小説 小説短編

ホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜

投稿日:2018年11月17日 更新日:

トンネルホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜
著:櫛木理宇
画:ヤマウチシズ
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

幽霊が視える大学生、八神森司はかねてより予定していた簿記試験を受けた。

結果は出来たのか、出来てないのか彼自身にも分からなかった。
しかし思い人であるこよみの父にも協力してもらった手前、駄目でしたでは格好がつかない。

暗い気持ちを抱えバス停に向かう森司に、一人の男が声をかけた。
彼の名は浩太、中学時代の陸上部の部活仲間だった。

大学を舞台にしたオカルトミステリー第六弾。

各話のあらすじや感想など 

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旅籠に降る雨

あらすじ
午後の講義を終え、森司は待ち合わせ場所に向かっていた。
途中、顔見知りの顔見知りの大学職員と、問題のある聴講生について愚痴を聞いたりしながら待ち合わせの場所に着いた。

件の人物は先に来て森司を待っていた。
津坂浩太、彼は陸上部のエースで、現在はスポーツ推薦で東京の大学に通っている。

森司は中学時代、一度も彼に勝つことが出来なかった。
しかしそれについて特に悔しいという感情はなかった。

今回、浩太と待ち合わせをした理由は再開時に遡る。
偶然出会った二人は、このまま別れるのも味気ないと、居酒屋で飲むことにした。

居酒屋で話を聞くと、浩太がこっちに戻った理由は、スランプが原因らしい。
記録も伸び悩み、膝の具合も怪しい彼は大会を辞退して、祖父の法事を理由にこちらに帰ってきたようだ。

浩太は自分の歩んできた道を、少し後悔しているようだった。
脇目もふらず陸上に打ち込んできたが、ふと周りをみると合コンや飲み会で、楽しそうにしている奴らばかり。

甘酸っぱい思い出なんて、一つもないと愚痴った。

彼の矛先は森司にも向かった。
携帯を見せろ見せないの話から、片思いの話になり、相手の写真もプリクラもないことが分かると、会わせろと言ってきた。
根負けした森司は浩太をこよみと会わせることを渋々承諾した。

大学の食堂で璃子や藍と遭遇しながら、食事をしていると意中のひと、こよみが声をかけてきた。
こよみは森司に二時に相談者がくる旨を伝え去っていった。

浩太はこよみを見て、森司に彼女は無理だと言った。
浩太の言葉で、もしかしたらと盛り上がっていた気持ちがしぼんでいく。
そんな森司を横目に、藍とこよみに会いたい浩太は、部室に行こうと森司に声をかけた。

部室に着き浩太を紹介した後、黒沼部長から、今回の依頼者は非常勤講師の矢田からの正田と説明された。
その後矢田が部室を訪れ、依頼者が忙しいため車で現地に向かうことになった。

向かう前に矢田は事の顛末を語った。
依頼者は矢田の元教え子で倉持木綿子というらしい。
彼の話では、文武両道の才媛で、同じ高校で五年後輩の浩太も知るほどの伝説の人物らしい。

彼女は院への進級を捨て、潰れかけの旅館に嫁いだそうだ。
皆が無理だというなか、木綿子は三年で破産寸前の旅館を立て直した。
かなり優秀な人物のようだ。

これで旅館も安泰だと思われていた矢先、事件が起こった。
宿泊客のOLが庭を散策中に、空から土蛙が何十匹も振ってきたのだ。
その後も石が振ってくるという現象もおこり、さすがの彼女も参っていると矢田は語った。

今回の依頼は、藁にもすがる気持ちで出されたものらしい。
その後、部長のうんちくが披露され、一行は事件が起こった旅館、駿河屋に向かった。

感想
空から普通では考えられない物が降ってくる、ファフロツキーズという現象は古くから見られたようです。
原因は竜巻や鳥の仕業等様々な説がありますが、よくわかっていないようです。

白のマージナル

あらすじ
冬も近づいたある日、オカルト研究会の部室では部長の黒沼、泉水、森司の男三人がまったりと午後を過ごしていた。
その静寂を破り、部室のドアが勢いよく開かれる。
ドアを開けたのは、藍だった。

藍は森司に以前、板垣果那の彼氏の振りをしたわねと確認してきた。
勢いに戸惑いつつも、森司は、はいと答える。
すると彼女は森司を立たせて腕を組む。

藍と共に部室を訪れていた、結花と璃子にどうか尋ねる。
彼女たちは悪くないが、姉弟みたいと答えた。

その後黒沼部長、泉水と次々に腕を組み、その都度、彼女たちに確認する。
部室にいた三人は誰も合格できなかった。
その時、たまたま部室に現れた小山内に白羽の矢が立った。

結花と璃子も小山内なら問題なしと太鼓判を押した。
満足した藍たちは、小山内を引きずるように部室を出て行った。

どうやら、面倒見の良い彼女に、自分に気があると勘違いした男が現れたらしい。
撃退するため、今回は小山内に彼氏役を務めてもらうようだ。

藍たちと入れ替わりに、こよみと浩太が部室に入ってきた。
浩太は藍がいないので残念だと語り、そういえば藍がなぜオカルト研究会に所属しているのかと聞いた。

黒沼部長からは意外な答えが返ってきた。
研究会を発足させたのは、藍だというのだ。

部室の手配や、サークル発足に必要な名義集めなど、全て藍一人で行い、黒沼部長や泉水はそれに乗っかっただけだという。
森司の、三人はサークル設立前から仲が良かったんですねとの質問に部長は首を振った。

じゃあなぜと森司が疑問を発する前に、黒沼部長は語りだした。
それは藍がまだ一年生のころ、今から三年前のことだった。

感想
研究会が発足するきっかけになった事件のお話でした。

クレプトマニア(窃盗癖)というのは精神の病で、物欲ではなく窃盗を行う事自体が目的になっているようです。
直すには精神科医による治療が必要ですが、日本ではまだ専門の医師は少ないようです。

よくない家

あらすじ
森司はオカルト研究会の部室で浩太に絡まれていた。
走れメロスを引き合いに出し、男の友情について熱く語る浩太に、森司が反論したところで、藍にうるさいと一括された。

元は浩太が絡んできたのに、なぜ俺が怒られるんだと不満に思ったが、うるさかったのも事実なので素直に謝った。

そんなことをしているうちに、携帯を確認すると約束の時間が迫っていた。
森司は泉水にバイトを紹介してもらっていた。

森司は来るクリスマスにむけて、こよみにプレゼントを渡すため、短期のアルバイトをすることにしたのだ。
これからその面接なのだ。

彼は浩太に帰るよう促し、自分も部室を出て面接に向かった。

バイトの面接はすんなり合格できた。
泉水が紹介してくれたのは、引っ越し業者のアルバイトだった。
仕事はきつかったが、バイトの先輩がいうように、みんなやさしく人間環境はとても良かった。

一件目、二件目ととくに大きな問題なく、森司は仕事をこなした。

問題が起きたのは三件目の仕事の時だった。
4LDKの一軒家だった。

トラックから降りた森司は息をのんだ。
同じく家に気付いた泉水が森司に声をかけた。
お前は家に入らず、外で荷運びに専念しろ。
泉水の言葉に従い、運び出される家具や荷物を車に運ぶ事だけに集中した。

怖い、家について森司はそう感じた。
仕事が終わると、家主と思われる男性が皆に声をかけてきた。
三十代半ばの朗らかな声の男性だった。

ご苦労様と言った彼の手には指は二本しか残っていなかった。
男性は森司の様子に気付き、怖がらなくても大丈夫と手をふった。

自分でやったことだからと、事も無げに言う。
彼は森司に、指を包丁で落とした時の様子を語り、もうこの家に誰も住まわせちゃ駄目ですよ言った。

「だって夜になるとあっちのほうから来るんです」

彼は笑いながら、夜になると聞こえるその声に従い、指を落としたと話した。

その後、出てきた彼の父親であろう、初老の男性に全員がのし袋を渡され、実家に帰るという彼と別れて帰途についた。
のし袋には一万円入っていた。

会社に帰る途中で酒屋に寄り、全員が思い思いの強い酒を買った。
酒でも飲まないと全員、眠れそうになかったからだ。

感想
映画、シャイニングのホテルのように、そこに住む人間に影響を与え狂気に誘う、そんな家の話でした。

異形の礎

あらすじ
十二月のはじめ、仕送りもまだ先で、バイト代にも手を付けたくない森司は寒さをしのぐため、早々に布団に入った。
ウトウトし始めた時、携帯が鳴った。

浩太からだった。

彼は今日は合コンのだったはずだ。
なんだよと言う森司に答える浩太の電話は、会話の途中で途切れた。

浩太は合コンに参加したことを後悔していた。
男五人、女五人でのコンパだった。
女の子はメイクはきついが華やかできれいだ。

問題はそこではない。
高校時代の安達に誘われて参加したが、安達は自分より格下だと思った相手にはとことん下に見る人間だった。

この合コンでも新保という男子学生が、安達と他の二人ににさんざんいじられていた。

女の子たちも口先だけで、クスクスと笑っていた。
一人だけ太刀原瞳美という子だけが無言でみていた。
浩太はこの子だけ感じが違うなと思い、なぜこんな合コンに参加したのか不思議に思った。

その後、終電の時間だという女の子たちに、安達がドライブ行こうと言い出した。

浩太は帰ろうとしたが、車で送ってもらわなければ、終電に間に合わない事と、瞳美の事が気になったので付き合うことにした。
運転手は下戸の新保がやることになった。

女の子の一人が事故が多発する、心霊スポットがあるといいだし、そこに向かうことになった。

安達のアウディとタクシーに分乗して、心霊スポットに向かう道すがら、同乗していた女の子の一人が怪談を語り、安達がそれをあしらっていた。

道は昔はせまく曲がりくねった道だったが、現在は暗いが気を付けて運転していれば、事故など起こりそうもない。

しかしこの道では大きな事故が多発していた。
目的の場所には枯れた花束が沢山おいてあった。
タクシーは料金を受け取ると、すぐに走り去った。

寒いしもう帰ろうという女の子に、安達は舌打ちし飲んでいたビールの缶を投げ捨てた。
その拍子に安達はバランスを崩し、足元の石塊に躓きかけた。

石塊は慰霊碑のようだった。
安達たちは新保に石塊に足を乗せてポーズをとれと強要した。
嫌がる新保を一人が羽交い締めにし、一人が石碑に足を乗せようとした。
暴れる新保を安達が背中を殴ると、彼は大人しくなった。

浩太が止めようか迷っているうちに、新保は両手両足を持たれ荷物のように運ばれた。
彼が暴れた拍子に足が石碑に当たり、石碑は真横に倒れた。

浩太は慌てて石碑を直そうとしたが、元々摩耗してバランスの崩れていた石碑は元に戻ることはなかった。

その後、タクシーを呼び何とか帰路についた彼らは、何度も同じ人影を見た。
安達はハンドルをにぎる新保に、さらにスピードを上げるように命令し、さらに人影が飛び出してきてもブレーキを踏むなと言った。

次に人影を見た時、安達はスピードを上げろと新保に言った。
その直後人影が車の前に飛び出した。
どんと音がして、前輪が何かに乗り上げるのを乗っている全員が感じた。

慌てて車を止め、新保と浩太が車を降りた。
道路には何もなかった。
後ろから車のライトが迫ってくる。

後続のタクシーだ。
タクシーに乗っていた連中は何も見ていないようだった。

再度アウディに乗り車を走らせる。
そのうち女の子の一人が、一人多いと言い出した。
新保も一人多いと同意した。

混乱する車内で浩太は森司に電話をかけた。
しかし話の途中で切れてしまう。
表示は圏外になっていた。

サイゼリアの駐車場で車はようやく止まった。
明るいネオンサインに照らされる駐車場で車を降りたのは六人だった。

タクシーの四人は先に帰らせた。
不意に瞳美が言う。

「ねえどうしてまだこんなに暗いの」

白夜のような駐車場で彼女はそうつぶやいた。

感想
トンネルに関係する怪談も数多く存在します。
トンネルが異界への入り口を想起させるからでしょうか。

私もトンネルはあまり好きではなく、入ると早く抜けたくてしょうがありません。

まとめ

今回はかつての部活仲間である浩太に、引っ掻き回された形の森司君でした。
浩太のシーンが多かったせいか、小山内の存在が希薄でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この作品は映画化もされました。
キャスティングもよく合っていたと思います。
各キャラクターの個性が強調されており、森司君はよりヘタレに演出されていました。

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