漫画

蓬莱トリビュート

投稿日:2020年1月9日 更新日:

朝もやの山蓬莱トリビュート torch comics
著:鮫島円人
出版社: リイド社

中国の怪異譚をコミカライズした短編集。
亡霊、悪漢、妖怪、僵尸(キョンシー)等のお話を集めた中国版昔ばなし集です。

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冥府に行った嫁

清県(河北省)の農村に若い夫婦が暮らしていた。
妻は夫一筋で、人目も気にせず想いを夫にぶつけていた為、ふしだらと思う者もいたが、夫以外に心を許す事は無かった。

そんな妻がある時、強盗に殺される。
彼女は強盗達を罵倒し続け、犯される事無く殺害されていた。
悲嘆にくれる夫の元に、ある夜幽鬼となった妻が姿を見せた。

僧侠

健中(西暦780年ごろ)の初め、韋という士人(日本で言う所の士農工商における士)が家族と共に移居する際、数名の僧侶にであった。
その僧侶の一人に寺に招かれ、これ幸いと招きを受けた韋だったが、いつまでも寺に着かない事に謀られたと悟る。

僧侶を攻撃するも、全く通じず、他の僧侶と先行した妻子は人質に取られた様子。
抵抗を諦めた韋を僧侶は寺に案内し、食事を供しながら願いを話した。

僧侶の願い、それは息子を殺して欲しいというモノだった。

狐の掟

貴族の家で墓守を任せていた男は、ある日犬に襲われていた狐を助ける。
傷を治療した狐はやがて目覚めると、フラフラと男のもとから去って行った。

その夜、男のもとに昼間助けていただいたと口にする、若い娘が訪ねてきた。

冥使代行人

とある街で行商を行っていた伝九(でんく)という男が、突然喚きながら自分を殴るという奇行を始めた。
住民達は佟(とう)の出番だと口々に言う。

呼び出され欠伸をしながら現れた男は、伝九に指を突きつけ、なにやら術を使った。
すると男の様子が一変し、自らを李四(りし)と名乗り、これまでの事を語り始めた。

異類の娘【虎】

貞元9年(西暦793年)什邡県の尉(警官・軍人)に任じられた申屠澄(しん とちょう)は赴任先に向かう道中、吹雪に見舞われ一軒の民家に助けを求める。
其処には明らかに人とは違った者達が暮らしていた。

驚いた申だったが、その家族は彼を暖かく迎え入れた。

怖がりの老師

川を渡る渡し船、その渡し船に盗賊達が紛れていた。
彼らは船客の荷物を奪い、客たちを船外に放り出そうとしていた。
そんな盗賊達を、船客であった小柄な老人が叩きのめし川に放りこむ。

客たちは老人に礼を言い、その強さを褒め称えた。
しかし老人は自分は怖がりだと言う。
キョトンとした船客達に、老人は過去の思い出を語り始めた。

異類の娘【狼】

章佖(しょうひつ)という青年が水磨関(すいまかん)に暮らしていた。
彼は所謂狩人で、兎や雉を狩って日々の糧を得ていた。

そんなある日、山中で日暮れを迎えてしまった章佖は、山を下るのは逆に危険と考え野宿をする事にした。
すると、何者かが近づき章佖の顔を覗き込んでいる。
夜盗と思い腕を掴んで凄んだが、掴んだ腕は若い娘のものだった。

鮫人

茜渓の景生は、三年ぶりに帰った故郷の砂浜で、倒れた人影を見つける。
景生が慌てて声を掛けると、その人影はぬらりと立ち上がった。
その顔を見て景生は驚く。

人影は人間では無かった。
男は自分は鮫人(こうじん)であると名乗った。

鮫人と言えば、海中に住み美しい機(はた)を織る事で知られている。
景生は美女を想像していた為、さえない中年のおじさん風の鮫人に酷く落胆したが、行き場がないという彼に同情し、使用人として家に連れ帰る事にするのだった。

黄耳

晋の文人、陸機は洛陽に出仕する際、可愛がっていた黄耳という犬を連れて単身赴任した。
この犬は大層賢く優秀だった。
ある時、家族の便りが届かぬ事を案じた陸機は、黄耳に手紙を届けてくれないかと戯れに頼んだ。

すると、黄耳は陸機の言葉を理解しているかの様に一声鳴いた。
陸機はそれを受けて、手紙を入れた竹筒を首に巻いた。
途端に黄耳は走り出し、山や川を超えて故郷の家まで手紙を届けたという。

唐道襲

王建が蜀を支配している時代。
寵臣の唐道襲がある大雨の日に、猫が雨だれにじゃれているのを眺めていた。
すると不思議な事に、猫の胴体が少しずつ伸びていく。

軒先に届く程、その胴体が伸びた時、雷鳴が轟くと猫は龍となり空に昇って行ったという。

感想

日本の民話や死生観は中国から伝来したモノも多く、死者を裁く閻魔大王や狐、虎、狼の妖怪等は日本人にも分かりやすいと思います。

逆にキョンシーの存在や幽鬼を使役する感覚は余り日本では馴染みが無いと思います。
陰陽師が式神などを使役するのはありますが、映画化されたとはいえ余り一般的では無いでしょう。

また、この本に収録されている異類婚は、日本と同じく悲しい話が多いです。
大体が、娘が去るパターンが多い様に思いますが、たまには「そば屋にむこ入りした雷」的なハッピーエンドも見てみたい気がします。

まとめ

絵のタッチで手にした時はラノベ的な印象を受けましたが、読んでみれば中国の古典をとても分かりやすく描いている作品でした。
中国には魅力的な神話が数多く存在しているので、そんな物語も読んでみたいと感じました。

この作品はトーチwebにて一部無料で閲覧可能です。
作者の鮫島円人さんのアカウントはこちら

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのPeggy und Marco Lachmann-Ankeによる画像です。
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