庭先案内 2 ビームコミックス
著:須藤真澄
出版社:エンターブレイン
須藤真澄さんの描く、庶民的な暮らしの中に不思議を織り込んだ日常系ファンタジー。
作品は幻燈機等、同じ人物が登場する作品もありますが、基本一話完結で描かれています。
何度か登場する人物
幻燈機じいさん
バイクに乗りアジアの各地を旅している老人
不思議な幻燈機で幻の海を見せる事が出来る。
今回はインドにいる模様
おねえちゃん
大学の美術科に通う女性
沈着冷静、曼荼羅好き、料理上手
いもうと
おねえちゃんの妹
高校生、ピュア、よく食べる、お菓子大好き
各話あらすじ
幻燈機3
ネパールにやって来た老人。
彼はそこで人力の観覧車で興行を行う、旅芸人の親子に出会う。
雪が降ってくる
電車の中、男は窓から降る雪を見ながら、独り言をつぶやく。
あれは何処だったか、雪がしたから降ってくんの。
それをいつの間にか、向かいの席に座っていた少女に聞かれる。
男は照れ隠しに、雪ってたまに下から降ったりすんのと、地元の子と思われる少女に尋ねた。
少女は微笑み、見せてあげよっか?と答えた。
にゃんにゃか長屋
犬と共にフリーマーケットを訪れた女性。
しかし彼女が申し込んだ場所には、時代劇風の恰好をした集団が既に陣取っていた。
自分の場所である事を主張するが、その集団にどうしても本日ここで商売がしたいと頭を下げられ、懇願される。
仕方なく彼らと半分ずつ場所を分け合い、物を売る事にした。
桜風
桜並木のベンチに座る女子高生。
桜は満開。風は桜吹雪を起こし、花びらと共に様々なゴミを運んで女子高生の顔に当たる。
それをゴミ箱に入れていると、一人の老人が桜並木を歩いて来た。
イマジン
うだるような暑さの中、南国の緑をかき分け進むと、そこにはガジュマルの木の下で、南国風の少女がヤシの実の器を並べていた。
そこで突然目が覚める。電車内には同じ制服の友人三人と自分。
サンサンと照付ける陽光が窓から降り注ぐなか、横並びの椅子でうたた寝していたようだ。
私と彼女と洞窟で
祖父の十三回忌、バスケットに夢中の孫娘は、部活の日練に出たくてしょうがない様だ。
ここは祖母の家、父親はビールを飲んでしまったし、何年も来ていなかった事もあり、母親は帰る事を許してくれない。
自分が子供の頃の話になり、居心地の悪くなった孫娘は、コンビニに行く事を口実に、昔友人と作った裏山の秘密基地に向かった。
黒影ボンズ
おねえちゃんの様子がこの一週間おかしい。
食は大事だと言っていたのに、自炊をせずコンビニ弁当ばかり、朝も台所のテーブルに突っ伏して、返事もおざなりだ。
心配になった妹は、学校に行くふりをして、姉の様子を伺った。
するとテーブルで寝ていた姉の体が真っ黒に染まる。
あわてて駆け寄りつつっくと、姉はテーブルに落ちた窓の影に吸い込まれる様に消えた。
真夜中のみいさんはあさん
ある夏の夜の熱帯夜。
余りの寝苦しさに目覚めた女性は、アパートが停電になっている事に気付く。
頼りの扇風機に抱き着きながら、窓の外を見ると、町全体が停電しているようだ。
眠る事も出来なくなった彼女は、表で涼んでいる人の溢れる夜の街を散歩する事にした。
合唱一発
友人と共に夏祭りに出かけた少女。
浴衣を着て頭にお面、両手に食べ物を抱え、ご満悦だ。
その様子に呆れながら、友人がおまいりする様に促す。
おまいりして、振り返ると友人たちの姿は消えていた。
村の花咲く
南の島、集会所で男たちが宴会をしている。
その宴会の最中、村長が花を探して欲しいと言い出した。
11年に一回のまつり、それを十回繰り返した後。
つまり110年。その110年に一度だけ咲く花があるという。
その花に祈れば、どんな願いでも叶う。
村長はそう集まった男達に告げた。
感想
今回は冬の話と春の話も収録されていますが、夏の話が多かったように思います。
最近は熱中症が怖いので、暑いとすぐクーラを付けてしまい、汗をダラダラかくという事が余り無くなりました。
熱帯夜のお話では、夏の盛りに汗だぐで飲む、自販機のジュースの美味しさをなんとなく思い出します。
最後にこの巻で好きなセリフ
孫「もっとおばあちゃんち、来るようにするから…来る…来月また来る」
婆「…来月は、おばあちゃん、フラのお友達とハワイに行く予定があるから…」
まとめ
須藤さんの描く物は、少し切ない話から楽しい話まで、様々なタイプがありますが、どの作品にも共通しているのは、人々が暮らしを楽しんでいるという事だと感じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。