マイ・ブロークン・マリコ ブリッジコミックス
著:平庫ワカ
出版社:KADOKAWA
OLのシイノは定食屋のテレビで、友人のイカガワマリコがマンションのベランダから転落し、死亡した事をしります。
先週遊んだばかりの友人の死に衝撃を受け、シイノの頭はマリコの事で一杯になります。
あらすじ
イカガワマリコの死。
ニュースを見てからシイノの中には彼女との思い出が溢れてきた。
彼女はとても可愛い美少女だったが、いつも傷だらけでよく泣いていた。
原因は彼女の父親。
どの場面でもシイノは助ける事が出来なかった。
シイノは介入出来なかった事を悔いていた。
そして今、あの男は娘を失った哀れな父としてマリコを弔っている。
鞄に包丁を忍ばせたシイノは、マリコの父が住んでいるアパートに向かった。
刺し違えてもと覚悟を決めてインターホンを押す。
男は再婚した女性と暮らしていた。
優しそうな中年の女性。
営業のフリをして何とか家に上がり込んだシイノは思う。
彼女がもう少し早く男と一緒になっていれば、この家はマシだったかもしれない。
そんな事を考えながら女性に案内されて奥へ進む。
線香の香りが鼻に届く。
男の背中の向こう遺骨とその奥、遺影の中でマリコが笑っていた。
衝動的にシイノは飛び出し遺骨を抱えていた。
ひっくり返された仏壇に男は激高しシイノに暴力を振るう。
その男の手に鞄から引き抜いた包丁が振るわれた。
両手で包丁を握りしめ、ガタガタと震えながらシイノは男がマリコにした事を叫んだ。
高校生のとき、実の娘を強姦したテメェに!!
中学生だった実の娘を奴隷扱いしてやがったテメェに!!
小学生だった実の娘から母親を奪ったテメェに!!
テメェに弔われたって!!
白々しくてヘドが出ンだよォ!!!
男の目には声を上げるシイノがマリコに見えた。
男に包丁を突き付けながら、幼馴染である事を告げ、男と刺し違える事になっても遺骨を連れて行く事を宣言した。
呆けていた男だったが、シイノの言葉で我に返り返せと声を荒げ、止めようとする女性を振りほどき彼女に襲い掛かる。
男がシイノに手を掛ける直前、シイノは遺骨を抱え二階の窓から飛んだ。
感想
本作の主人公、シイノ トモヨはアウトローで豪快で、それでいてとても繊細です。
片や彼女の友人、イカガワ マリコは美少女で傷だらけで壊されてしまった少女でした。
読んでいるとシイノはずっと憤りを抱えていたんだろうなと感じます。
中学生の時、父親の暴力でボロボロになっていたマリコ。
恐らくその時もどうにかしたくて堪らないのに、枠を超える事が出来ず何も出来なかったシイノ。
短絡的で考える事がすぐ面倒になってしまうタイプなので、シイノの行動にとても共感を覚えました。
自分が壊れていると考え、幸せとは正反対に進み最終的にはシイノを求めるマリコ。
とても大切だけど、とても面倒臭くて、それでもどうにかしたい。
でも最後には自分に救いを求める事無く、一人で死んだマリコ。
読んでいて感じたのは、マリコが何処かへ行きたいと口にしながら、結局何処にもいけないと諦めてしまっている事への憤りでした。
人が幸せになる為に必要な事はとても単純なモノだと思うのですが、社会の枠組みや一般常識がそれを阻害している様に感じました。
家族は一緒に暮らさなければいけない。
そんな事は絶対に無いと思います。
社会通念の為に死ぬぐらいなら、そんな物捨てればいい。
辛く苦しい場所からは逃げるべきだし、明るく笑って生きれる場所を人は見つけるべきなのです。
だって命は他の誰の物でも無く、その人の物なのですから……。
まとめ
webに掲載された当初から読んでいて、絶対に手元に置いておきたいと思っていた作品です。
作者、平庫ワカさんの次回作も読みたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この作品はComicWalkerにて第一話が無料でお読みいただけます。
作者の平庫さんのTwitterはこちら。