豊作でござる!メジロ殿 2 SPコミックス
著:ちさかあや
シナリオ:原恵一郎
出版社:リイド社
藩の農政を司る郡奉行「目白逸之輔(めじろ いちのすけ)」の活躍を描いた本格農業時代劇、第二巻。
今巻ではメジロの妹、羽子(わこ)が登場し物語に花を添えます。
主要登場人物
目白羽子(めじろ わこ)
メジロの妹
明るくポジティブな性格の筋肉女子。
迷い悩む事のあるメジロを支え後押しする。
太平の江戸の世で剣の修行に励む、その為か武家の娘としては珍しく結婚の話はないようだ。
また、本人もその事を気にしている様子は見られない。
各話あらすじ
女将と特産品でござる
特産品について相談を受けていた勘吉の死。
メジロは彼の母に頼まれ、死の原因となった信楼屋の女主人を勘吉の家に呼び出す。
商売を第一とする信楼屋と人の暮らしを重んじるメジロ。
平行線の二人は流木で橋が流れた事で、陸の孤島である勘吉の住んでいた土地に閉じ込められる事となった。
恐るべき目付殿!でごさる
藩の目付、堺忠右衛門(さかい ちゅうえもん)
藩士の不正や犯罪を見張り、勤怠も評定する。
その権限は大きく、上役であっても告発する事が出来る。
その目付、堺に睨まれたとある藩士の言葉で、メジロは堺に呼び出される事になる。
ウンカ襲来!でござる
ある村でウンカの大量発生に悩んでいたメジロ。
農書に書かれた殺虫剤を試すが効かず、かなり行き詰っていた。
その村ではメジロの提案で菜種の栽培にも着手していた。
組を二つに分け、稲と菜種に分かれ作業をしてもらっていたのだが、稲の不作は年貢に響く。
民の暮らしが楽になればと始めた菜種栽培であったが、虫害によってそれどころではなくなっていた。
思い悩むメジロに妹の羽子が助っ人を買って出た。
歯車は回る!でござる
からくり師、久兵衛。
江戸でも高値で売れるからくり人形を作る、評判のからくり師だ。
メジロはある依頼を頼む為、その久兵衛の下を訪れる。
メジロの依頼、それは崖の上の土地に崖下の川から水を引きたいという物だった。
描いたのは誰?でござる
百姓の一年を絵で表現した絵農書。
本屋で勧められたその本の中に、元となったと思われる精緻な絵を見つけたメジロは絵農書は写本では無いかと推測する。
原本は更に詳しく描かれている筈とメジロは絵農書を頼りに、無理矢理同行を申し出た羽子を連れて原本探しの旅に出た。
メジロ殿、危機一髪!でござる
生糸の生産が急に伸びた隣藩の村の視察に出かけたメジロ。
そのまま、一か月帰らぬメジロを案じ善波は捜索の為、件の村を訪れる。
善波が村を捜索している頃、野盗に捕らえられたメジロは入れられた岩牢でとある書物を読みふけっていた。
カエルの神隠しでござる
何とか楽に仕事をしたい百姓の伝助。
その伝助を叱咤しながらメジロは今日も農作業に勤しんでいた。
そんな折、カエルの俳句で有名な池の寺から、カエルが姿を消したという話をメジロは善波から聞かされる。
感想
今回もメジロは農業に関する問題を解決する為、東奔西走します。
収録された全てとても面白かったのですが、その中でも今回特に印象に残ったのは冒頭の特産品のお話とウンカの話、そして水車のエピソードでした。
特産品のお話では信楼屋の女主の主張は、商売を第一とする現代の資本主義に通じる物を感じました。
金儲けを優先し人の命を天秤にかける。
経済を回す事は大切だと感じますが、その目的は人が豊かに暮らす事だった筈です。
いつの間にか企業の成長が人の幸せよりも重きを置かれている。
彼女の主張からはそんな物を感じました。
ウンカの話ではメジロの妹、羽子がその鍛え上げた肉体を使い活躍します。
ただ、彼女の魅力は明るく前しか見ない性格にある様に感じました。
ネガティブなマッチョはいないを地で行く羽子。
彼女は今後も時に落ち込み悩むメジロに、別の視点からの解決策を与えそうです。
水車のお話は江戸時代における機械技師、からくり師のお話でした。
西洋が鉄と石の文化なら、日本は木の文化では無いでしょうか。
本来金属で組む歯車を木を用い精巧に組み上げる。
日本人の持つ手先の器用さや伝統が生んだ文化の様に思います。
ただ、お話の肝はからくりでは無く、過ちを犯した人達の再生にある様に思いました。
作中、舞台となった崖の上の土地は人足寄場(犯罪を犯した者が技術を学ぶ場所)出身の人々が世間から離れて暮らそうと願い出て藩から与えられた場所でした。
水車制作に失敗し腐る人々に、からくり師久兵衛が語った言葉がとても印象に残りました。
まとめ
今回登場した、からくり師久兵衛は、いかものの坂巻と並びとても好きなキャラクターでした。
メジロが機械技術的に困った時に再登場してくれたら楽しそうです。
技術料の支払いが大変そうですが……。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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