ヴィーヴル洋裁店~キヌヨとハリエット~ 2 ビッグコミックス
著:和田隆志
出版社:小学館
祖母の店「クチュリエ―ル・シラガキ」を再開させたキヌヨとハリエット。
その祖母のかつての弟子クリストフの企てにより、キヌヨ達はファッション界の重鎮、黒の女王エリーシャ・エンディディのドレスを制作する事になるのだが……。
あらすじ
黒の女王エリーシャ・エンディディ。
服飾批評の第一人者。王室のウエディングドレスメーカの選考委員も務め、彼女に睨まれれば業界で生きていけないとされる大きな影響力を持つ人物だ。
そんな彼女からパーティー用のドレス制作を依頼されたキヌヨは、ボティーラインの出る明るい色のドレスを提案する。
キヌヨの提案に呆れエリーシャは店を出ようとするが、眩暈の為倒れてしまった。
そのエリーシャの様子に彼女がバンパイアだと気付いたキヌヨは、咄嗟にカッターで掌を切り、流れ出た血を彼女に与えた。
キヌヨが彼女がバンパイアだと気付いた原因は、幼い頃の友人にあった。
友人である隣家の少女も日の光を避け、黒い服を常用していた。
だが少女自身は黒しか着れない事を不満に思っている様だった。
キヌヨは少女の言葉を聞いて、初めて人の為に服を作ったがその服に袖を通す前にバンパイアに対する住民達の嫌悪感から、彼女の家族は町を出て行った。
キヌヨの昔ばなしを聞いたエリーシャは、好きにやってみろとドレス作りをキヌヨに任せた。
エリーシャはその二つ名が示す通り、黒しか身につけない事で有名だった。
それは彼女がバンパイアである事が理由だった。
日の光に弱いバンパイアは遮光性強い黒い物でその身を守っている。
エリーシャが服飾批評を行っていながら黒い服しか着ないのは、種族的な問題だったのだ。
大丈夫なのか心配するハリエットに、キヌヨはパーティーは大体夜だからと気楽に返す。
しかし、彼女の出席するパーティーは昼間、しかも野外だった。
ドレスを作るとしても選択肢が黒しかないのでは、明るい色というキヌヨの提案は成し得ない。
どうするべきか悩むキヌヨに、祖母のメモが解を与えた。
遮光性の高いアラクネ(狂暴な蜘蛛型の幻獣)の糸。
それを用いればドレスを作る事が可能かも知れない。
キヌヨは早速アラクネを飼育している業者の下へ向かうが、糸は彼女が訪れる直前にクリストフによって買い占められていた。
諦めかけていたキヌヨだったが、業者の所から抜け出しついて来たアラクネの幼体の帰巣本能を使い狂暴な野生のアラクネの巣を突き止める事に成功する。
危険な場面はあったが何とかアラクネの糸を手に入れたキヌヨ達は、糸を処理して紡ぎ、染色してエリーシャのドレスを作り上げた。
仮縫いの日、店を訪れたエリーシャの前にキヌヨはトルソーに着せたドレスを並べた。
並べたドレスは色違いの五色。
キヌヨはアラクネの森で、ついて来た幼体が安全な業者の牧場では無く、危険な自然の中で生きる事を選んだのを見て自由に選択する事について考えたのだ。
エリーシャは今までどんな色が好きか考えた事も無いと言っていた。
それはそもそも黒以外の選択肢が無かったからだ。
キヌヨはこちらから提案するのでは無く、彼女に自分で選んで貰いたかった。
並べられたドレスの一つにエリーシャは手を伸ばす。
彼女は長い人生の中で、初めて自分の好きな色が何かを知った。
感想
今回はあらすじで書いたエリーシャの推薦により、王室ウエディングドレスメーカーの候補の一人となったキヌヨの査定が為されながら、様々な服を作る事になります。
今巻では冒頭のアラクネの他、カーバンクル、スクォンク、フェニックスと四体の幻獣の素材から服が作られました。
その過程でキヌヨは多くの人から愛された祖母の服と、自分の作る服の違いに気付きます。
ドレスやスーツにも時代時代の流行りがあります。
余り変化の感じられない男物のスーツであっても、時代によってデザインは変わっています。
古いドラマ等を見ればその違いを感じます。
現在はスマートなラインのスーツが主流だと思いますが、80~90年代頃はゆったりとした物が好まれていた事が分かります。
今回感想を書くにあたってスーツの事をほんの少し調べました。
流行は巡っていると感じましたが、そこにはデザイナーの新しいアイデアが盛り込まれ似たラインであってもより洗練されている様な気がします。
百年後、人々がどんな服を着ているのか。
不意にそんな事を思いました。
まとめ
今回は王室ドレスメーカーとして実質採用される事になる、王女パミヤのウエディングドレスメーカー。
それに相応しいかの査定が物語のサブテーマとして盛り込まれました。
次回はそのウエディングドレス制作編になりそうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。