小説長編

十二国記 白銀の墟 玄の月 第一巻 設定・登場人物・感想

投稿日:2019年10月15日 更新日:

玉
白銀の墟 玄の月 1

著:小野不由美
画:山田章博
出版社: 新潮社 新潮文庫

十二国記の第九作目、クーデターにより行方不明になった泰王、驍宗(ぎょうそう)を探して泰麒(タイキ)と李斎(りさい)は冬の迫る戴国を彷徨う。

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設定

世界
中心に黄海(こうかい)と呼ばれる妖魔の溢れる土地があり、その周りを内海が取り巻いている。
その外側に八国、さらに外海を挟んで四国が存在している。
戴(たい)は外海、北東に位置する極寒の国。

文化様式は中国に似ている。
妖魔、妖獣といった魔物・妖怪の類や、呪(しゅ)といった呪い(実際に効果あり)も存在する。

また、暮らす人々の中には半獣と呼ばれる人と獣、二つの姿を持つ者もいる。
半獣の思考は人と変わりないが、獣の種類によっては剛力を持つ等普通の人間より優れた能力を発揮する。
国によって違いはあるが、法により差別の対象となっている場合もある。


各国には王が一人づつ存在している。
王は世襲では無く、天意を受けて国民から麒麟が選ぶ。
選ばれた王は仙となり、不老不死となる。
また国から位を与えられた臣下も仙となる。

仙となった者は頑健で生中に死ぬ事は無いが、首を落とされる等の致命傷を負えば死ぬ。
また言葉に不自由する事が無くなる。

王がいる間は天災が減り、気候も安定する。
逆に王が不在であれば天災が増え、妖魔と呼ばれる怪物も姿を見せ始める。

麒麟が選ぶ王は名君になる資質は備えているが、それはあくまで資質であり、なれるかどうかは本人と周辺の状況及び経験次第のようだ。

麒麟
黄海の中心、蓬山(ほうざん)に生まれる霊獣。
各国に天から一頭ずつ与えられる
基本的には蓬山で成長し、黄海で遊びながら僕となる使令を得る。

泰麒は胎果(たいか)として蓬莱(ほうらい:日本)で育った為、使令は女怪(にょかい:麒麟を守り育てる為生まれる女性型の妖魔、混じりが多い程良いとされる)汕子(さんし)と傲濫(ごうらん:饕餮(とうてつ)とよばれる妖魔、普通は使令にする事が出来ない強力な魔物)の二体しか持っていない。

仁道を尊び、常に民の暮らしを憂う。
王を選び、その後は補佐として王につき従う。
正式には宰輔(さいほ)だが、そのまま呼ぶのは畏れ多い為、台輔(たいほ)と呼ばれる。
王以外に傅く事は無い。

血を嫌い、臭いを嗅ぐだけで体調を崩す。
食事も生臭い物は食べられない。
肉等は麒麟にとっては毒と変わらず、食せば穢瘁(えすい:穢れによる衰弱)する。

王が仁道を失い非道を行えば麒麟が病む。
失道の病と呼ばれるそれは、やがて麒麟に死をもたらす。
麒麟が死ぬとやがて王も斃れる。

ちなみに雄が麒、雌が麟と呼ばれる。
戴国(たいこく)の雄の麒麟で泰麒。

覿面(てきめん)の罪
他国の王が武力を以て国を侵略する事
天が定めた掟で、破れば王は死に至る。
罪の重さ如何では、全身から血を吹き出し死ぬ程苛烈。
この事がある為、李斎から援助を乞われた陽子も、兵を貸す等の直接的な援助は出来なかった。

※いろいろ書きましたが、月の影 影の海で楽俊(らくしゅん:このシリーズにおける癒し担当)等が詳しく説明してくれています。
未読の方はそちらを読んだ方が、分かりやすいでしょう。
また記憶違い、勘違い等があるかもしれません。

登場人物

泰麒(たいき):高里要(たかさと かなめ)
戴国の麒麟
珍しい黒麒麟で他の麒麟より霊力が高い。
現在は阿選(あせん)により霊力の源である角を失い、転変(麒麟が獣形に姿を変える事)も出来ず、使令(妖魔を僕として折伏したモノ)も呼べない。

李斎(りさい)
元戴国瑞州師(ずいしゅうし)将軍
慶に渡る際、深手を負って利き腕である右手を失くした。
泰麒とは昇山の際に面識を得た。
彼女にとって泰麒は庇護するべき幼子のままのようだ。

阿選(あせん)
元禁軍右将軍
泰王驍宗を襲わせ泰麒の角を傷付けたとされる人物。
兵からの信頼も厚く、彼自身も驍宗を認めていた節がある。
何故、驍宗を弑逆(しいぎゃく)し仮王および偽王になろうとしたのか、目下の所謎。

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感想

久しぶりの新作という事でワクワクしながら本を開きました。
この巻では今まで詳しく描かれなかった戴の現状が、泰麒、李斎等、登場人物の目を通して語られます。

また驍宗が行方不明になった時の状況を、目撃者の証言を集める形で知る事が出来ます。
唯、国は混乱しており人の心も荒んでいる為、情報自体の信憑性にも疑問が残る様な状況です。

この巻を読むと現在の戴がどういった状態なのか、肌で感じる様に分かると思います。

前王の暴虐により疲弊し、次の王を短い時間で失った戴。

東の海神西の蒼海等では雁国の荒廃が語られましたが、あまり詳細には描かれてはいませんでした。
今回の物語では王のいない国の民の暮らしが、生々しく描写されています。

慶国の人々が賢王を願った気持ちがとても良く分かります。

まとめ

前巻、黄昏の岸 暁の天の後、戴に戻った泰麒と李斎のお話です。
長く途切れていた物語が動き始めます。

起承転結の起という事で、戴の現状以外、謎は殆ど解明しません。
が、語り口の妙といいますか、読んでいる間ずっと面白いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※イメージはPixabayのEMEによる画像です。
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