庭先案内 3 ビームコミックス
著:須藤真澄
出版社:エンターブレイン
須藤真澄さんの描く、庶民的な暮らしの中に不思議を織り込んだ日常系ファンタジー。
この巻では新しいレギュラーキャラ、不幸な浪人生、植物妖精、帽子屋が登場します。
今後も登場する人物
不幸な浪人生
美大入学を目指している浪人生
何かと不運
植物妖精
植物園の木に宿っている妖精
お上品
帽子屋
オカマの帽子職人
願いを叶える帽子を作っている。
各話あらすじ
幻燈機4
老人は旅の途中、過労で倒れ高熱に苦しむ。
雪深い山奥の村で手厚い看病を受け、彼は何とか回復した。
この村は冬の間、ふもとの村の学校の寮に子供を預け、親たちは雪解けまで子供に会う事は出来ない。
回復した老人は助けてくれた薬売りの男と共に、ふもとの村へ向かう。
ワンナイト スウィング
ずっと家の壁にかかっていた古い時計。
その修理の為に訪れたのは、四名の老人だった。
彼らは時計を引き取り、朝までには修理してくれるという。
時計の音が消えた部屋は、妙に静かだった。
娘は母親に促され、先に風呂に入る事にした。
風呂から上がると、彼女は子供に戻っていた。
慌ててリビングに駆け込むと、そこには若返った母親がいた。
青春19お嬢さん
ロングコートに帽子にマスク。
そんな不審な格好をした女性が、鈍行列車に乗り込む。
彼女の向かいに孫と一緒に座っていた老婆が、持っていたミカンを手渡すと、女性はミカンをスケッチブックに擦り付けた。
話を聞いてみると美大を目指している受験生で、去年はインフルエンザにかかり失敗、一浪してしまったらしい。
先程の行動は受験前のプレッシャーで錯乱してしまったようだ。
スッパ田さんと仲間たち
梅の花の咲く季節。
一人の少女が墓石の上に座っていた。
その隣の墓の上に老人が現れ、彼女に話しかける。
その後も次々と墓の上に人の姿が現れた。
彼らはこの墓苑で眠っている人々だった。
きのうの夜、天空にて
女性が冷蔵庫を抱えている。
彼女がそっと手を放すと、冷蔵庫は風船のように空に昇って行った。
事の起こりは昨日の夜、誕生日を友人に祝われ、沢山のプレゼントを抱え家に戻ると、玄関の前に階段が伸びていた。
彼女は母親のサプライズだと思い、軽やかに階段を上る。
しかし階段は空の上まで続いていた。
エピソード1
美術部の部室で一人残り、絵を描いているおねえちゃん。
そこに鍵束をもった老人が見回りにくる。
カギを返し帰宅しようとする彼女に、老人は好きなだけ描けばいいと椅子に腰かけた。
彼女は今年大学の美術科を受験するのだ。
老人と絵を描きながら話していると、少女が元気よく、部屋に飛び込んで来た。
少女は彼女の妹で、テニス部に入部した事を嬉しそうに報告した。
おとしものがかり
駅のホーム、売店の側にしゃがみ込み、リュックを背負った小学生の女の子が母親と携帯で話している。
どうやら祖父母の家まで一人で向かうようだ。
おとしものが多い事を心配する母親の言葉どおり、彼女は祖父母へのお土産の入った袋を携帯ごとホームに置き忘れ、指示された四番線では無く、二番線の電車に意気揚々と乗り込んだ。
雨の南の緑の
雨宿りの為、植物園に入った女性。
彼女の前に、槍をもったおじさんと、探検家の服をきたおじさんの二人が現れる。
彼らはボランティアで、植物園の植物について解説してくれるそうだ。
女性は楽しそうと、彼らに植物の解説を頼むことにした。
お願い帽子屋さん
ゴテゴテと飾りのついた帽子を被り、スキップしながら中年の男が外壁に蔦の茂った建物に消える。
その後に続いて建物に入った女性は、美大を目指している浪人生だった。
建物はどうやら帽子屋で、男はハゲを気にしていたようなのだが、この店の帽子のお蔭で髪が生えてきたらしい。
男が金を払いかえった後、浪人生はオカマっぽい店主に、現在の自分の状況を説明した。
夏休みの球児たち
夏、神社の境内にやって来た少年は、サラリーマン風の男に出会う。
少年は彼に対して素っ気無く対応していたが、彼の少年に対する人物評は驚くほど当たっていた。
男は人事課の人間だったが、今は職を失っているようだ。
感想
この巻では今後も登場することになる、薄幸の浪人生、植物の妖精、そしてオカマの帽子屋が登場しました。
浪人生は風邪をひかない様に、細心の注意を払っているのですが、結局風邪をひいてしまいます。彼女の春はまだ先のようです。
植物の妖精は見た目に反して、とても紳士で優しいです。
動物園、水族館は行ったことがあるのですが、植物園には一度も行った事がありません。
機会があれば一度行ってみたいです。
オカマの帽子屋が作る帽子は不思議な力を持ち、被った人の願いを叶える力があるのですが、浪人生の負の力には勝てなかったようです。
最後にこの巻で好きなセリフ
薬売り「…学校行って来たんだな」
老人「おまえさんは来なかったな」
薬売り「そんなの悪いじゃねぇのよ。オレ一人だけさあ」
まとめ
今回はスッパ田さんのお話が印象に残りました。
この話のように、お墓に座って皆、世間話してるのかなと考えると少し楽しくなります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。