、主人公がライダースを着てホウキに乗っていたいたのに憧れ、無理をいって仕立ててもらったらしい。
それを着た彼は恐怖を克服し、天才少年ホウキライダーとして一躍有名になったそうだ。
しかし、競技をやめホウキには乗らなくなっていた。
時は過ぎ息子に教える為に、久々にのろうとした所、恐怖が蘇り乗れなくなったのだという。
もう一度、今のサイズでジャケットを作り、それを着ればまた恐怖を克服できるのではと、彼は店を訪れたのだ。
もう営業はしていないというキヌヨを、ハリエットは今回だけと説得した。
仕事を受けたキヌヨ達だったが、ドラゴンの皮は貴重品で、現在では密猟ぐらいしか手に入れる方法がないという。
祖母はどうやって手に入れていたのか。
店を探るうち二人は、ドラゴンの生息地について書かれた書物を発見する。
その中に祖母の残した、生息地に関する情報を手に入れた二人はホウキに乗り、山奥の森に向かった。
そこには、密猟者の罠にかかった、巨大なドラゴンがいた。
ぐったりしたドラゴンの目の古傷に気付いたキヌヨは、ドラゴンを罠から解放し、罠により負った傷を治療した。
目の傷の縫い方から、キヌヨはこのドラゴンを昔、治療したのは祖母だと気付いたのだ。
恐らく祖母はドラゴンを守り、脱皮した皮を貰っていたのだろう。
祖母が守ったドラゴンを傷付ける事は出来ない。
そうは決めたが、どうやって皮を得ようか、二人が話していると、ドラゴンは突然脱皮し、キヌヨを一舐めすると、皮を残し飛び去った。
皮を手に入れたキヌヨは、鞣し等の工程を経て、ライダースを完成させた。
男性はその出来栄えに喜び、ハリエットが差し出したホウキを別人のように乗りこなした。
店に戻ったキヌヨは、机の上に見慣れない箱を見つける。
中には仕立て直されたメスジャケットと、祖母の手紙が入っていた。
メスジャケットと手紙に書かれた言葉が、キヌヨの心を決めた。
彼女はやって来た客にいらっしゃいませと告げ、ニッコリと笑った。
「長く愛される服をつくりなさい。」
手紙にはそう書かれていた。
感想
外見だけにお金を掛けても、内面が伴わねば何の意味もないでしょう。
ですが、服によって気持ちが上向きになり、行動に自信が出て来るという事も往々にしてあります。
このお話は、人々の悩みを衣服によって解決していく服飾デザイナーの物語です。
あらすじで書いた第一話のように、恐怖の克服であったり、自信の無さであったりを、キヌヨは様々な素材の衣服で後押ししていきます。
以前読んだIPPOでも思ったのですが、オーダーメイドの物は高すぎて手が出ませんが、一生に一度ぐらいは作ってみたいと感じます。
まとめ
絵のタッチが絵本的というか、ディズニーや手塚作品を思わせる部分があり、作品のテーマにとてもマッチしていると感じました。
また、服の制作工程も丁寧な解説が入っていて、作者の和田さんが素材の加工などを綿密に調べた上で、作品を作っている事が窺えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。