地図苔の森 ビームコミックス
著:須藤真澄
出版社:エンターブレイン
須藤真澄さんの描く、庶民的な暮らしの中に不思議を織り込んだ日常系ファンタジー。
庭先案内の続編、庭先塩梅第三弾。
各話あらすじ
雪山もふもふ賛歌
ジャーナリスト志望の女性が、バイトしている古本屋。
その古本屋に店主の友人の蔵書が持ち込まれる。
その友人は亡くなり、蔵書整理の為に店主が引き取ったのだ。
その中の一冊、題名の無い本は友人の日記だった。
店主と友人はどちらも登山が趣味で、日記には登山の様子が書かれていた。
日記の中に遭難した際、不思議な生き物に救われたとの記述を見つけた店主と女性は、その生き物を探して冬の雪山を登る事にした。
日本ちょっと昔話
ちょっと、むかしむかーしの東北の話。
山菜マニアのおねちゃんと、山菜好き(食べる方)の妹は、具合の悪くなった両親の為、病に効くという山菜を取りに山に出かけた。
あの木の下で
ある日、買い物に出かけた老婆は学生服姿の少年に、運命の人だ手を握られる。
話を聞いてみると、前世で結ばれる約束をしたという。
老婆は少年が、勉強のし過ぎで疲れているのだと話すが、少年は証拠を見せるという。
少年が老婆の両手を持つと彼女の脳裏に、見た事も無い遠い過去が映し出された。
小さな恋のメロデー
緑の深い南の国。
一人の女性が市で買った小さな袋を、つまむ様に持っている。
偶然出会った幼馴染の男性に、助かったとばかり袋を押し付けた。
購入したのは聖なる寺の池で育ったカエルで、彼らの土地では非常に重要な意味を持つモノだった。
しかし、女性は過去のトラウマからカエルがとても苦手だったのだ。
Gと坊の話
幼い男の子が、母親が祖父に送る荷物の中にある物を忍ばせる。
受け取った祖父は、孫が送った物だとは気付いたが、入っていた物の意味が分からない。
ブロックが一つと、その周りにはベトベトした何か。
ベトベトした物は、元はクリスマスケーキの上に乗っていた砂糖菓子、サンタと雪だるまだった。
孫は祖父の誕生日のプレゼントとして、食べずにとっておいた砂糖菓子を送ったのだ。
200回の瞬き
ポーズを決めた少女を、父親がカメラで撮っている。
これは毎月の行事で、いつも毎月一日の日に写真を撮っている。
そのアルバムを見た友人は、写真にはあるメッセージが込められている事に気付いた。
まなざし
祖母が蔵のカギを開けると、そこには様々な物が置かれていた。
幼い光とふーは、その不思議な空間にとても喜ぶ。
祖母に続き、急な階段を上った先には、畳が一枚敷いてあり、窓を開けた祖母はそこで持って来たお茶とお菓子を広げた。
僕の好きな先生
カウンターしか無い小さなバーで、喪服姿の三人の男女がグラスを傾けていた。
話は喪服の理由、高校時代の恩師の話に自然となる。
熱心な先生だったが、とても変わった人だった。
神様プリーズ
浪人生は親戚に借金をして、南の島へやって来た。
これから二ヵ月、暖かい島で過ごせば受験の日に風邪をひくことはないだろうと考えたからだ。
民宿のおやじさんがくれた饅頭を食べながら、浪人生は珍しく満面の笑顔だった。
数時間後、彼女はトイレにこもっていた。
饅頭にあたったらしい、同じ物を食べたおやじさんは何ともないのに、なぜか彼女だけお腹を壊してしまったのだ。
幻燈機10
森の中の村に立ち寄った老人。
水を貰おうと村人に声を掛けるが、彼らは一瞬で消え去り、残ったのは遺跡に腰を下ろした一人の老いた男だけだった。
男は老人と同じく、目に焼き付いた場面を映し出せるようだった。
感想
今回は「200回の瞬き」と「まなざし」の二つの作品が心にのこりました。
200回の瞬きでは、ラストに娘が両親の写真を撮り始めるのですが、彼女が送るメッセージが気になりました。
また、まなざしでは祖母とひかり、そしてふーの時間の流れについてが少し切なく、そして暖かく感じました。
最後にこの巻で好きなセリフ
「よーく見て探しておけよ。おまえと、おまえの人間の、一番いい場所を」
まとめ
今回は愛について描かれた作品が多かった様に思います。
恋人、親子、祖父と孫、飼い主とペット等、愛の形は様々ですが、どの作品も暖かく優しい気持ちになれました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。