失踪HOLYDAY
乙一
角川スニーカー文庫
短編の名手、乙一さんの初期の短編集。
この短編集には二作収録されています。
各話のあらすじや感想など
しあわせは子猫のかたち
あらすじ
主人公の大学生、僕は人とうまく関われないことに、コンプレックスを持っている。
彼は実家から離れた大学を選び、叔父が所有する古い家で一人暮らしを開始する。
彼が家に入ると家具などがそろっており、生活の痕跡が感じられる。
知り合いに貸していたらしい、その人はもう亡くなったと叔父は話した。
家でくつろいでいると一匹の子猫が入り込んでいる、前の住人のペットのようだ。
猫の世話等聞いていないと思ったが、放り出すわけにもいかず、そのまま放置した。
そのうち隣家の奥さんが訪ねてきた。
彼女の話では以前住んでいた住人は、雪村サキという若い女性で玄関先で刺され亡くなったらしい。
この家で暮らすうち色々おかしなことが起こった。
あげた覚えのないキャットフードの缶が転がっていたり、消したはずのテレビが付いていたり、閉じたカーテンが開いていたりなど。
ある時など爪切りを探していたら、いつの間にかテーブルの上に置かれていた。
前の住人が実体のない何かとして家に留まっている。
そんな想像をしながら奇妙な共同生活は始まった。
感想
主人公と雪村は触れ合うことなく、共同生活を続けていきます。
終盤の手紙のシーンは、涙腺が緩い人には注意が必要でしょう。
失踪HOLIDAY
あらすじ
貧しい生活を送っていたナオは、母の再婚で名字が変わり菅原ナオになった。
母の再婚相手は裕福で、お金に困ることはなくなった。
ナオが小学校二年の時、母が死んだ。
父は落ち込み経営していた会社にも行かなくなった。
父を社会復帰させるため、叔母の勧めで父に手芸セミナーへの参加を促してみると、彼は元気を取り戻した。
父はセミナーで知り合ったキョウコという女性と再婚した。
ナオとキョウコはそりが合わず、絶えず喧嘩をしていた。
ある時ナオは我慢できなくなり、家出を慣行。
その後、使用人であるクニコを巻き込んで狂言誘拐を行うのだった。
感想
主人公のナオはとてもエネルギッシュで、行動力のある少女です。
彼女に振り回されるクニコとのやり取りが楽しい作品です。
まとめ
しあわせは子猫のかたちは、乙一さんらしい切なくも暖かい物語です。
もう一作の失踪HOLIDAYはコメディよりの作品になるのでしょうか。
天然ぽい、使用人のクニコがとてもいい味を出しています。