庭先案内 6 ビームコミックス
著:須藤真澄
出版社:エンターブレイン
須藤真澄さんの描く、庶民的な暮らしの中に不思議を織り込んだ日常系ファンタジー。
庭先案内としては最終巻ですが、タイトルを毎回変える形で作品は続いていきます。
各話あらすじ
幻燈機6
ウイグルの村を訪れた老人。
そこには沢山の孤児を育てている、パワフルで底抜けに明るい女性が暮らしていました。
ははこひトカゲ
大阪新世界、トカゲが二足歩行で歩いている。
そのトカゲが気になった犬は、人の注目をあびる前に、トカゲを咥え裏通りへ向かった。
トカゲの名はやすし、どうやら動物園から逃げ出したようだ。
代替わりの儀
スクープを追って、旧家の財産相続を取材にきた女性。
彼女は道に迷い、竹やぶで行き倒れていた。
気が付くと布団に寝かされ、周囲には和装の人々が取り囲んでいる。
話を聞いて行くと、ここは目的の家で財産の相続は、毎回口寄せによって決定するらしい。
依り代に勘違いされた女性は、話に乗っかり取材をする事にした。
ジュブナイル
夏期講習の帰り、少年二人が土手で会話している。
そんな二人は土手下の遊歩道で、奇妙な踊りを踊っている男を見つけた。
二人は男の事が気になり、彼の後をつける。
ワンデイパレード
明治から昭和初期を生きた文豪、橡三十郎の記念館にやって来た少女。
彼女は三十郎の大ファンで、三十郎が執筆を行った部屋の空気を吸いに来たのだ。
少女が雰囲気を堪能し喜びを噛みしめていると、部屋の中から音がした。
中を覗くと三十郎本人が小説を書いていた。
山頂晴れて
男が老婆を背負い、山道を登っている。
階段があるとはいえ、霧が濃く男は戻ろうと言うが、老婆は行く気満々だ。
ため息を吐きつつ山頂に辿り着くと、そこは和風の遊園地が広がっていた。
超宴会
深夜の大阪城公園。
妹はおねえちゃんと一緒に、ライトアップされた大阪城の壁に写るというハートの形の影を探しに来ていた。
その影を見たカップルはラブラブになれるという。
その下見に来たのだが、公園はいきなり暗くなり、何事かと大阪城を見ると、城は眩い光を放った。
その光に誘われる様に、公園には通天閣と太陽の塔が砂煙をあげて移動してきた。
流れ着く浜
女性が浜に流れ着いた物を拾っている。
この村はその流れ着いた物を使って、作品を作りそれで生計を立てていた。
彼女は村は好きだが、他の人たちの様に、廃材を見ても何も創作意欲が湧かない事に悩んでいた。
お願い人形師さん
人形相手に帽子屋が遊んでいる。
それを青年が注意した。
青年は人形師。彼はマダム達に人形作りを教え、帽子屋はその人形の服の制作を教えていた。
マダム達は人形作りでなく、人形師の方に興味があるようだったが…。
マンション・ジャンクション
とても高級そうなマンションに住む事になった浪人生。
彼女のおじが海外出張する為、一家が留守の間、家の管理を任されたのだ。
ついてると喜ぶ浪人生だったが、訪ねて来たマンションの住人の言葉で表情が曇る。
おじはマンションの理事会長をしており、住民のレクリエーションの仕切りを行っていた。
彼が留守なので代理として浪人生が、その仕切りを任される事になったのだ。
感想
今回はワンデイパレードという、文豪とファンの話が心に残りました。
橡三十郎の言葉は、思わずファンになってしまうほど素敵でした。
また、この巻では大阪の話が二つ収録されています。
どちらも大阪の濃い部分を抽出したようなお話だったので、私は六巻のイメージが大阪よりになってしまいました。
最後にこの巻で好きなセリフ
三十郎「勇気を出し給え。僕らは読者を言い包めて、謀って、自分の国へ連れて行く山師なのだからね。心をシッカリ保って、花の咲く嘘の道を敷いて、出口迄導かなくては」
まとめ
冒頭でも書きましたが、庭先案内という名前で刊行された物はこれで最後です。
ですが作品は一巻ごとにタイトルを変えながら続いています。
次は水蜻蛉の庭です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。