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レプラコーンの涙 ソード・ワールド短編集 各話冒頭部分あらすじ・感想

投稿日:2018年9月14日 更新日:

レプラコーンの涙
安田均 編
水野良 他
イラスト 米田仁士
富士見ファンタジア文庫

テーブルトークRPG「ソード・ワールドRPG」※の世界フォーセリアを舞台にした短編集、第一作目。

短編集にはロードス島戦記を執筆した水野良さん他、有名作家も多数参加していました。
この短編集では4作品が収録されています。

 

 各話のあらすじや感想など

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一角獣(ユニコーン)の乙女 水野良

あらすじ
アレクラスト大陸の中北部に位置し、魔法王国と呼ばれるラムリアースの騎士ジュディスは森林衛士として一角獣(ユニコーン)のアンウェンと共に王国南部の森「一角獣の森」で治安維持に当たっていた。

ある日、森に火災が発生、現場に向かったジュディスが見たものは、炎に焼かれ角を奪われたユニコーンだった。
ユニコーンの角は強い癒しの力を持ち、高額で取引されるため密猟の対象になっているのだ。
ジュディスは激高し、森の異常を調べに来ていたドルイドのケニーを攻撃してしまう。

その後、誤解は解けるがジュディスはケニーからの協力を断り、アンウェンと共に密猟者を追った。
ケニーはドルイドの使命とジュディスに対する思いから密猟者を追っていく。

感想
ジュディスとケニー、アンウェンの関係性の変化等、物語としての面白さもさることながら、ソード・ワールドという世界においてのユニコーンの存在や精霊の在り方がよくわかります。

ユニコーンがなぜ男を嫌い、純潔の乙女にしか触れることを許さないのか?
また使役する精霊によって術者にどんな影響を及ぼすのか等、ソード・ワールドを物語として楽しむ際の基礎として解りやすいと思います。

 

レプラコーンの涙 水野良

あらすじ
竜殺しリジャールを王に頂くアレクラスト西部の大国オーファン。
そのオーファンの王城シーダは混乱の渦中にあった。

一匹のレプラコーン(混乱の精霊)により城の装飾品は壊され、壁は落書きだらけ、女中のベッドに蛙や蛇等、悪戯の限りを尽くしたのだ。

捕まえようとしても魔法で姿をくらませたり、兵士の正気を失わせたりと手におえない。

そこでリジャールは精霊使いに事件の解決を依頼する。
依頼を受けたハーフエルフの精霊使いフレアは、騎士のマルダーと共に城内の調査を開始した。

感想
一話目の一角獣(ユニコーン)の乙女が森を舞台にしていたことと打って変って、城内での調査・聞き込みがメインとなり探偵小説のような感覚で楽しめると思います。

精霊とは自分の住む世界(精霊界)で生きることが本来の形で、物質世界であるフォーセリアには呼び出されない限り姿を現すことは無いはずの存在がなぜ現れたのか、悪戯をする理由とは、物語が進むにつれ明らかになっていきます。

 

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契約の代償 下村家恵子

あらすじ
アレクラスト大陸中部にある、大陸最大の王国オランの南東。はるか沖合にあるティルク島が物語の舞台だ。

ティルク島は海賊の脅威に晒されており、それを打ち払うためグラスランナーのリック、領主の娘アラミア、戦士のダイン、魔法使いのライクの四人は力を求め古代魔法王国の遺跡に足を踏み入れる。

遺跡でアラミアは魔力を得て、海賊を撃退することに成功する。
しかしアラミアに宿った魔力は島の人々を戦争へと駆り立てていく。

一人支配を逃れたリックは、原因を求めて再び遺跡へ向かうのだった。

感想
物語の冒頭は四人パーティーの冒険譚、お宝さがし的なお話ですが、中盤以降、制御出来ない力が人々の心を支配し戦争に駆り立てていく場面は恐ろしさを感じました。

戦争を否定していた仲間たちが肯定派にかわり、嬉々として戦の準備をしている様子はホラーじみたものがありました。

 

ジェライラの鎧 山本弘

あらすじ
アレクラスト大陸西部、テンチルドレンと呼ばれる都市国家群の一国、リファールが物語の舞台。
引退した騎士を父に持つジェライラは騎士見習いとして取り立てられる。

王女の護衛役として任命されたジェライラは、鎧を手に入れるため訪れた工房で鎧職人の弟子ルバートと知り合う。
騎士見習いの間はプレート・アーマーは身に着けることは許されていない。

ジェライラはレザーアーマーを注文し、いずれ騎士になった時には彼にプレート・アーマーを作ってもらうことを約束するのだった。その後二人は鎧を介して徐々に心を通わせていく。

三年後、父の死により遺産を受け継いだジェライラは、ルバートに遺産を使って店を持つように勧める。
ルバートは親方の技術はすでに習得しており、独自の方法を試したいと以前から話していたのだ。

彼は人の金で夢は買いたくないと言い、金は必ず返すと宣言して申し出を受けるのだった。

翌年、騎士叙勲を半年後に控えたジェライラは、ルバートにプレート・アーマーの制作を依頼する。
しかし彼女の騎士叙勲をよく思わない人々もいる。同期の騎士見習いの貴族子弟たちだ。

彼らに文句を言わせないため、出来上がったルバートのプレート・アーマーを着込み(王女の配慮により着用が例外的に認められた)、ジェライラはリファール領内で起きていた行方不明事件の解決に向かう。

感想
初めて読んだときは鎧の知識などなく、ゲームのように購入すれば良いぐらいの認識しかありませんでした。

考えてみれば普通の服でさえサイズの規定があるのですから、鎧のような硬質な物は調整が必要なのは当然です。

ルバートの作る鎧が機能性を重視しており、鎧の形状一つ一つに意味があり作中でも解説してくれるのですが、それだけでも面白く感じました。

物語自体も他の三作よりボリュームがあり読みごたえがあります。

 

まとめ

ソード・ワールド短編集は同じフォーセリアを舞台にしたロードス島戦記とは違い、アレクラスト大陸の様々な場所で起こる小さな事件を題材にしたものが多く、名もなき冒険者達の物語という感じが気に入っています。

他の物語で出てきた登場人物が端役で出演したりする場面もあり、他の作品やリプレイ集等を読んでいくとより楽しめると思います。

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