木珊瑚の島 ビームコミックス
著:須藤真澄
出版社:エンターブレイン
須藤真澄さんの描く、庶民的な暮らしの中に不思議を織り込んだ日常系ファンタジー。
庭先案内の続編、庭先塩梅第五弾。
各話あらすじ
憶えていない昔の話
幼い妹は曼荼羅や仏像の置かれた、薄暗い建物にいた。
不気味な雰囲気に、不安に駆られ大泣きしながら家族を探す。
ようやく見つけたおねえちゃんは、キラキラと輝き、口には牙が生えていた。
そこで姉に掃除機を当てられ、我に返る。
彼女は壁の曼荼羅を見て、昔の記憶が不意に蘇ったのだ。
いぬみあい
朝目覚めると、娘の体は四分の一ほどに縮んでいた。
何とか部屋から出ると、隣の部屋から父親が覗いていた。
父も同じく小さく縮んでいる。
二人は夢という事で何とか折り合いをつけ、階下に向かった。
そこには和服を着た、飼い犬のフジオが待っていた。
地球から来た男達
男が目を覚ますと、彼は角の生えた人の子供程の大きさの生き物に囲まれていた。
ここが何処かと尋ねる男に、彼らは面倒だから外を見ろと言う。
男が窓の外に目をやると、そこには彼が昔思い描いていた、未来都市が広がっていた。
小さな生物、それは男が夢みていた宇宙人だった。
大東京物語
東京駅のホームに老夫婦が降り立った。
彼らが向かった先は、人形師の家。
老夫婦は帽子屋、ケーキ屋、人形師、彼ら三人の両親だった。
スカイ・ハイ
雲の上、年老いた男はそこにあった、ハローライフという建物に飛び込んだ。
建物の中には新聞を読んでいた男が、笑顔で出迎えてくれた。
二人は友人で、生前一緒に生まれ変わろうと約束していたのだ。
もしもーし?
恐竜公園、ディメトロドンの像の体に開いた穴の中で、一人の男が沈んでいる。
彼の横には壮年の女性。
どうやら女性の娘と男は、結婚の約束をしていたのだが、娘が音信不通になってしまったようだ。
お告げ
西荻窪にある純喫茶、その店には西荻窪の母と言われる占い師がいる。
結構評判のようだが、本人は特に占いを勉強した訳でもないので、少し心苦しい。
ある時、仕事仲間の女の子が面白がって、彼女に着せた衣装姿を見て、幼い頃、この人に会った事があると彼女は思い出す。
咳夜行
元浪人生は夏からずっと酷い咳に悩まされていた。
医者にも原因は分からず、隣の部屋からは苦情のノックが止まない。
その日も咳は止まらず、一際大きくむせた時、彼女の口から風船の様な物が飛び出した。
川辺の花
川辺を女学生風の娘が、鼻歌を歌いながら歩いている。
彼女はその川に生えていた、一本の木の側に、友人の姿を認め駆け寄った。
その友人に自分が見た夢を、はしゃぎながら話す。
だが友人はそれは夢では無く、あなたはおばあさんで、家族に看取られてこの川辺に来たのだと答えた。
幻燈機12
十年ぶりに昔訪れた村を再び訪ねた老人。
皆変わらず懐かしいと歓迎してくれたが、アナンという青年だけは、妻と息子を事故で半年前に亡くしていた。
それ以来アナンは町で酒に溺れているという。
老人はアナンがいるという町に向かう事にした。
感想
幻燈機の老人は今まで過去を映してきましたが、今回は自身の想像で像を結ぶことに成功しました。
彼が未来に向かっていると感じられるエピソードでした。
最後にこの巻で好きなセリフ
「わたしを憶えていてね、ツタ子さん」
「大切な友達だったんですね。なら、忘れてしまってもまた会えますよ。ご主人にも、お子さんにも、出会って、また、大切にすればいい」
まとめ
今回は記憶にまつわるお話が、多かった様に思いました。
記憶とは不思議なもので、作中の妹の様に何かのきっかけで、鮮明に思い出す事があります。
それは景色であったり、匂いであったり、音であったり様々で、思い出す記憶も、楽しかったり悲しかったり様々です。
出来れば、笑った記憶が多くあればいいなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。