田島列島短編集ごあいさつ モーニングKC
著:多島列島
出版社:講談社
田島列島さんの初期作品等を収録した短編集です。
2008年のデビュー作から2017年までの7作品が収録されています。
その他、おまけとして1P漫画や「子供はわかってあげない」PR用の四コマ等が収録されています。
ごあいさつ 初出「モーニング」2008年44号
あらすじ
姉と二人アパートで暮らす坂野ちかのもとに、一人の女性が尋ねてくる。
彼女は河内の家内と名乗り、姉のりかに主人がお世話になっているからごあいさつに来たと告げた。
その時、姉は仕事で留守だった為、河内は帰って行ったが、ちかは家に昼ドラがやって来たと少し憂鬱になるのだった。
感想
姉のりかは河内という男と不倫関係にあります。
ちかは姉に男の嫁が来た事を話すのですが、姉は嫁に会おうとせず逃げてしまいます。
まさに昼ドラのようなドロドロした状態ですが、読むととてもサラッサラの感じを受けます。
官僚アバンチュール 初出「モーニング」2010年29号
あらすじ
友人の恋が終わったらしい。
相手は妻帯者であるし、ちかは止めたのだが相談を受けたカレーショップで流れていたコムロの力で、彼女の想いは燃え上がってしまった。
その事を姉に話すと、彼女は人の心に住んでいる官僚について解説を始めた。
感想
このお話も前回と同じ坂野姉妹が登場します。
そしてこのお話も、前回と同じく不倫がテーマです。
更に今回も不倫がテーマでありながら、全くドロドロとしておらずすごくサラッとしています。
お姉ちゃんの心の官僚ついて解説、面白かったです。
おっぱいありがとう 初出「モーニング」2014年8号
あらすじ
OLの坂下にはどうしてもやりたい事があった。
そこで同僚の神田くんに聞いた、頼めば何でもやってくれるという他部署の宮本に意を決してお願いした。
彼女の願い、それはおっぱいを吸わして欲しいという事だった。
感想
坂下は別に女性が好きとかではなく、赤ちゃんの頃には男女の隔てなく吸っていたおっぱいを、大人になると男しか吸えなくなる事への不満と、吸ったらどうなるのかという知的好奇心から行動している様に感じました。
田島さんの作品に登場するキャラクター達は、本能では無く理性で動いている感じがします。
それがどのようなテーマであっても重くならない理由なのかもしれません。
お金のある風景 初出「モーニング」2014年11号
あらすじ
雪の降る冬のある日、アパートの二階の部屋の出口で、向かいの道路に向かってスライドを投影していた男(学生:暇だと色々変な事をするよね)は道を歩いていた女性(OL)からじゃんけんの勝負を挑まれる。
彼女は自分に勝てたら30万あげると言うのだが……。
感想
女性が持っていた30万は、元は女性のお金で元カレに貸していた物でした。
元カレは今の彼女に言われ、女性にお金を返した様です。
作中に描かれた学生の友人斎藤君のお金の使い方の話、そして物語のオチどちらも心のモヤモヤが晴れる様な気がしました。
ジョニ男の青春 初出「モーニング」2014年12号
あらすじ
花田玉代29才は悩んでいた。
現在妊娠しているが、同棲中の男は今一つ頼りにならない。
本当にあの男でいいのか。
そんな事を考えながら川辺を歩いていると、ロボットを整備している男達がいた。
男達の話ではその濃い顔のイケメン風ロボはレンタルしているらしい。
玉代は彼らに話しかけ、レンタル料を尋ねた。
感想
とてもホンワカした暖かさを感じるお話でした。
ジョニ男の決め台詞が最高でした。
花いちもんめ ~おらが村にUFOが落ちた~ 初出「モーニング」2014年42号
あらすじ
田舎のある村の田んぼにUFOが落ちた。
農作業をしていた老人の話では、中から宇宙人らしき人影が山に逃げ込んだらしい。
何も無いこの村に観光資源が出来たと、村長は山狩りをして宇宙人を捕獲しようとするのだが……。
感想
目の色を変えている村長、胡散臭いFBI、村長の娘マツコ、ピュアな宇宙人。
ドタバタする四人をよそに事が終わった後、畑の持ち主のおばあちゃんが言うオチが、身も蓋も無くて楽しかったです。
not found 初出「別冊少年マガジン」2017年12号
あらすじ
進学校に通うヒロは、別の高校に通う幼馴染のアカネに、男子に告白されたと告げられます。
アカネは告白を断る為、ヒロに彼氏のフリをして欲しいと頼むのですが……。
感想
友人として幼い頃から一緒に過ごしてきた女性。
少し気になっているその子に誰かが告白したら。
なんとなくですが、置いて行かれたような、少し裏切られた様な気持ちになるのでは無いでしょうか。
私にはヒロの様に離れずにいた異性の友人はいないので、想像する事しか出来ないのですが……。
まとめ
どの作品も人の心の深い部分に触れる様なテーマでありながら、ユーモアに溢れている為、重くなる事無く読む事が出来ました。
個人的には「ジョニ男の青春」で登場した玉代の幸せそうな笑顔がとても印象に残りました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。