アルテ 12 ゼノンコミックス
著:大久保圭
出版社:徳間書店
貴族の娘アルテが画家であるレオの弟子として画家を目指す物語。
イレーネが近所の子供達と川遊びをしてしまい、彼女の髪が渇くまで待つ事になったアルテ。
しかし侍女のアセスナが主の身を案じた為、イレーネが現れる事は無くアルテは仕方なくその日は就寝します。
その夜、アセスナの目を盗んで現れたイレーネに誘われ、アルテは隠し部屋で彼女と語り合う事になりました。
イレーネの求めに応じ生い立ちを語ったアルテに、彼女は自身の生い立ちを語り始めます。
冒頭あらすじ
イレーネの生い立ちは父母の出会いから始まった。
王族の常で、彼女の父母も政略結婚だった。
イレーネの母は結婚の時に初めて父の顔を見たそうだ。
しかし母は父を一目見て恋に落ちたらしい。
母は一途に父を愛したが父はそうでは無かった。
父の浮気に悋気を起こし、相手の女性の髪を切った事もあるらしい。
周囲の人間はその行き過ぎた行為に母の事を狂人と囁いたようだが、イレーネはそう思ってはいなかった。
イレーネは、ただ母は父を深く愛していただけとアルテに語った。
その後、父が急逝し母は父の遺体を埋葬する事を頑なに拒んだ。
何か月も棺の側に寄り添い、蓋を開けては遺体に口づけする彼女を周りの人間は完全に狂ったと思ったようだ。
そしてイレーネの母親は幽閉された。
当時、生まれたばかりだったイレーネはその幽閉された母と共に育った。
イレーネは自分は十年間部屋から一歩も出た事が無いと笑いながらアルテに告げた。
感想
イレーネの母親はカスティリア女王フアナ。
狂女フアナという別名を持つ女性です。
彼女の夫はフェリペ一世。
美男子で狩りや槍試合も得意、更に話術も巧みだったようです。
当然女性にもモテ、本人の浮気癖も相まってフアナの心をかき乱していたみたいです。
この作品においてフアナは夫を愛しすぎた女性として描かれています。
ウィキペディアで調べたところではフアナは精神を患っていたと書かれていましたが、歴史は捏造される事もあります。
国の歴史書を編纂する場合においても、クライアントがその国の王であれば都合の悪い部分は恐らく書かせないでしょう。
真実を知る者がいなくなれば、その歴史書に書かれた事が真実として知られる様になります。
フアナが病んでいたというのは、当時の権力者が彼女から王権を取り上げる為流したデマだったのかもと読んでいて感じました。
どちらにしても、様々な文献を調べそれを照らし合わせる事で矛盾点を浮き彫りにし真実だと思える事を想像するしか無さそうです。
タイム節穴とかあれば楽なんですけどねぇ。
まとめ
今回、アルテはイレーネの肖像画を描き上げます。
出来上がった肖像画は、流されて生きるのでは無く自分の足でしっかりと立ち戦っている人に思えました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。