赤ずきんの狼弟子 月への遺言 2
著:茂木清香
獣人、人間、狩人、三種の人が住む世界で、本来狩る側と狩られる側の二人が師弟になる物語。
この作品は同人誌として発表された物で、ウルとマニが出会う前、ウルの毛皮の持ち主であった喧騒(スコル)という名の獣人のお話です。
登場人物・設定等
スコル
人狼族の少年
優秀な弟に引け目を感じ、群れを離れる。
ハティ
スコルの弟
獣化の出来ないスコルと違い、獣化も狩猟もこなす優等生。
人狼族
他の獣人と違い、体を自在に獣に変化させる事が出来る。
全身を獣に変える事、獲物を狩る事で一人前と認められる。
性格は穏やかで、他の獣人の様に進んで人間を襲う事はない。
冒頭あらすじ
獲物を狩り周囲から賞賛される双子の弟、ハティ。
スコルは獣化も狩りも出来ない自分と、優秀な弟を比べ落ち込む。
そんな弱い自分を変えるべく、集落を飛び出したスコルは獣人の天敵、狩人と出会ってしまう。
その狩人は、スコルを自分に街で殺気をぶつけたハティと勘違いし問答無用で襲い掛かってきた。
しかし、余りに歯ごたえの無いスコルにハティでは無いとすぐに気付き攻撃を止めた。
獣人の声を聞き取れない狩人は、スコルに対して一方的に言葉を投げかける。
敗北者、捨てられ追い出された者、狩人の言葉に反論するが彼がスコルの言葉を理解する事はない。
最後に狩人は、どうせならお前じゃない方に会いたかったと口にした。
いつも求められるのはハティばかり。
狩人の言葉は、スコルの心の深い部分を無遠慮にかき回した。
湧きあがった衝動は、行動となってスコルの体を突き動かす。
スコルは牙を剥いて狩人に襲い掛かった。
しかし、怒りを込めて放った拳は簡単に防がれ、指一本で吹き飛ばされる。
倒れ込んだスコルは、群れの話をしながら立ち上がる。
群れにいた時は、皆優しかったが息苦しかった。
それは暗に言われていたからだ。
生き恥を晒すな、誇り高く死ね
弱者は人狼に非ず
自分は獣になる事も狩りをする事も出来ない。
それでも俺だって人狼だ!!
スコルの叫びは言葉の通じない狩人の心に響いた。
狩人は襲い掛かってスコルの殺意に、多少、気をいれて応戦する。
だが地力の差は埋められず、スコルは壁に叩き付けられた。
このままじゃ死ぬぞとスコルに声を掛け、洞窟の入り口まで送ろうと口にした狩人だったが、不意に指の傷に気付く。
驚きながらスコルに目を向けると、彼は口から狩人の血を滴らせながら、目に涙を溜めて獰猛に笑っていた。
人狼の矜持を守る為なんとか反撃したが、恐らくそれは狩人の怒りを買っただろう。
死を覚悟したスコルだったが、狩人は大声で笑い始めた。
狩人はスコルを気に入ったらしく、一方的に思い出や自分の考えを語り始める。
どうやら狩人は、スコルを鍛えてから狩るという事にしたようだ。
その後、彼はスコルに選択肢を提示した。
一つはこのまま自分に狩られる
一つは弱いまま逃げ延び野垂れ死ぬ
だが……
そう言って狩人は拳を突き上げる。
凄まじい轟音と閃光が天から落ちた。
狩人は言う。
二つの死の道は俺の雷が焼き払った。
生を得る第三の道を示してやろうと
彼が示した三つ目の道、それは自分の弟子になれというモノだった。
狩人の名は〈雷帝〉トール。
彼が道標だと作り出した雷光の美しさに、スコルは思わず引き込まれた。
感想
雷帝トールはウルとは違い、かなり豪快で身勝手な性格のようです。
ですが、スコルの事は気に入っている様で、厳しい試練を与えながらも影からサポートしていたりもします。
今回、スコルの気持ちの吐露という形で、人狼族の群れの事が語られました。
今後、商業誌版では余り語られなかった、この世界における狩人達についてトールを通して説明が為されるのかなと勝手に想像してしまいました、
会話が出来ず、一方通行な子弟がどんな道を辿るのか、続きが楽しみです。
まとめ
かなり強引にトールの弟子にされたスコル。
彼がどのような経緯でウルの毛皮となるのか、ハティを始め人狼族はどうなるのか、早く読みたいです。
茂木清香さんのツイッターはこちら。
作品はBOOTHのもぎ屋及びメロンブックスのもぎ屋からご購入いただけます。
こちらは同人誌ですので、在庫切れの場合は再販をお待ち下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。