極東事変 1 ハルタコミックス
作:大上明久利
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン
終戦直後の日本、戦地から帰還した近衛勘九郎(このえ かんくろう)は砕花(さいか)と名乗る少女と出会う。
砕花は帝国陸軍731部隊が作り出した強化兵、通称変異体(ヴァリアント)と呼ばれる不死身の兵士だった。
あらすじ
戦争が終わり焼け野原になった東京に帰ってきた近衛勘九郎は、一人の女性がMP(ミリタリーポリス/憲兵)に追われていたのを助けた。
女性に銃を向けたMPを殴り倒した近衛だったが、その女性、カヤはGHQの支配を良しとしないテロ組織の一員だった。
その後現れたカヤの仲間は躊躇する事無くMPを射殺する。
フィリピンで戦っていた近衛は終戦を迎えたのにまだ戦争を続けようとする彼らに強い憤りを覚える。
彼らを止めようと近衛は死んだMPの銃を手に取りカヤを撃つ。
しかし胸を撃ち抜かれたカヤは平然と立っていた。
カヤはその銃では仲間は誰一人殺せないと近衛に言う。
MPが持つ銃はコルトガバメント。
45ACP弾を使用する強力なハンドガンだ。
化物かと口にした近衛にカヤは普通の人間から見ればそうかもしれない、でも化物にも感情はあると答えた。
続けて大切な人を殺されて正気でなんかいられないと、怒りと憎しみを込めて言い放った。
彼女の言葉を受けて仲間の一人が、カヤの夫が進駐軍に殺された事を補足する。
殺ったのは自分たちと同じ化物だと彼らは続けた。
復讐かと聞いた近衛にカヤは頷きを返した。そしてその為ならユニット731の力だって借りると続けた。
ユニット731と呟く近衛にカヤの仲間が銃を向ける。
当初は見逃すつもりだったようだが近衛がカヤを撃った事で始末する事にしたらしい。
不味い事になったと顔をしかめる近衛に伏せろと声が掛けられた。
走り寄った小さな人影は手にしたモーゼルを乱射し、カヤの仲間を撃ち殺した。
感想
731部隊が作り出した生体兵器、変異体(ヴァリアント)同士の戦いを描いた物です。
作中に登場する砕花と名乗る少女は回復力に優れ、生中な攻撃では死ぬ事はありません。
ですが、筋力・体格共に子供である為、M1ガーランドやトンプソン機関銃といったアメリカ軍の正式兵装を使う事は出来ず、モーゼル・シュネルフォイヤー(ドイツ製のマシンピストル)をマシンガン替わりに使っています。
一方、近衛は衛生兵として従軍していた為、敵側の兵器を鹵獲し戦っていた過去があります。
その為、アメリカ製の銃器の使用に精通し、ハンドガン、ライフルは勿論、バズーカーまで使いこなします。
この二人がコンビを組み、GHQの一員として砕花と同じく変異体で構成された部隊、奇兵隊と戦う事になります。
作品の特徴として第一に上げたいのは、銃や兵器に対する描画の詳細さでしょうか。
当時、米軍や日本軍が使っていた武器が丁寧に描かれています。
砕花の銃が装弾数を上げる為、ドラムマガジンになっていたり、グリースガン(M3A1:アメリカ軍の短機関銃)やマンドリン(PPSh-41:ソ連の短機関銃)等の当時の銃が次々に登場します。
またそういったミリタリー方面だけでなく、敗戦直後の困窮した庶民の暮らしもきちんと描かれています。
主人公の二人も含め、作中には大事な人を戦争で失っていたりと、深い傷を負った人々が多数登場します。
エンターテイメントとして銃を撃ちまくるアクション物は好きですが、戦争は嫌だなぁと改めて感じます。
まとめ
感想では戦争で傷ついた人々と書きましたが、作中、彼らはその傷を乗り超えようと逞しく生きています。
戦争については本で読んだり伝え聞くぐらいしか知らないのですが、実際そういう逞しい人たちがいたから焼け野原から立ち直れたのだろうと感じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。