小説 小説長編

かりそめエマノン 冒頭部分あらすじ・感想

投稿日:2018年10月26日 更新日:

隕石
かりそめエマノン

著:梶尾真治
画:鶴田謙二
出版社: 徳間書店

地球に生命が生まれてからの記憶を引き継ぎながら、旅を続ける少女、「エマノン」の物語。

書き下ろし長編です。

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あらすじ1

孤児だった拓麻は養護施設である愛童園から、子供のいなかった荏口家に引き取られる。
義父は会社を経営しており、何不住ない生活を送ることが出来た。

拓麻には愛童園以前の記憶がほとんどない。
しかし、一つだけはっきり覚えている事がある。
いつも誰かと手を握っていた。

長い髪と繊細なまつげ、大きな瞳を持っていた。
姉さん、もしくは妹。

拓麻は成長するにつれ、自分が人とは違っていることに気が付いた。
例えば記憶力だ。
普通の人は一度見たり聞いたりしたことを忘れる事がある。

自分にはそれがない。
過去に記憶したことをビデオを見るように鮮明に思い出すことが出来た。

拓麻は内面に違和感を持っていた。
その違和感は赤い光として存在していた。
光はコンパスのように何かを指示しているようだった。

こんなこともあった。
義母の文恵がクラス会に出かけるという。
拓麻には母の血だらけの姿が見えた。

参加を取りやめて欲しいと願ったが、クラス会は間近に迫っており、キャンセルは無理だとすげなく断られた。
クラス会当日、拓麻は原因不明の高熱を出し、文恵はクラス会に参加しなかった。

熱はその日の午後には引き、病院からの帰り車のラジオのニュースで、クラス会メンバーの乗ったマイクロバスが、崖から転落したことを知った。

あらすじ2

中学生になり自分の出生について、知りたくなった拓麻は愛童園を訪れる。
園長に話を聞いてみたが、両親について何もわからず、引き取られたのは拓麻一人だけだった。

保護された時は双子の男女だったのだが、女の子の方はいつの間にかいなくなっていたそうだ。

双子の姉妹がいる。
高校生になった拓麻は彼女を探すため金を稼ぐことにした。
ためた小遣いを元手にして、友人の亮太の伝手を頼って株を購入した。

高度経済成長期に入ろうとしていた頃で、株価はどんどん上昇し拓麻の能力も手伝って、短期間で資金を得ることに成功した。

探偵会社に依頼したが、成果は上がらず、余った資金でバイクを購入した。
ある日、拓麻は亮太から株の購入を頼んでいた女性が、拓麻にそっくりな女の子をフェリーで見たとの話を聞いた。

違和感である赤い光が、双子の姉妹を指し示すものかも知れないと考えた拓麻は、休みである日曜日バイクにまたがり光がさす方向を目指した。

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まとめ

エマノンシリーズの書き下ろし長編です。
主人公の拓麻は自分が生まれてきた意味を探して、双子の妹であるエマノンを探します。

しかしようやく出会えたエマノンにも、双子になったのは初めてらしく、なぜそうなったのか分からないと言われます。
さらに自分を捨て、旅立ったエマノンに拓麻は激しい怒りを覚えます。

彼は人生の意味を見失い、自殺を試みますが、手首を切ってもすぐ傷がふさがり、アルコールを飲み続けても体調を崩すことはなく、ただ知識を得るだけの無為な日々を過ごします。

ある日テレビで見た隕石の映像が、彼に幻視を見せます。
彼女の危機を知った拓麻は彼女を助けるべく行動を起こします。

物語の終盤、拓麻はようやく満たされます。
彼の人生が幸福だったのかそれは分かりませんが、一生に一度でも、このために生まれてきたのだと、思える瞬間があればそれでいいのかもしれません。

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