妻、小学生になる。 12 芳文社コミックス
作:村田椰融
出版社:芳文社
小学生、白石万理華(しらいし まりか)の体に憑依する形で現世に戻ったと理解した貴恵(たかえ)。
彼女は万理華の人生を奪ってしまった事に気づき悩み苦しむ。
一方、貴恵の夫である圭介も彼女に頼り切りな自分を顧みて、情けないと自身を責めるのだった。
登場人物
富子(とみこ)
圭介の娘、麻衣(まい)の結婚相手である蓮司(れんじ)の祖母
白髪くせ毛の老女。
歯に衣を着せない言い回しのおばあさん。
表面上はツンツンだが気遣いの人。
健(けん)
蓮司の祖父、故人
若いころはバンドマンとして活動しており、富子とはバンドのライブで知り合った。
富子と付き合うためバンドを辞め工場で働くことを決意、やがて富子の尽力もあり自分で工場を立ち上げた。
頑固な性格で工場の経営はあまり上手くいっていなかったようだが、富子の根回しで何とか潰れることはなかったようだ。
あらすじ
蓮司の祖父の十三回忌で愛川家を訪れた圭介。
彼はそこで蓮司の祖母、富子と二人、部屋で過ごす事になる。
気まずさを感じる圭介に、富子は妻貴恵を亡くして何年か尋ねた。
「ああ……十年、いや十一年ですね」
「そうかい……あっという間にかんじないかい?」
そう返した富子に、あっという間のようで、無限続くぐらい長い時間にも感じたと圭介は答えた。
お互い、連れ合いを亡くした者同士。
現在の状態、万理華の体に憑依した貴恵の事で悩んでいた圭介は、富子にもし旦那さんが生まれ変わって帰ってきたら、どう思いますかと尋ねた。
長く愛した者を亡くした富子なら、自分と同じ気持ちに……。
そう考えていた圭介だったが、富子の答えは会いに来ないでほしいというものだった。
予想外の答えに戸惑いつつも、自分も長くないから余計な事はしないでほしいと言う富子に、圭介はおばあさんの性格ならと納得した。
「あんたはどう思うのさ」
富子の問いかけに圭介は嬉しいですと答えた。
二度と会えないと思った最愛の人との再会。
一緒にいられる時間を取り戻す事が出来ますし……。
「そりゃ贅沢だね」
「……贅沢?」
戸惑う圭介に、そんな贅沢が起きたら逆に不幸になると富子は告げた。
感想
今回は冒頭、貴恵に頼り切りだった自分に刮を入れるため、万理華(まりか)の母、千嘉(ちか)にビンタを頼んだ圭介のエピソードから始まり、十三回忌での富子との会話、圭介の決意、麻衣の自炊と料理ノート、変わり始めた圭介、貴恵と距離を置く圭介とそれを良しとしない守屋(もりや)等が描かれました。
その中でも今回は蓮司の祖母、富子の話が印象に残りました。
富子は圭介と同様、連れ合いである夫を亡くしています。
彼女は事故で突然、貴恵を失った圭介とは違い、65歳で夫に先立たれています。
一緒に過ごした時間が長いか短いか、人によるのでしょうが彼女は生まれ代わりを自然の摂理に反すると言い、そんな奇跡が起きるなら自分たちの子や孫、その先に生きる人々へ与えてほしいと未来への奇跡を願いました。
彼女の言葉は圭介の中の悩みを消し、彼の足を未来へと向けさせたようでした。
貴恵の憑依。
それは万理華という子供の人生を奪っている事に他なりません。
圭介は夫として、親として、仕事に注力し、しっかり生きる事で貴恵の憑依の原因、心残りを解消しようとしたようです。
そんな圭介の決意は分からなくもないのですが、それを貴恵達と話し合う事なく行っているのが読んでいて少し気になりました。
どうなりたいのか、どうしたいのか。
気持ちのすり合わせは必要なんじゃないかな。
エピソードを読んでいてそんなことを思いました。
まとめ
自分や娘の麻衣が元気で過ごしていれば、貴恵の心残りはなくなり憑依状態は解除される。
それは貴恵との別れを意味しています。
この巻では圭介は別れを受け入れ、そのために動き始めました。
万理華の人生と貴恵の意識の消失。
物語がどこへ向かうのか。次巻も楽しみです。
こちらの作品はピッコマでも一部無料で閲覧できます。
作者の村田椰融さんのTwitterはこちら。
お読みいただき、ありがとうございました。