やさしいヒカリ 2 アフタヌーンKC
作:中村ひなた
出版社:講談社
久しぶりに島へ戻った父から大学に行くよう言われた日和子は、仕事で普段家にいない父への反発から、ワザと予定を入れて島を離れる父と会わない様にします。
しかし、彼女は父が家から出た後、それが本当は寂しさの裏返しだと気付きます。
三宅は、そんな日和子を港へ送り届け、彼女が用意していた誕生日プレゼントを父に渡す事を助けたのでした。
登場人物
三宅大和(みやけ やまと)
飛鳥の弟
東京で美大に通っている。
彼との出会いが日和子に変化を与えた。
綿里千代(わたり ちよ)
日和子の従妹
父方の叔父の娘、中学二年生の女の子。
169cmと長身だが、性格的には大人しく明朗快活な日和子に憧れをもっている。
あらすじ
父に大学進学を勧められた日和子は、三宅の弟の大和が東京で個展を開くのと、オープンキャンパスの日取りが重なった事を利用して二人で東京に向かった。
三宅と共に大学を見学するが、数ある学部の中で自分が一体何処に行けばいいのかさえ分からのに、自分が何か見つけられるのかと悩む。
一方三宅も、久しぶりに会った友人たちが、着実に前に進んでいるのを感じ、自分との違いに落ち込む。
そんな二人は、翌日、大和の個展に出向き彼の描いた絵を鑑賞した。
三宅が大和にテーマを聞くと、彼は「メメント・モリ」という古代ローマの言葉をテーマにしているらしい。
意味は「自分はいつか必ず死ぬという事を忘れるな」
大和は言葉の由来や変遷を語ったが、最終的にはその言葉がシンプルに好きだと言い言葉を続ける。
「当たり前なのに、意外とみんな忘れているでしょ
自分がいつかは死ぬってこと」
東京からの帰り、大和の話になり三宅は大和や友人達が持つ何かを思いながら言葉を紡いだ。
その言葉で、三宅が落ち込んでいると察した日和子は、三宅は確かに大和の様な才能は無いが、細かな気遣いが出来る事はすごいと話した。
さらに、大和は三宅が絵を見に来てくれただけで、うれしかったと思うと続けた。
日和子の言葉で、三宅は幼い頃、絵を褒められた大和がとても嬉しそうな顔をしていた事を思い出した。
東京から帰った日和子は、撮った写真をアルバムに貼っている時、不意に大和の言葉が頭をよぎった。
もし、自分が死んだら楽しかった記憶も、今日の出来事も何も残らずなかったことと同じになるのかな……。
その思いは目の前の写真が否定してくれた。
写真は自分がいなくなっても残る。
それってすごいことなのかも……。
写真の中の三宅がこちらに笑みを向けている。
日和子はもっと写真を撮っておけばよかったと、少し後悔した。
感想
今回は東京への小旅行の他、三宅君の一人観光、従姉の千代の家出、そしてコスモス探しの様子が描かれました。
この作品は、本当に表情が繊細に描かれていて、その表情から言葉に出来ない微妙な気持ちが伝わってくるような気がします。
幼い頃の記憶の中の大和の笑顔。
写真の中にある永遠に気付いた日和子。
袋小路にいた千代が、三宅の言葉で道を見つけた時。
読んでいると登場人物たち心に、光りが射しているのだと分かります。
まとめ
今巻の終盤では季節は秋を迎え、三宅は日和子との別れを感じ始めます。
何というか、作中でも話題の出た夏目漱石的な、二人の遠回りな感じが何ともいえず心地いいです。
こちらの作品はアフタヌーン公式サイトで第一話が無料で閲覧できます。(20年1月現在)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。