小説 小説短編

ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下

投稿日:2018年11月5日 更新日:

桜ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下
著:櫛木理宇
画:ヤマウチシズ
出版社: 角川書店 角川ホラー文庫

幽霊が視えてしまう体質の大学生、八神森司。

こよみに片思い中の彼の前に、高身長でルックスも良い歯科学部の学生、小山内が現れます。
彼もこよみのことが好きらしく、焦りを感じる森司。

大学を舞台にしたオカルトミステリー第三弾。

各話のあらすじや感想など 

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月の夜がたり

あらすじ
四月に入り森司は大学二年生になった。
雪国にあるこの街は四月になっても、雪がちらつくこともあるほど冷える。

新入生入学の時期、大学ではサークルの新入生勧誘がさかんに行われていた。

そんな勧誘活動を横目に構内を歩いていた森司の前に、背の高い好青年が現れる。

「灘こよみさんと知り合いですよね。」

彼は森司とこよみが話しているのをきいていたらしい。
男は小山内陣と名乗り、森司に名刺を渡してきた。
こよみとは小学校、中学校と同じ学校で同級生だったらしい。

彼は森司とこよみが親し気に話しているのを見て関係を知りたかったようだ。
森司が同じサークルに所属していると答えると、何のサークルに所属しているか尋ねた。

オカルト研究会だと話したところで、勧誘活動をしていたインカレサークルの仲間に呼ばれたこともあり小山内は戻っていった。

森司はこれ幸いに逃げるようにその場を後にした。
部室に着いた森司は藍にお礼としてロールケーキを渡した。
彼女にはバレンタインのお返しについて相談に乗ってもらったのだ。

いきなり指輪を渡そうとする森司を諫め、お返しはサボテンの鉢植えとクッキーに落ち着いた。
無事こよみに渡せ、彼女も喜んでくれたようで、定期的にサボテンの成長について、メールをくれるようになった。

その後、遅れてやってきたこよみに小山内の事を尋ねると、知り合いではあるが、彼には嫌われているようだと、こよみは語った。
心当たりはないが、怒らせるようなことをしたらしく、あいさつしても返事を返してくれないことがあったようだ。

その後、黒沼部長から、インカレサークルに所属する人物がこれから相談に来る旨を告げらる。
相談に訪れたのは棚橋という男だった。

男は服を着込みすぎいて着ぶくれしていた。
一緒に先ほど会った小山内も部室を訪れていた。

「祟りについて信じますか」
棚橋は地元に残る雪女の祟りについて語った。
その話では家を継がずに地元を離れた長男は雪女に祟られるらしい。

彼が原因不明の寒さを感じ始めたのは、県外の企業に内定をもらった時期と一致していた。
なんとかして欲しいと訴える棚橋に、黒沼部長は部員が全員揃った時に再度相談を受けると約束し、その日は帰ってもらった。

部室を出た森司は先ほど帰ったはずの小山内に声を掛けられる。
森司は小山内のこよみへの態度について怒り、彼女に嫌がらせを続けるつもりなら二度と近づくなと話した。
すると小山内はそんなつもりは全くないと語った。

詳しく話を聞くと、こよみを前にすると緊張して、言葉がでてこなくなるらしい。
話しかけたいのに、頭の中で考えが渦巻いて、これを言ったら嫌われるんじゃないか等と考えているうちに、何も言えなくなるのだそうだ。

森司は自分と同じ悩みを抱える小山内に対して親近感を持ってしまい、半ば押し切られる形で連絡先を交換するのだった。

感想
多くは語りませんが、余りに陰湿で酷い事件でした。

それはさておき、森司君がお人好しすぎてなにも言えません。
まあそれが彼の好いところではあるのですが。

覗く目

あらすじ
亜澄はバイトで資金をため念願の一人暮らしを始めた。
過保護気味の父親と祖母を説得し、ようやく成功した時には春休みも終わりかていた。

この時期からでは、良い物件は押さえられてしまっており、不動産屋と回りに回って、やっと今の部屋を見つけて晴れて一人暮らしをスタートすることが出来た。

深夜も零時を回ったあたり、部屋で寛いでいると友人の沙裕美からメールが入った。
明日の講義も休むらしい、沙裕美は彼氏ができてからずっと大学を休んでいる。

彼氏といて楽しいのはわかるけど、いい加減にしないと単位を落とすよ返信した。

また携帯がなった。
沙裕美からの惚気メールかと思い見てみると、同じサークルの真紀からだった。
コンビニからの帰りに変な男につけられたらしい。

メールには春先には痴漢がふえるから、亜澄も気を付けてと書かれていた。

不安になった亜澄は家の戸締りをチェックした。
ドアチェーンやお風呂場の窓などを確認し、最後にベランダの窓をみた。
窓には厚手のカーテンがかけられている。

その両開きのカーテンの隙間から濁った眼が覗いていた。

その眼と見つめ合ったまま動けずにいると、不意に眼は消えた。
恐る恐るカーテンに近寄り、思い切って開くとそこには闇が広がっているだけだった。

気のせいだと考え寝ようと振り返った亜澄は、ベッドの下に先ほどの眼を見つけた。

眼は悲しみと怒り、恨みを含んたまなざしで亜澄を見た。
ベッドの下は収納になっており、人が入る隙間などない。
眼は先ほどと同様唐突に消えた。

亜澄はへたり込みガタガタと震えるだけでなにも出来なかった。

感想
眼は口ほどにものを言うという言葉通り、瞳には感情が宿ります。

なにか目標を持ち邁進している人の目は、生き生きと輝いているし、悩みやストレスを抱えている人の目は、どんよりと曇っているように思います。

不安や不満ではなく、希望を見つめて生きていきたいものです。

泣きぼくろの人

あらすじ
桜の時期が訪れ、森司は先日、黒沼部長から頼まれた花見の場所取りをしていた。
春先とはいえ早朝、夜も明けきらぬうちからの場所取りは、コートにマフラー、携帯カイロを装備しても堪えるものがある。

寒さの中真面目に場所取りをしていると、今回の経緯が思い出された。

前回の依頼でわらしべ長者的に缶コーヒーから始まり色々あって黒沼部長が、小山内がこよみを映画に誘うことを阻止するという結果をなったのだ。

その結果を受けて、恩返しの意味で場所取りを引き受けたのだが、お花見には小山内も来るらしく、果たして意味があったのか疑問がわいてきたところだ。

待っていると、黒沼部長と彼の従弟である泉水もやってきた。
泉水が手際よくコンロやクッカーを準備し、クッカーで持ってきた日本酒を燗にしてくれる。

部長が熱燗を渡してくれた。
口に含むと熱さが喉を通り抜け胃におちて、寒さに凍えた体に染み渡る。

取り敢えず三人だけで、花見はスタートした。
程なく藍が大皿を抱えてやってきた。
彼女は自ら釣り上げた魚を刺身にして持ってきていた。

その後日本酒を抱えた小山内も合流し、最後にこよみも加わった。
彼女は三段の重箱にいなりずしや出汁巻き卵、筑前煮や竜田揚げが入ったスタンダードな花見弁当を作って来ていた。

こよみの弁当に舌鼓を打っていた森司だったが、尿意を覚え仕方なくトイレに向かった。
花見客で賑わう公園のトイレは、いっぱいで用を足して戻るまで二十分ちかくかかってしまった。

戻ってくると、小山内がこよみの横にすわり、小中学校時代の話をしている。

邪魔しちゃえばという藍に、森司はこよみが楽しそうにしているのにそれは出来ないし、小山内もいやな奴ではないと話した。
藍に慰められていると、小山内がよってきて酒が入ると緊張せずに話せましたと話しかけて来る。

森司はこれ以上は精神衛生上よくないと思い、小山内が部長に言っていた「先日のお願い」の事を振ってみた。

小山内の話では母型のはとこが、バイト中の雑居ビルで白い影を見たらしい。
それ以来、身の回りでおかしなことが起こっているようだ。

花見に呼んでいるとのことなので、それを待つことにした。

感想
DVの問題は男性から女性に対するものだけではなく、男女問わす存在します。
好きな人に暴力を振るう心理は、素人では解決することが難しく、専門のカウンセラーに相談するのが良いようです。

白丁花の庭

あらすじ
オカ研は池浦という四年生の男から、ポルターガイストについて相談を受けた。

彼の話ではゼミの研究室が荒らされていたのが。事の始まりだ。
なんでも研究室のビーカーなどが割れて散乱し、パソコンデスクの机の中身が、滅茶苦茶に引き出されていたようだ。

最初は空き巣の犯行を疑ったが、研究室にすぐ金に換えられるようなものは無く、データ等も壊されておらず、研究も始めたばかりでコピーされていたとしても、問題ないレベルらしい。

その二週間後、風もないのにカーテンが揺れだし、ぶちぶちとはずれ、四日前「ぱぁん」という音がしたあと、しばらくしてビーカーが宙に浮き、並べられた試験管のキャップが弾け飛んだと語った。

その後駆け付けた教授に状況を説明するも、彼は信じず激怒しながら、彼らを説教した。
ゼミの教授である袴田は厳格、頑固、昔気質の男でゼミ生も彼の機嫌を損ねないよう戦々恐々としているようだ。

説教の最中、一人の院生が声を上げてしまった。
袴田はその院生を問い詰めた。

院生は言い淀んでいたが、追及から逃れられず口を開いた。
「戸口の向こうを溝呂木が通り過ぎたように見えたんです。」
それを聞いて袴田は烈火のごとく怒り、説教はさらに一時間続いた。

溝呂木は過去にゼミに所属した学生で、ノイローゼとなり大学を去ったそうだ。
池浦も噂しか知らないが、実家にはもどらず、現在の消息はつかめていないそうだ。

池浦はバイオ系のゼミは就活が厳しく、騒ぎを解決して早く教授の機嫌を戻したいらしい。

黒沼部長は彼の話を聞いて、解決に乗り出した。

感想
愛していた人を亡くすことは、その人にとても大きな悲しみをもたらします。
心の傷は完全に癒えることはないのでしょうが、時間とその他のなにかで、埋めるしかないのかもしれません。

水辺の恋人たち

あらすじ
小山内と同じサークルの富永という男の案内で、藍とこよみは男三人女三人で鳥尾山中の縁結びの神社を目指していた。
小山内の運転するプリウスに藍とこよみ、医学部の男子学生。

富永のプジョーに彼と彼の彼女である香子で分乗し、麓の駐車場についた。

そこからは山道を通り神社を目指した。
樹皮が付いたままの鳥居をくぐり石段を上るとこけら葺きの古い社殿があった。
社務所はなく、人の気配もしない。

一行はお賽銭をいれ社に手を合わせ、置いてあったおみくじを引いた。

こよみは「末とげるべし。今の縁を最良としれ」
藍は「思いのほか早くまとまる」
小山内は「良縁あり待て」
だった。

お参りも終わり帰る段になった時、医学部の彼が一直線に突っ切ったほうが早いんじゃないかと言い出した。
皆それもそうかと思い、反対意見はでなかった。

山道を上り下りを繰り返し、一行が迷ったんじゃないかと思い始めた時、藪を富永がはらった向こう側に沼が姿を現した。

沼の向こうに街の姿がみえる。
一行に濃い安堵感が広がった。
下りる道も見つかり車へ戻ろうとした時に短い声が上がった。

何事かと見ると、沼の脇に看板が立っている。
看板には自殺を止めるような言葉が書かれてある。
ここはそういう場所のようだ。

藍が過剰におびえる必要はないと言い。
続けてでも暗くなる前に急いでおりましょうとみんなに声をかけた。

その言葉をかき消すように富永が短い悲鳴を上げた。
彼は不明瞭に何かを吠えた。
「いやだ」とか「だめだ」と言っているように聞こえた。
その後、彼は一人走り去った。

置いて行かれた一同の中で香子がここは怖い、ここにいたくないと言い出した。

彼らは香子を連れ山を下った。

感想
愛しい思いが裏切りによって憎しみに変わる。
思いが強ければ強いほど、それは大きく膨らむでしょう。
今回はそんなお話でした。

まとめ

小山内というライバルの出現で、森司君は危機感を抱きますが、お人好しな彼は敵に塩を送るようなことをしてしまいます。
しかし、こよみちゃんも彼のそういう部分に、魅かれているのだと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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